18
静音は、たいそう広い空間の中にぽつねんと立っていた。
周囲は真っ暗で、所々でちらちらと光が瞬いている。
目が慣れてくるにしたがって、それは夜空にとても似ている事に気が付いた。
一体どこへ出たのかと、静音はあの魔核の周りの魔法陣を思う。
あの魔法陣は一番外側が隠蔽のための陣、一番内側が転移の陣だった。
座標はこの星のどこかだったはずだが。
そう思って周囲を見ていると、徐々に下の方から光があふれ出てきた。
暗闇の中、それは太陽が昇ってくるようにも見えた。
あまりに眩く、目を眇めて、手をかざす。
かざした手の前に、オレンジ色の光が現れた。
ぎょっとして振り払おうとしたが、それが馴染んだ魔力の塊であると気が付いて、寸でで止まった。
人の頭ほどの大きさのそれは、魔力蛍と同じようにふわふわと静音の周囲を飛び回った。
これは、静音が動かしているわけではない。
ということは、静音以外の誰かが制御しているということになる。
ぐるりと周囲を見回すが、夜空の風景と、昇りかけた太陽の縁が見えているだけで、他には何もない。
静音は溜息をついた。
そして、右手を上げると、手の中に魔力粒子を呼び集めた。
ふわふわしていた魔力塊は、引っ張られるように宙を転がったが、手の中に入る前に慌てたようにどこかへ消えた。
静音は練り上げた魔力を炎の塊に換えた。
出来る限り、巨大で、高音に。
手の平の上で炎はどんどん大きくなり、静音はやがてそれを頭上に掲げた。
炎の大きさは直径が三メートルを超えていた。
まだまだ止める気はないらしく、静音はそれが十メートルになっても、二十メートルになっても魔力を練り続けた。
ついに、頭上一杯を炎が埋め尽くした。
太陽が昇ったようだった。
静音は思い切り息を吸い込んだ。
「せーのー」
上げた腕を目の前の太陽の縁がにじんだように見える空間へ向けて振り下ろす。
巨大な炎の塊は静音の手から勢いよく飛び出し、アリオの炎弾よりも速く闇へ向かって飛んで行った。
「何という無茶をする」
慌てたような声がして、スクリーンが降りるように周囲がグレーになった。
と、同時に静音の練り上げた巨大な炎塊も消えた。
「やっとお出ましですね。あなたが神官ですか」
「空間を壊すつもりか」
若い男が目の前に立っていた。




