猫バス
「となりのトトロ」に出てくる猫バス。そいつが地下鉄のトンネルから飛び出し、ホームで電車を待つ俺の前で止まった。
突然、地下鉄が猫バスになっても俺は動揺などしないし気になどしない。当然、俺が驚くと思っていたのだろう、猫バスの目が少し大きくなり目線を線路にそらした。となりのトトロでは電線の上を走っていたのだから線路の上を走っても不思議ではない。俺は平然、堂々と乗り込んだ。
足元はグニャグニャするしベンチに座れば尻の下は動いて気色が悪い。
だが、そんなことを俺は気にしない。
俺はそんな男だ。
自分の行きたいところに行ける。猫バスとはそういうもんだ。猫バスの額の上には俺の行きたい駅の名前が出ているだろう。
便利だ。
駅に着いて降りる時も俺は猫バスを振り返って見たりはしない。
俺は自分の目的以外のものに干渉しない。それが俺の生き方だ。俺の前を全裸の美女が横ぎっても、首を動かさずに目線だけを動かして女性を見たりはしないし、股間が反応して、ズボンのふくらみを誤魔化すために両手をポケットに入れたりはしない。俺はそんな男だ。
歩道橋の階段がハシゴになっていても俺は平然とハシゴを上る。股間のふくらみがハシゴに触れて反応し一段と膨張し邪魔になろうと、ハシゴが手に食い込んで痛みを感ようと、揺れるハシゴで腹筋に痙攣が起きても、
そんなことで俺の気持ちは少しも揺るがない。
俺はそんな男だ。
自分の勤める会社が爆破されて吹っ飛んでいようと、爆破で吹き飛ばされた自分の事務デスクが道端で転がっていようと、失業して明日からの収入がゼロになろうと俺は気にしない。
俺は男らしい男だ。