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第8話 魔女カンバセーション

 ダンジョンものなのか判りづらいので改題しました。


 気配をまったく感じなかった!?

 その事に戦々恐々しつつ俺はある確信を持って振り返る。

 そこにいたのは、俺とコノハの事を値踏みするように見定め腕を組む、妙齢の黒ドレス女性である。

 腰先まで伸びた艶のある黒髪。

 フレームレスの眼鏡から覗く切れ長の眼。

 美人だがどことなく酷薄な印象を受ける容貌。

 彼女を見た者は誰しもが同じ印象を受けるだろう。

 即ち――


「お久しぶりです……【魔女】」

「魔女はやめなさい。

 ちゃんとレイカ、もしくは室長と呼べといつも言ってるでしょう?」


 俺の言葉に装備調整室の室長、御神レイカはニコリともせず答えた。


「それはそうなんですが……(※1)

 いつも言い慣れてるので。すみません」

「へえ?

 貴方達がいつも口にする程なのね」

「うっ。

 そういう訳じゃ……」

「それにわたしたちは適正価格で物を流通させてるわ。

 その証拠に皆、喜んで買っていくでしょ?」

「いや、魔石の買い取りと魔化武具の販売はここだけしかしてないし、いわゆるマッチポンプって奴じゃ……」

「あら?

 それはつまり独占してる、って言いたいのかしら?」


 誘導尋問かい!

 思わず額に冷や汗が浮き出そうになる。

 相変わらずSチックだな~この人は。

 こうやって人をからかうのが好きという何とも困った人なのである。

 真面目な奴ほどよく狙われ、ミズキなんかは毎回ターゲットにされていた。

 それに魔女という呼び名はまだ普通な方だ。

 他の奴等みたいに「女王様!」と呼ばないだけまだいいと思うが。

 返答に窮し困る俺。

 すると助け舟は意外なところからきた。

 人見知りなコノハが俺の袖を引きながら尋ねてきたのだ。


「あ、あのショウちゃん。この人は?」

「ああ、紹介するよ。

 ボッタクリ工房……じゃなく装備調整室の室長、御神レイカさん。

 このアオバダンジョンの数少ない上級職にして、武具を魔化強化できるエンチャンターでもある」

「そうなんだ?

 は、初めまして!

 ボクは咲夜コノハ、勇者です」

「あら、可愛い。

 貴女が噂の勇者ちゃんね。

 ショウ君の紹介にもあったけど、わたしはこの装備調整室の室長を務めてるわ。

 分からないことがあったら何でも聞いてちょうだい。

 何ならわたしの権限で融通を利かせてあげてもいいわよ。

 勿論……相応の対価は頂くけど、ね?」

「は、はいいいいいい」


 ねっとりと、まるで蛇が獲物を見る様な熱い眼差しをコノハへと送る魔女。

 この人が同性愛者っていう噂はやっぱり真実らしい。

 俺は魔女の視線を遮る様に間に入る。


「そ、それでですね。

 今日はこいつに装備を見繕ってほしくって」

「あら、そうなの?

 残念ね、もっとじっくりお話したいのに……

 まっ仕方ないわね。

 今日は室長の本分をまっとうするとしましょう。

 ちょっと、この子に勇者セットをお願い」


 一瞬残念そうな表情を浮かべた魔女だったが、手近な店員を捉まえるとコノハを紹介する。

 店員も手慣れたものだ。

 焦るコノハに声を掛け女性専用の更衣室へ案内していく。

 あの中で各自店員の手助けを受け武具を装備する。

 探索者の中には一人で自分の武具を装備出来ない奴も多いしな。

 男の探索者にはこの瞬間を楽しみにしている奴さえいる。

 可愛いゴスロリ娘達が間近で世話してくれるから、錯覚するのも無理はないが。

 まあ、あんまり悪質な奴は専属でいるマッチョなニューハーフ店員さんが担当になるらしいけど。

 ちなみに俺は全部自分でやるので店員の手は借りない。

 あくまで装備を受領するだけである。

 更衣室に消えたコノハを見送る俺

 そんな俺に――


「もう……戻ってこないと思っていたわ」


 魔女が、どこか哀惜じみた気持ちを込めて呟いた。


 


※1

 トリオン貧者の隊長さんみたいに汗を浮かべながら発言すると、尚効果的。

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