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第307話 魔の森を偵察する

腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい World of Sandbox 3巻発売決定!!

「偵察隊、発進」


 プラーヴァ神国聖都郊外に造られた野戦飛行場から、つぎつぎと偵察機が飛び立っていく。


 隠密ステルス偵察機 LSRF-1 <リトルオウル>。


 上空からの偵察を行うために開発した、マイクロ波領域での隠密性を極限まで高めたジェット機である。

 特にレーダー波に対する隠蔽に特化しており、基本的にレーダーには映らない。ただし、可視光領域や音波に対する隠蔽能力はない。

 マイクロ波に反応する脅威生物に対応するための機体だ。


「目標地点、<トラウトナーセリー>。現地到着は40分後」


「アマジオさんからの情報だと、何か魔物がいるかもって話だけど……」


 アカネの管制する偵察隊<スカウトA>から流れてくる情報を眺めながら、イブはぼやいた。

 現在、アマジオ・シルバーヘッド公爵の元拠点である<トラウトナーセリー>の情報収集をしようとしているところだ。手始めに、航空偵察を始めたのである。


『お姉さま! 記録情報によると、飛行型の魔物は複数確認できますね! タイムスタンプは100年以上前なので生態系が変化している可能性はありますが、それでも上空侵入は難しいかもしれません!』


 とはいえ。


 いまある情報だけでも、航空偵察すら危険であると判定されていた。アマジオ・サーモンが所有していた飛行機械は、かなり初期の段階で魔物に撃墜されてしまったようなのである。


 それも、多数の魔物に群がられるという形だ。大型の脅威生物ではなく、小型の魔物による襲撃で壊滅してしまったらしい。


 幸い、飛行型の魔物は地上に攻撃してくることはなかったようだが。


「それはそれとして、やっぱり直接派遣はいろいろと情報精度が上がっていいわね」


「はい、お姉さま。搭載するセンサー精度も向上している。これからは積極的に外部派遣すべき」


 大量の資源獲得に伴い、比例して希少資源レアマテリアルの生産量も増えていた。そのため、より高性能な機器装置を製造できるようになっている。

 細かい性能向上にとどまらず、新たな技術体系のアンロックも可能になっていた。


「ジェットエンジンも、燃焼温度向上、出力向上、燃費改善、軽量化ね。リトルオウルもとりあえず先行量産って聞いてるけど、どうなの?」


「……運用データは増えてる。北大陸の調査、リトルオウルを消耗前提で派遣するってイチゴは言ってた……」


 第二要塞(ブラックアイアン)で生産設備を調整しているオリーブは、イブの確認にそう答えた。

 オリーブは現在、<リトルオウル>の先行量産型の問題点を洗い出し、改善し、量産ラインを整備している最中だ。

 ラインが稼働すれば、日産数百機という量の機体が供給されることになる。


「……管制機がついてないと、柔軟に動けないけど……」


 リトルオウルは偵察機であり、後方基地と密に情報連携するわけにはいかない。無線通信は非常に目立つため、独立行動スタンドアローン、あるいは管制機を中心とした小規模部隊での運用を想定している。

 ただ、特にスタンドアローンだと処理できる情報量が制限されるため、高度な思考が可能な演算器を搭載する余裕がないのだ。

 そこで、大型の管制機を伴った部隊を構想しているというわけである。


「管制機も隠密ステルスタイプよね。あ、しかも能動隠密アクティブステルス機能をつけるんだ」


 そもそも見えないようにできればベストなのだが、機体が大きくなればなるほどそれは難しい。しかも、管制という機能がある以上、外部に何らかの情報を発信する必要がある。それを隠蔽してしまうと、管制すべき子機との通信が途切れてしまう。


