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アメリカによる平和(パクス・アメリカーナ)の完全崩壊

※このお話はフィクションです。

 第三次世界大戦に於いて、アメリカ合衆国が果たした目に見える役割と言えば、

対戦車ミサイル(聖ジャベリン)をウクライナに提供する

・早期警戒管制機や戦略爆撃機を空中待機させ、ロシア軍に圧力をかける

・早期警戒管制機で探知したロシア軍機の情報をほぼリアルタイムでウクライナ軍に通報する

 ぐらいのもので、言葉を選ばずに言えば超大国の超大国たる所以である「世界の警察官」の責務を果たしたとは、全く言い切れないものだった。

 積極的に大戦終結へ向けて関与し、結果としてやり過ぎて核戦争の危機を招きながらも最終的にロシアを降伏せしめ、大きく飛躍してウクライナ、ロシアとの国家統合へ舵を切った日本が、程々に株を上げたのと対照的に、第三次世界大戦後のアメリカの評価は下落していく一方だった。

 勿論、そこには「核兵器大国」同士で直接殴り合えば、最終的には核戦争へ至る危険性があるからこそ、戦争への直接的な関与――具体的に言えば派兵に対して慎重だった、という理由があるのだが、多くの一般市民にとってはアメリカが、

「図体と軍備がデカいだけの、腰抜けになった」

 と見えたのだ。

 誰しも、デカい面されるなら積極的に目に見えて世界の安全に寄与する(した)相手の方が、評価は高くなるものだ。しかも、普通の人間は深くそこまで考えない生き物なのである。

 況してや核戦争の危機に至って、慌てて仮にも同盟国の首都で政権転覆を図り、無惨に失敗して同盟を破棄されて叩き出され、終戦工作にも殆ど関与していないとなると、いよいよアメリカも落ち目か……! というのが大勢の見方になるのも無理はない。

 戦後世界に於いてアメリカに向けられる目は厳しく、故に二〇二四年新国家建設委員会が核兵器全廃を決定し、世界中に核兵器の全廃ないしは削減を呼びかけると、突出して核兵器の保有数が多く槍玉に挙げられることになったアメリカは、何かと理由をつけては拒否する敵対的姿勢を見せることになった。

 とは言え、新国家建設委員会の方も単純に核兵器削減を観念的に唱えるだけでは、平和はやって来ないのは身を以て理解していたので、IAEAやアメリカ政府の文民の立ち会いの元で核兵器を廃棄する一方で、例えば国際連合の下に「天体危機管理機構」を設け、核兵器は同機構に全て移管して、宇宙空間から飛来する危険物に対する迎撃に利用しようと言ってみたり、色々な提案をしてみて宥め賺したりしたが、アメリカは頑なだった。

 終いには新国家建設委員会の方から「次期政権(現政権崩壊)に期待しよう」と見切りをつけ、アメリカとの核兵器削減交渉を棚上げにする始末で、その新国家建設委員会の本音を知ったジョン・バッテン大統領は、血圧が上がって再び倒れ、止む無く辞任(嘘から出た真)することとなった。

 これはアメリカの国威を大いに損ない、史上初の女性大統領に昇格したキャサリン・ベネジクト副大統領は、動揺する外交関係に頭を悩ませることになる。


 一方、次の超大国を目指して高度経済成長を実現し、一時は世界第二位の経済大国に躍り出た中華人民共和国だったが、第三次世界大戦によりロシアが降伏すると、碌に使()()()有力な味方が居なくなり、その勢力圏は大きく縮小することになった。

 殊に「一帯一路構想」の国家戦略がロシア降伏により破綻したことで、ユーラシア大陸に対するプレゼンスが低下し、北と西の守りに力を入れざるを得なくなったのは大きな失点だった。

 中華人民共和国固有の領土である台湾を不法占拠する叛乱軍を、武力により打倒し中華世界の正当な覇者であることを示すには、東と南へ進出する海軍力が必要不可欠だったのに、陸続きである北と西の陸軍力・空軍力を強化しなくてはならなかったからである。

 新国家建設委員会は非公式に台湾関係者と接触し、新国家(ソビエトの継承国)に参加しないかと囁いて、中華人民共和国関係者の血圧を乱高下させたが、台湾当局はその提案を丁寧に謝辞し、自主独立を目指す旨を伝え、新国家建設委員会はそれならば、と軍事的支援を申し出たという。

 そうした経緯で潜在敵に囲まれる形となった中華人民共和国は、西部や北部の不毛の砂漠地帯に薄々無駄になるとは知りつつも軍備を展開することを強いられ、後に全方位に対する軍備の負担に耐え切れず、緩やかに崩壊していくことになった。

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