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【書籍発売中】腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい - World of Sandbox -  作者: てんてんこ
第9章 伐採事業

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第320話 グラム

森の国(レブレスタ)の国内はおおよそ安定したようです。これからは取引量を増やしつつ、魔法ファンタジー関連技術の情報収集を行っていく予定です」


「キャラバンを送ってるんだっけ?」


はい(イエス)司令マム。定期的に往復させています」


 いつもの司令室で、イブは<リンゴ>から近況報告を受けていた。


 そして、今日はもう1人。正確には、1体。


 東門(East gate)都市(city)を担当する戦略AI、<フラガリア・ゼロ>が報告会に参加している。

 遠隔操作ではあるが、彼女は人形機械コミュニケーターを使用してイブの前に立っていた。


「キャラバンの構成は、核融合炉搭載電源車リトルホエール1台、多輪輸送車2台、多脚戦車4機、多脚地上母機<プランナー>1機です。それと、人形機械コミュニケーターを8体。今回は、燃石利用想定のスターリングエンジンや、蒸気機関を載せています」


「報告ありがとうね、フラガリア・ゼロ。そう、熱機関を渡してるのね。反応はどう?」


「上々です」


 レプイタリ王国の情報を抜き出し、この北大陸南部地方の技術レベルを推し量り、わざわざそのレベルで再現可能なモンキーモデルの熱機関を製造したのだ。


 だいたい、オリーブのおもちゃである。


 そしてそれらを、技術提供という形で森の国(レブレスタ)へ販売したというわけだ。


「回転動力は、風力か水力がほとんどです。蒸気機関のノウハウは、レプイタリ王国が独占しています。技術流出にも気を遣っていたようですので、森の国(レブレスタ)では実験室レベルでもまだ再現できていないようでした。とはいえ、冶金技術はそれなりのようですので、スターリングエンジンの再現も可能では無いかと考えています」


 <フラガリア・ゼロ>の答えに、へえ、とイブは頷く。


「そうすると、何かしらのブレイクスルーが起こるかもしれないわね。確か、動力に使ってたのって、謎の風が発生する箱だったわよね」


「はい、お姉様。長年ほとんど進歩していなかったようですが、発動機が実用化されれば、大きな変化が発生すると思われます。アサヒが、科学技術向上に伴って魔法技術の陳腐化が発生し、技術流出を誘発できるかもしれない、と言っていました。その計画の一環です」


「……それはまた、エグいことを考えたわね……」


 とはいえ。

 実際のところ、観測する限りにおいて、森の国(レブレスタ)は支配階級の権力が非常に高い国家形態を取っている。


 さらに、種族的に長寿命であるらしいということも分かっていた。


 そのため、政治中枢である長老会ル・エルフィアの統制能力は非常に高く、政治的・経済的侵略の効果は限定的であると予想されている。


 資本主義に支配された国家であれば、経済的圧力で世論を誘導することもできたのだろうが。

 森の国(レブレスタ)については、そこまでは望めそうになかった。


「当たればラッキー、くらいの考えでよい、とアサヒは言っていました」


「まあ、そんな感じよね。いいんじゃない?」


 だいたい交易を拡大しようにも、一番需要がありそうで、かつ安定的に消耗してくれるような品物は、軒並み拒否されてしまっているのだ。


 この時点で、生活必需品を押さえるという計画は失敗している。森の国(レブレスタ)側が非常に警戒していることの表れだった。


「<ビッグモス>の素材取引は安定的に行うことができています。また、それ以外の魔道具などの取引もできました。魔法技術の収集は順調です」


 そして、魔道具と呼ばれる科学技術によらない装置類も、多くの種類を輸入できている。


 もともと、アフラーシア連合王国の魔導具もほとんどが森の国(レブレスタ)産だったのだ。


 森の国(レブレスタ)内では一般的なものがほとんどで、また輸出にも積極的であり、特に交渉が発生することも無く交換対象にすることができている。


 最初に手に入れたアフラーシア連合王国産の魔導具は、かなり簡素な構造だった。それらと比べると、森の国(レブレスタ)のものは緻密と言っていい作りをしているようだ。


「同じ機能の魔導具が複数個ありますが、それぞれの個体によって寸法が異なりました。一般普及品であっても、そのほとんどが手作業で製造されているものと推察されます」


「なるほどねえ。まだまだ大量生産の時代では無いってことかあ」


「魔法技術は驚嘆に値するものではありますが、我々の有する科学技術を凌駕するものではありません。いえ、一部は凌駕している可能性がありますが……。少なくとも、魔物による死の行軍(スタンピード)への対応を見る限り、森の国(レブレスタ)の脅威度はそれほど高いとは言えません」


