No.373320より 誰か見つけたら読んでください
マスターは信じなかったけど、僕は信じているから、今僕はどきどきしているよ。
まずは自己紹介をするね。僕は南光央。魔法陣の真ん中で空を眺めるのが好き。友達は美作冬夜。今日もドラゴンに乗っているよ。
マスターの話もしなきゃね。マスターはたくさんいるけど、僕は昨日三百年ぶりにマスターに会ったよ。さよならの時依頼だ。二人で魔法を身体に流してた時の事さ。扉が開いたと思ったら、マスターが現れたんだ。
マスターは、魔法服を着て居たよ。丸い円の様なガラスをすっぽり被って、モコモコした服を全身に纏ってた。
「まだ動いて居た」
マスターの第一声。僕達は直ぐに魔法のコードを背中から引き抜いて、マスターに近寄った。マスターは、魔法服越しに僕達を抱きしめてくれたよ。
「ナンバーを教えてくれ」
僕は元気よく「南光央」って答えたよ。「373320か」って言われた。流石マスター。美作冬夜も、「339108」って呼ばれて嬉しそうだった。
マスターは「何かキカイは動いているか」って訊いた。キカイって僕はよく分からなかった。機会でも奇怪でも無いみたいだったよ。マスターは直ぐに「そうか、魔法か」と言った。
「君らは今、コードでジュウデンをして居たろ。それ、なんて言うんだ」
僕らは同時にせーので「魔法のコード」って言ったよ。マスターは乾いた笑いを発すると、エネルギーを魔法と言って使いすぎたのは本当だったんだな、と呟いた。よく分からない言葉が多かったから、黙って置いたよ。君は分かる?
その後、マスターが僕らの魔法を見たいって言うから、幾つも見せたよ。特に喜んでいたのは、ドラゴンだった。外に置いてあったドラゴンを見て、マスターは目を輝かせた。
「本物のヒコウキだ!」
ドラゴンですよと美作冬夜が訂正すると、すまないとマスターは謝った。その後、いいドラゴンだ、まさか飛ぶのかとマスターは言った。美作冬夜がドラゴンを飛ばすと、マスターは、凄い、現役だと喜んでいた。
御礼にと、マスターの魔法の船を見せてもらった。魔法陣の中に降り立った船の名前は「ユーフォー」と言うのだそうだ。未確認でも無いのにユーフォーなのは名残だよ、とマスターは言っていた。よく分からなかったけど、マスターは楽しそうだったから、僕は嬉しくて笑った。
他にも色々な魔法を見せて、マスターはその度に「本物だ、動いている!」と叫んだ。一通り見て回ると、マスターは良くやったと僕達を抱きしめた。
「今更地球を見て来いなんてさ。三百年前に残したロボットが二体居るはずだって言われたけど、そんなの御伽噺だと思っていた。でも、本当に居た」
マスターは興奮していた。僕には難しい言葉を、沢山知っていた。
「デンリョク……魔法は、あれだろ、太陽で賄ってるんだろ?」
「太陽が、魔法の力をくれるよ」
僕が言うと、凄いなあとマスターは笑った。太陽は凄い。僕はそうですねと頷いた。
「なあ、僕らの星には太陽は無いけれど、どうだい、良ければ僕らの星に来ないか。歴史を語る物として、このドラゴンやチャクリクダイ……魔法陣って言うんだっけ、それに、魔法のコード。そして何より君達。僕等の移り住んだ星で、歓迎されるよ」
僕は即答する。
「駄目だよ、マスター。昔のマスターに、僕らはここを守りなさいって、言われてるんだ」
うん、と美作冬夜も頷いた。
「其れが、僕らの役目なんだ」
マスターは、少し戸惑っている見たいだったけど、そっかと小さく笑った。
「じゃあ、地球観光ツアーでも組んで見るよ。地上はほぼ砂漠か汚染地域だろ……でも、こんなオアシスみたいな場所があるなんてな。君達は凄い。歴史を守っている」
マスターは白い歯をキラリと光らせると、そうだと手を叩いた。
「君達、欲しい物はあるかい? 今度俺がまた来た時に、持って来てあげるよ」
僕らには欲しい物は無かったけど、叶えたい夢はあった。マスターは昨日、其れを許可してくれた! 触っちゃいけないって言われていた魔法を触らせて貰って、今この手紙を書いている。過去と未来を行き来する魔法だ。発明された時は凄い魔法だって騒がれたけど、混乱するからって直ぐに触っちゃいけなくなった。
マスターは信じていなかったけどね。それは、三百年ほど前に虚言癖の人が騒いでたんだって、歴史で習ったんだって。本当だよと言うと、笑いながら「じゃあ、ご先祖様にそのままじゃ大変だよって伝えておいてくれ」と言われたよ。
僕は信じているよ。この手紙は、過去の誰かに届くって。絶対に届く。
ここまで読んでくれてありがとう。返信ができる世界に居るのなら、返事を頂戴。出来なかったら、読むだけでいいや。
また、手紙を送るね。
あと、何が大変なのかは分からないけれど、マスターが言うんだから間違いないよ。気をつけてね。
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テーマ「未来」