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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

息子が殺された

作者: トム

高校生の息子が殺された。

死因は刺殺。


殺されて半年も経った頃、妻が精神を病んだ。

息子が死んでいることを認められず、まるで生きているかのようにふるまうのだ。


私が仕事から帰ると、妻は息子との会話の内容を私に伝えてくる。


妻の中で、息子は受験のための勉強合宿に行っているらしい。

死んだ息子がクラスで一位の成績をとったなどと聞かされていては、こっちまで頭がおかしくなりそうだ。


さんざん迷った挙句、私は妻を自宅から2時間ほど離れた精神病院に連れていくことに決めた。


医者からは、妻はかなりの重症で、長期戦を覚悟してくださいと言われた。

もっと早く治療を始めていれば、、、とも。


仕方ないじゃないか、私も初めての出来事ばかりで、

どうすれば良いか分からなかったのだ。



診察の後、そのまま入院することになったので、私は妻を病院に置いたまま、

自宅に妻の着替えなどを取りに帰ってきた。


家事は妻にまかせっきりだったので、着替えがどこにあるかなど、皆目見当もつかない。


家中をひっくり返しつつ、荷造りをしていた時、ふと妻の携帯が鳴った。


入院先は携帯の持ち込みが禁止らしく、嫌がる妻から取りあげて持ってきたのだ。


画面を見てみると、22:30に設定されたアラームが鳴り響いている。

すぐにアラームを止めて、なんの時間なのだろうとしばらく考える。


答えはすぐに分かった。

塾へ息子を迎えに行く時間だ。


まただ、、ここでも息子か、、、、

いい加減うんざりする。


私はスマホの中身を見ることにした。

同じような理由で、他にもアラームが設定されているかもしれない。


パスワードはすぐに分かった。

息子の誕生日だ。


妻は異常なほど、息子を愛していた。

そんな息子が殺されたら、おかしくなるのも当然なのかもしれない。


スマホのロックを解除すると、着信履歴の画面が目に入った。

妻が最後に開いていた画面らしい。

アラームの画面に移ろうとしてふと気づく。




息子からの着信がある。

それも1回や2回ではない。


履歴を遡ってみると、1日に1~2回のペースで電話がかかってきていた。


そこでふと気付く。

確か、息子の遺品にはスマホがなかった。

今まで気にも留めていなかったが、犯人が持ち去ったのだろうか。


息子を殺した犯人が、息子のふりをして電話をかけてきて、妻を狂わせたのだ。

手が震えて、怒りが湧き上がってくる。


気が付くと、息子の携帯にリダイヤルしていた。

警察に連絡しようなどという考えは一切なく、

ただ、頭の中にあったのは犯人を怒鳴り付けてやろうという考えのみだ。


スマホのスピーカーから、着信音が鳴り響く。



しばらく相手が出るのを待っていて気が付いた。


おかしい。

かすかに、部屋のどこかから着信音が聞こえる。


私のスマホでも、もちろん妻のスマホからでも無い。


着信音は、妻のタンスから鳴っている。


妻の衣服を取り出した引き出しの、さらに奥から鳴っている。

音を頼りに腕を伸ばして引き出しの奥を探る。


指先にひやりとした硬いものが当たった。

ゆっくりとつかみ、手元に引き寄せる。



引き出しの奥から、息子のスマホと

乾いた血が付いた包丁が、ゴロンと出てきた。





思えば、私は妻の事も、息子の事もまったく解っていなかった。


出来の悪い息子のことは嫌いだったし、

その原因である妻の事も気に食わなかった。


息子は昔から成績が悪く、

どんなにお金をかけても、全く効果が無かった。


息子が不登校になった時、

私は妻を責めた。

お前の育て方が悪かったのだと。


息子が殺されたのは、それから一か月経った後だ。

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