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Wonderful World

※このお話はフィクションです。

 アメリカ合衆国を中心とした世界の安定パクス・アメリカーナは、アメリカの威信が大きく損なわれたことによって崩壊したわけだが、それでは「超大国」と「次なる超大国(予定)」以外の国では何がどうなったのだろうか。


 先ず、一貫してロシア寄りだった中東諸国では、親露独裁政権に対する抵抗運動が、雨後の筍のように次々と現れ、中には政権崩壊に至るものも現れた。

 特に、シリアでは血で血を洗う凄惨な戦いが繰り広げられ、米露の軍事介入があった頃よりも状況は悪化した。

 肝心の最大兵力を持つアメリカは動揺のため活動意欲に乏しく、欧州諸国はウクライナの復興とロシアの武装解除監視にヒト・モノ・カネを割かれて以下同文。中華人民共和国は自国の守りを固めるのに忙しく、インドやパキスタン、イランには有意な兵力を派遣する力が無く、ロシアという後ろ盾を失ったシリアのアッサドゥ政権は、絶望的な内戦を戦うことになる。

 同様のことはアフガニスタンやイラクやイラン、北朝鮮にも起き、二〇二〇年代はその全期間を通じて、世界のどこかで常に国連が「今世紀最大の人道危機」を連発する内戦状態が続くことになる。


 特に北朝鮮の場合、水爆を保有している独裁国家の足元が不穏当になるという最悪の事態が進行しており、最終的には第三次世界大戦で自らの緩衝地帯を求めて開戦に至ったロシア同様の理屈で、中華人民共和国の大規模武力侵攻によって事態が収拾されることになった。

 北緯三十八度線全域に亘って、世界最大の陸軍国と突然国境線を接することになった大韓民国は、慌てふためいて中華人民共和国の即時撤兵や、自国と北朝鮮との救済的合併を提案することになるのだが、国際社会は一顧だにしなかた。

 誰しも、過激な民族主義を掲げる国に核兵器製造技術を渡したいとは思っていなかったし、そもそも民族分断から七十年も経ればそれは「同一民族を始祖として分かたれた別の民族」と考えるのが、適切だと考えられていたからである。

 年中弾道ミサイルを打ち上げたり核実験を行なったりして、国際社会を恫喝する危険な政権が、比較的理性的なものの考え方をする大国にヘイトが向く形で踏み潰されるのなら、当事者以外は「穏便な解決策」として黙認するのだった。

 中華人民共和国は北朝鮮の核開発技術を根刮ぎ接収しつつ、穏当な傀儡政権を樹立し、朝鮮半島を「ロシアとウクライナを併合した危険な軍国主義日本(中華人民共和国視点)」に対する縦深陣地として再編することに躍起になる。そんなことをしなくても中華人民共和国に対して攻撃を加える気も力も、その時点の新国家ムリーヤにはさらさら無かったので、それは中華人民共和国の取り越し苦労だったのだが、猜疑心に駆られた独裁政権は疑り深く朝鮮半島に戦力を積み増していくことになる。


 また、西暦二〇二二年から二〇二四年にかけては、世界中で穀物、殊に小麦の価格が急騰し、経済力と食糧自給率が低い国々で危機的状況が発生することになった。

 原因は第三次世界大戦で、世界有数の穀倉地帯でもあるウクライナで、戦争により小麦の作付けが滞ったことにある。

 これにより発生した食糧危機に対し、二〇二四年新国家建設委員会は、

「お米食べろ!」

 と言ったかどうかは定かでないが、日本列島に備蓄されていた古米を大規模放出すると共に、世界中から高値で小麦を買い付けては安価で開発途上国に譲渡する政策を実施し、国家としての「格」を見せつけることになる。

 新国家建設委員会としては、飢饉でも起きれば食糧危機の原因となった自国にヘイトが向きかねないのを危惧してのことで、後々逆恨みでテロリズムに走られるよりは安価な対策である、程度の気分でやったことだったのだが。

 二〇二四年からは小麦の供給が回復する見通しが立ったことで、食糧危機は終息に向かい、人類社会は「食糧自給率の最終解決策としての宇宙開発」という目標へ向けて暴走を始める、NASDAMの宇宙開発計画に目を付けることになるのだが、それはまた暫く先のことになる。

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