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【書籍発売中】腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい - World of Sandbox -  作者: てんてんこ
第5章 アフラーシア連合王国

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第172話 戦術AI<ウェデリア>

「よーやく、タイタンも空に帰せるか……」


 タイタン級空中護衛艦、1番艦<タイタン>。

 ワイバーンとの死闘により致命的な損傷を負い、長らく修理を行っていたのだが、それがようやく完了したのだ。


「作り直したほうが早かった気もするけど、1番艦だしねぇ」


はい(イエス)司令マム。艦体の修理経験など、貴重な情報収集も出来ましたので、問題はありません」


 満身創痍となりながら、タイタンはなんとか、フラタラ都市郊外拠点の滑走路に着陸した。ただ、フラタラ都市郊外拠点は補給基地であり、整備用設備はあっても、本格的な修理が可能な設備はまだ無かった。

 そこで、修理設備の建造から着手が必要だったのである。


 一番簡単なのは、その場で解体して再資源化し、新しい艦体を建造すること。

 しかし、さすがにそれは忍びないと、オーバーホールを伴った大掛かりな修理を行ったのだ。


 構造体の詳細な調査を行い、必要な補強や交換を行う。

 飛行や戦闘機動、あるいは損傷によってどこにどんな力が掛かったか、不具合は発生しなかったかなど、詳細な調査を行った。


 ちなみに、ギガンティアおよびオケアノス、コイオスはそのまま空中飛行を続けている。

 タイタンと同様、オーバーホールを行って調査するという案もあったが、継続飛行中の運用データ収集を優先させた形だ。


 ギガンティア部隊は、ワイバーンやその他の脅威生物を刺激しないよう、レーダー出力を落とした状態でアフラーシア連合王国上空を周回させている。

 索敵能力が低下した状態のため、偵察機や衛星による監視でこれをカバーしていた。


『タイタン、離陸を開始します』


 タイタン搭載のU級AI、ウェデリアが報告を開始する。


 ウェデリアは、ウツギをベースに新造された戦術AIである。戦略AIは基本方針の設定や情報解析を主に担当するが、戦術AIは与えられた指示を実行することに重きを置いている。


