第343話 閑話(神話)
短いですが、今年最後の更新です。
「我々は、集まろう。そして、強く大きな都市を作るのだ」
遥か昔の人々はそう話し、そして実際にそこに集まり、それは村となり、街となり、そして都市となった。
「我々は、身を守る必要がある。この都市を、巨大な壁で囲うのだ」
人々は山を崩し、それを固め、壁を積んだ。
壁は厚く、高くなり、やがて都市全てを囲った。
「我々は多くなった。火を熾し、そして夜を照らそう。そうすれば、闇を恐れる必要はない」
人々は山から火を取り出した。取り出した火を固め、都市を照らす灯りとした。
灯りは都市をさらに大きくし、多くの人が都市に入った。
都市は国となり、そして多くを支配した。
「我々は強く、大きくなった。我々は、この地を支配しよう。我々が、神としてこの地を統べるのだ」
人々は天の竜を狩り、地の巨獣を仕留め、国を広げた。
「地の下の火を手にしよう。これを使い、我々は他の地も支配しよう」
人々は驕り高ぶり、やがて大地そのものを支配しようと企んだ。
そして、大地は怒り、遂に人々を散らすことを決めた。
地が割れ、そして火が溢れ出した。
それは瞬く間に都市を飲み込んだ。大きな壁は火に溶かされ、全ては火の下に沈んだ。
大地の怒りは全てを飲み込み、やがて海に辿り着いた。
海は大地の怒りを鎮め、割れた地を閉じた。
◇ ◇ ◇ ◇
「興味深い文献」
「まあ、神話だな。うちの国にはないが、北方諸国の一部で、これが聖典の創世記として記録されている。違う地域で、似たような神話が伝わっているようだから、俺はこいつが史実なんじゃないかと睨んでるがね」
「大地を覆った火、というと、溶岩か」
「可能性はあるぜ。それこそ、アフラーシア連合王国は溶岩で覆われているんだろう? 過去の大噴火が神話として伝わってるってのはありうる話だ」
「検討に値する」