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セツカと時の鎖【改稿中】  作者: ちはやれいめい
一章 セツカと時の鎖
19/52

19 森で待ち受けるもの ✱

挿絵(By みてみん)

「すごい、あれは楓? あっちはモミジ。これが紅葉こうよう……初めて見た」


 本当にここは悪魔の森と呼ばれる場所だろうか。

 赤や黄に染まった木の葉がひらりひらりと舞い落ちてくる。風が吹くたび木の葉が擦れあって、さざなみのような音を立てる。


「綺麗だなぁ」

「セツカ、これは? このおっきい木は何?」

「クスノキだな。樹齢は何年くらいだろう。これだけ大きいと、百年はくだらない」


 アイセは俺たちのやや後方を歩いてくる。


「昨日までとは別人みたいにテンション高いねぇ。そんなに喜んでこの森に入る人、初めて見たよ。ボクには全部同じ木にしか見えないけど、これにそんな名前があるわけ?」

「ああ。いつも植物図鑑を読んでいたから、名前や特徴だけは知っていたけど、実物を見るのは初めてだ」


 歩くたび、ブーツの下で枯れ葉が音を立てる。

 足元をリスが駆け抜けていく。


「動物たちも問題なく暮らしているみたいだな」

「そうねぇ。森に入れたはいいけど、これからどうする?」

「まず時の遺跡に行ってみよう。何か手がかりがあるかもしれない」


 地図とコンパスを確認しながら進む。

 苔むして朽ちかけているけれど、所々「この先九〇〇メルテ先を右方向」と案内板が設置されている。


 草木が無秩序に生い茂って足元が悪くなっているけど、元々は整備された道があったんだとわかる。



 一時間も歩くと、リーンの息があがり始めた。


「リーン。鞄」

「あり、がと」

「そろそろ休憩しよう」


 肩で息をするリーンから鞄を受け取り、開けた場所前まで歩いた。


「セツカ、結局足を引っ張っちゃって、ごめんね」

「気にしなくていい」

「うん」


 アイセは慣れた様子で足元にあった乾いた枝と木の葉をまとめ、マッチの火をつける。火が安定したところで俺に水筒を投げる。


「とりあえず、お嬢ちゃんにこれで水を飲ませて。焚き火してお湯を沸かすから、燃料になりそうな枝を集めてくれる?」

「わ、私も……」

「リーンは休んでていいよ。足、痛いだろ」


 水筒の木栓を抜いて、持ってきた小ぶりのブリキカップに水を注ぐ。

 よほどのどが渇いていたのか、リーンは一気にあおった。


「セツカも喉乾いてるでしょ。はい」


 リーンは飲み干したカップに水を注いで、俺の手に押し付ける。


 少し口をつけて、舌先にかすかな苦味を感じた。


「飲まないの?」

「……うん、飲まなくていい。俺も少し疲れてるみたいだな」

「じゃあ私飲んじゃう」       


 俺が残した分をリーンがぐいっと一気にいった。


 はぐれないよう近場をまわって、枝を集める。

 パキン、とどこからか枝を踏む音が聞こえた。

 リーンたちの方に目を向けると、二人とも動いていない。

 クマのような大型獣が通った痕跡はこのあたりにない。


 嫌な予感がして、枝集めをやめ二人のところに戻る。


「おかえりセツカー」

「早かったね。寒かったでしょ、せっちゃんも火にあたりなよ」

「必要ない」


 アイセに枝だけ渡して、離れたところに座る。


「アイセ。セツカは火が嫌いなの。無理強いはだめよ」

「なんで」


 自分でもわからない。でもどうしても、火を見ていると吐きそうなほど気持ち悪くなる。


「ふぅん。トラウマってやつだねぇ。まぁ都合がいいや」

「都合がいいって、なにが」

  


 複数人の足音が迫ってくる。

 武装した五人の男が剣を抜き、俺を囲んで叫んだ。




「オレたちの家族を返せ、時の神子!!」

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