 戦術AIを複数束ねて戦略AIとして扱うという運用も可能ではあるが、基本的には別物として扱うことが望ましい。


 特に、戦術級の兵器に搭載して運用することが多く、人間で言う運動野に当たる機能の性能が高くなる傾向がある。

 即ち、自身の搭載される機械ないし兵器の扱いは、十全にこなせるということだ。


『核融合炉出力正常範囲内。各エンジン出力、上昇中。機体各部、異常なし。離陸シーケンス、正常に進行中』


 機械操作に特に良好な結果を残したウツギは、その神経接続網ニューロパターンを戦術級AIに利用することとなった。


 その第1号が、この戦術AI<ウェデリア>である。


『エンジン出力、既定値に到達。ブースター点火。機体ロックを解除。タイタン、離陸を開始します』


 これまで、こういった巨大な構造物の制御は外部操作に頼っており、拠点に設置した大容量のAIシステムで管理していた。


 今後は、各装置に搭載したAIへ、制御権を譲っていく方針である。

 これは、遠隔制御に伴う応答速度遅延の改善を狙ったものだ。十分に高性能なAIを搭載できるのであれば、わざわざ遠隔制御を行うメリットはなくなる。


 当然、搭載するAIの頭脳装置ブレイン・ユニットは、厳重に防護されている。


『時速300km。……時速400km。……時速500km。離陸します』


 滑走路で加速したタイタンが、ブースターの力を借りてゆっくりと高度を上げていく。

 ある程度の飛行速度と高度を確保した時点で、離陸用のロケットブースターがパージされた。


『ブースター、パージ完了。飛行速度、時速700kmに到達。機体安定。各部チェック、異常なし。核融合炉出力正常範囲内。供給エネルギー量、異常なし』


 ウェデリアの操るタイタンは、危なげなく離陸を完了させた。

 シミュレーション上では良好な結果を出していたが、本番でも特に問題なく制御を行っている。


「よし、順調ね。ウェデリア、よくやったわ。あと1週間位は単独飛行を続けてもらうけど、問題なければオケアノス、コイオスにも搭載することになるわ。頑張ってね」


はい(イエス)司令マム。ありがとうございます。精進いたします』


 今後、ギガンティアにもE級AI、エレムルスの搭載を行う予定だ。

 こちらは機体容量に余裕があるため、飛行を続けながら換装を行う。正確には、現行の戦略AIと並行して運用し、問題なければエレムルスに統合する。


「これで、<ザ・ツリー>初の完全独立部隊ができるわけか。運用に支障が無さそうなら、海上艦隊も独立型AIを搭載しましょう」


はい(イエス)司令マム。そのように計画します」


 最低限、通信用の衛星の準備もできた。

 リアルタイム制御が可能なほどの通信帯域は確保できていないが、独立型AIによる制御であれば、最悪通信が途絶しても柔軟な対応を期待できる。


「今までは食べるだけで精一杯って感じだったけど、そろそろ情報収集にも力を入れないとね」


 宇宙進出も同様だ。

 最低限、通信と空撮のために運用を続けているが、もう少し運用基数を増やすか、高性能なプラットフォームを投入してもいいだろう。


「資源の収集量は増加していますが、支配域が広がったことで消費量も増大しています。しばらく現状維持とし、内政の拡大に努めましょう」


「そうね。内政とか久々に聞いたわ……」


 リアルタイムストラテジーゲームでは、戦力拡大と比較して内政という言葉をよく使う。

 言われてみれば、今からが内政拡大、というステージだろう。


 支配域を拡大し、鉱脈の確保を行った。

 これからは、確保した鉱脈を資源化していくターンだ。


『タイタン、所定の高度に到達しました。巡航速度に移行します』


 三次元レーダー上で、タイタンが高度約10,000mに到達していることが確認できる。タイタンの巡航速度は、時速800km前後だ。

 この速度であれば、余計な空気抵抗は発生せず、十分な浮力も確保できるのだ。


『各装備の動作検証に入ります。検証完了まで3時間を予定。その後、設定された航路に移行します』


「オーケー。順調ね、ウェデリア。この調子で頼むわよ」


はい(イエス)司令マム


◇◇◇◇


 ギガンティア部隊は、空を行く。

 現在は特に攻略対象も設定されていないため、周回航路を飛び続けている。


 とはいえ、ただ飛んでいるだけでは勿体ない。


 現在は、広く護衛機部隊が周囲に展開しており、オケアノス、ギガンティア、コイオスという順番で単縦陣を形成している。

 全体で見れば、輪形陣になるのかもしれない。


 そして、コイオスの後方にはデータ収集に特化した飛行機部隊が展開していた。

 レーダーで地上、地下を探査しているのだ。


 アフラーシア連合王国の国土は広大である。

 いちいち地上で探査すると、何年掛かっても終わらない。


 よって、まずは衛星画像からある程度の地形を推定し、その情報を元に上空から探査を行っているのだ。


 電波で地中を観察するのは難しいが、不可能ではない。

 ただ、あまり強力な電磁波を使用すると、脅威生物を呼び寄せてしまう可能性がある。


 今のところ、データ収集部隊は地上に露出した成分を記録している。

 露出した鉱脈が発見できれば御の字だが、地下水などに混じって地上に金属成分が溜まっていることもある。

 そういった痕跡を広範囲で検出し、演算を行うことで、地下鉱脈を予想するのだ。


 そんな訳で、ギガンティア部隊は様々な場所で目撃されている。


 当然、アフラーシア連合王国のみならず、国境線を越えた先の国々にも、確認されていた。


 これらの国々の中で、最も過剰な反応を示したのは、未だに細々とした交流しか続けていない森の国(レブレスタ)である。


 <パライゾ>勢力がアフラーシア連合王国を手中に収めた、という情報は、東門(East Gate)都市(City)の大使館を通して通達済みである。

 ただ、状況が状況のため、森の国(レブレスタ)側はそれ以上の情報を収集できていなかった。容姿も異なるため、スパイを放つというのも難しかっただろう。


 そんな中、なにやら巨大な機械が空中を飛んでいれば、嫌でも目立つ。


 アフラーシア連合王国の西側諸国については、ある程度目処が立った。

 今度は、東側にも目を向けるべきである。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここ、大使館が西門市にあるって書いてありますけども。 エルフの国は東だから、東門市に大使館があったのではないですかね。
[良い点] 更新乙い [一言] タイタンちゃん退院おめ!! さあ、内政ターンだ、調査して、資源施設を作って、道を作って、消費と産出をがんがん上げなきゃねえ!! >>れぶれすた 国土調査中やねん!! …
[一言] 巨大生物かと思ったら、人工物でした!ってのに気付いたらファッ?!ってなったあとどうすれば魔法で対応できるんだとか頭を悩ませてそうですね。
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