 そしてそれが、<フラガリア・ゼロ>の所見である。

 つまり、大量の資源を獲得しつつある今の<ザ・ツリー>であれば、相当な国力を持つであろう森の国(レブレスタ)であっても、十分に対抗できるであろうということだ。


 同レベルの勢力とやり合うにはほとほと心許ないが、少なくとも現状で確認できている国家相手であれば、問題なく圧殺できる。そういう話である。


 もちろん、その予定は当面ないのだが。


 アフラーシア連合王国、そしてプラーヴァ神国という広大な領土を手に入れた現状、年単位で勢力拡大に支障を来す要素はない。


 開発すべき土地が、まだまだたくさんあるのだ。


森の国(レブレスタ)の国内情勢も、かなり落ち着いているようです。死の行軍(スタンピード)も押さえ込んだようで、避難民の帰還、経済活動の再開が確認されています」


「ここに輸出相手もできたことだし、気合いが入ってるんでしょうねえ」


 森の国(レブレスタ)にとって、<パライゾ>は警戒すべき隣人ではあるが、同時に救援の手を差し伸べてくれた恩人であり、かつ対等な交易を続けることができる優れた商売相手だ。


 警戒しつつも、長期にわたって関係を続けたい、と考えているはずである。


「成形燃石のサンプルも提供済みです。望みの形に整形した物を大量に用意することができる、ということも伝えています」


「ああ。レプイタリ王国ほどではなさそうだけど、燃石が欲しいみたいね。これ、どのくらい埋蔵量があるのかしらねぇ……」


「不明と報告されていますが、誰かが調査しているのでしょうか?」


「うんうん、アサヒがね。どうも、うちのセンサーじゃ捉えられないとかでね。音響センサーで辛うじてそれっぽい判別できるけど、正確なデータがとれないらしくって。一応、採掘してる場所で産出量の計測はしてるから、それをベースにした予想ならできるわよ」


 燃石は、森の国(レブレスタ)に対する重要な交易品だ。現在、様々な品物を取引しているが、その中でもっとも価値のあるものである。


 今のところは掘り出した天然鉱石の形で取引しているが、今後は一定サイズの加工品に変えていく予定だ。

 もちろん、天然のものよりも割高としているのだが、森の国(レブレスタ)側の反応はかなり良かった。


「整形品の取引が軌道に乗れば、グラム通貨の流通も可能になるかもしれません」


「おお……。そういえば、そんな紙幣を作ってたわね……」


 <フラガリア・ゼロ>がそう言ったのは、主にレプイタリ王国などの西側諸国との取引で使用している、<パライゾ>が発行する紙幣のことだ。


 グラム通貨。


 1グラム紙幣1枚で、1gの燃石と交換できるというレートを保証している通貨だ。


 ちなみに、燃石は質量が大きいほど高性能になるため、1グラムと100グラムでは、その価値は1000倍以上あったりするのだが。

 もちろん、1グラム紙幣100枚を集めれば100gの燃石塊との交換は可能だ。

 そういった交換を保証することで、グラム紙幣は価値を持っているのである。


 このあたりは、情勢によっても価値が変わってくると予想されており、かなりアクロバティックな通貨となるだろう。


 交換保証できる勢力が<パライゾ>のみであるというのも、<ザ・ツリー>にとっては非常に優位に働く通貨になるだろう。


 ちなみに、レプイタリ王国では<パライゾ>からの支払いは専らグラム紙幣を使用しており、徐々に浸透しつつある。

 しかも、実質的に国家の頂点であるシルバーヘッド公爵が許可しているため、今後規制される心配も無いのだ。

辺境の子達にもスポットライトを当ててあげたい。

というわけで、すごく久しぶりに出てきたフラガリア・ゼロちゃん。かわいいですね。

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― 新着の感想 ―
紙幣の方は線形にしか額が増えないのに、交換できる燃石の価値が例えば指数的に増えるとなったら、紙幣として使いづらすぎる…
[一言] >1グラム紙幣1枚で、1gの燃石と交換できるというレートを保証している通貨だ。  アメリカが金塊で似た事をやってましたねぇ。  んで金インゴッドが少なくなって、米ドルの価値に大ダメージが入…
[良い点] 更新乙い [一言] >>科学技術向上に伴って魔法技術の陳腐化が発生し、技術流出を誘発 魔法の研究がしたい一心なんです!! >>1グラムと100グラム 燃石的には価値が10000倍になって…
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