 そこで、管制機には新機軸の能動隠密アクティブステルス装置を組み込んでいるのだ。

 これは、機体の表面色を操作することによる光学迷彩と、欺瞞電波を発信する電磁迷彩の両方を備えたものである。


『まあ、脅威生物に対してどこまで効果があるかは不明ですが! 生体レーダーはまだしも、その他の感覚器についてはほぼ何も分かっていない状態ですからね!』


 そしてアサヒの言うとおり、ステルス機能を持った機体であっても、その有効性は評価できていない。

 例えば<ワイバーン>がマイクロ波を使用した生体レーダーを備えているのは確かだが、その他の探知手段を持っていないという証左にはならないのだ。

 魔法ファンタジー的な索敵手段があった場合、それを誤魔化すことはできない。


「そこは手探りでやっていくしかないものね。迂闊なことをして、大量の脅威生物を呼び込む、なんてことはしたくないし」


「現状であの<ザ・リフレクター>に侵攻された場合、プラーヴァ神国の兵力では抗せない」


 アカネの言うとおりだ。

 <ザ・ツリー>は領土を得たことでその地力を大きく向上させたが、しかし観測されている脅威生物を全て退けることができるほどの力を得たわけではない。

 それらと対抗するには、謎に満ちた魔法という技術を解析し、理解し、それを扱えるようになる必要があるのだ。


「それはそれとして、お姉さま。<スカウトA>が、目標領域に接近。10分以内に観測を開始できる」


「あら、もうそんなに近付いたのね」


 雑談を続けていると、30分程度すぐに経過する。

 上空8,000mを亜音速で飛行する<リトルオウル>の編隊は、既に魔の森領域に到達していた。

 いまのところ何事も無いが、まだ魔の森の外縁部であり、問題の魔物が出現すると考えられる奥地とは距離がある。


「さて、もう少しね。上空の安全が確認できれば、調査用の回転翼機を派遣できるんだけど……」


 航空機を出せれば、距離的な制約はほとんど解消できる。

 量的な問題も、よほどのものでない限りはピストン輸送で対応できる。

 現地まで地上を移動するのは、あまりにも条件が悪い。航空機を使用できれば、大幅に時間短縮することができるのだが……。


「多数の生物反応を探知。お姉さま。何か出てきた」


「うっ。やっぱりいたかぁ……」


『おお、お姉さま! どうやら飛行型の生き物が出てきたようですよ!」


 だがイブの願いもむなしく、<スカウトA>が異常を報告してきた。

 アカネが司令室のディスプレイに、探知情報を表示する。


「一次解析。集団は3、探知数、140以上、220以下。体長、2mから3m。森の中から出現、高度上昇中。飛行速度変動」


『お姉さま! 魔物ですよ魔物、間違いないです! 集団が垂直上昇しています! 速度は400km/h以上!』


 <スカウトA>は、偵察という任務のため、各機体が大きく間隔を取っている。機体間の距離は1km程度。菱形の陣形を取っており、その先頭の機体に向かって、飛行型魔物の群れが上昇しているようだった。


「映像、出る」


 後方のリトルオウルが、捉えた映像を送信してきた。映像はリアルタイムで処理されつつ、司令室のディスプレイに大写しになる。


「……孔雀?」


 そして、そこに移っている生物は、まるで孔雀のように尾の長い鳥だった。陽光を反射し、羽や体がキラキラと輝いている。


「二次解析。対象は183体。体長は平均3m、翼長は2m。飛行速度、900km/hに到達見込み」


『うわ、この魔物たち、リトルオウルに追いつきそうです!』


 リトルオウルの巡航速度は、900km/h程度。音速には到達しない、亜音速と呼ばれる速度だ。

 音速飛行ではソニックブームと呼ばれる大音響が発生するため、当然、偵察飛行には向かない。

 それを避けつつ限界まで速度を追求した機体なのだが、魔物は垂直に昇りつつその速度に迫ろうとしていた。


「距離、1kmをきった」


「亜音速で飛ぶ孔雀……?」


 唖然とした表情のイブ、淡々と報告するアカネ。そして、嬉々として情報解析を始めたアサヒ。


「発光現象を確認」


『あー! センサーがー!!』


「えっ」


 そして、孔雀の集団から黄色い閃光が発生。その瞬間、先頭のリトルオウルが爆散した。

さーて、そろそろ魔の森にも本格的に派遣するか~。というフェーズですが、やはり洗礼が……。

という回です。はい。


更新再開でございます。お待たせいたしました。

いや、3巻に苦労しまして、ようやく初稿を上げました。

発売日はまだ未定ですので、しばらくお待ちください!


★Twitter ( @Kaku_TenTenko )、活動報告などもご確認ください。

★書籍版発売中。電子書籍(Amazon, BOOK☆WALKERなど)もございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます! お待ちしておりました。
[気になる点] >例えば<ワイバーン>がマイクロ波を使用した生体レーダーを備えているのは確かだが  ふと思いましたが、マイクロ波を悪用出来ませんかね?  強力なマイクロ波を出すデコイをいくつもばら撒…
[良い点] 更新乙い [一言] トラウト美味しいからね、皆群がってるよね
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