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第5話 戦闘シミュレーション


「ただいま、ショウちゃん♪

 ちゃんと貰ってきたよぉ……って、あれ?

 誰、あの人?」


 真新しい探索者証を片手に受付から戻ってきたコノハだったが、俺から離れていくミズキを見て小首をかしげる。

 無意識に行ってるであろうコケティッシュな仕草。

 ホントこいつはこういうのが似合う。

 精神年齢が低い訳じゃないだろうが……とても俺と同い歳には見えないな。


「ん? 

 ……ああ、まあ何ていうか昔の知り合いだ」

「ふ~ん」

「何だよ、その疑い深い目は」

「まあ別にいいんだけどね。

 ボクって寛容だし。

 最終的にショウちゃんがボクの下に戻ってくるならさ。

 どんなに汚れ様が傷ついて様が、心から迎えるだけだし」

「何を言ってるんだ、お前は」

「ふふ、秘密。

 それでこれからどうすればいいの?」

「まずはステータスの確認だな。

 クラスを得た時点でお前は常人とは違う身体になる。

 レベルが上がればさらに人とはかけ離れていく。

 それをこうやって逐一確認していく訳だ。

 探索者証貸してみ」

「はい」


 俺は差し出された合金製のカードを手近にあったリーダーに通す。

 すると数秒もしない内に一枚の紙がプリントし吐き出される。


「すごいねーこんなんで確認できちゃうんだ?」

「異世界ものやゲームと違って、現実じゃ【ステータスオープン】は使えないし、各種のゲージも表示されないからな。

 ちゃんと覚えておけよ。

 HPやMPはマジで生命線だからな。

 ほれ、これがお前の今現在のステータスだ」

「わあ」


 渡した紙を見て歓声を上げるコノハ。

 こいつ、さっきからそればっかだな。

 まあ無理もないか。

 段々憂鬱になるこの作業も最初のうちは楽しいものだ。

 レベルが上がるごとに速攻確認。

 その結果に一喜一憂したもんだ。


「ねえねえ、ショウちゃん。

 一緒に見てくれる?」

「いいのか?」

「うん!」

「まあ、お前がいいならいいか。

 ただ老婆心ながら忠告しておくと……

 懇願されてもパーティメンバー以外の奴へは気安くステータスを見せるなよ?」

「どうして?」

「有用なスキルを持ってると分かると拡散される。

 人の口には戸が立てられないからな。

 面倒ごとに巻き込まれる事が多い」

「リテラシーが重要ってこと?」

「だな」

「ならショウちゃんならいいじゃない。

 どうせパーティを結成するんだし」

「その事だが……コノハ」

「はい?」

「今日はこのまま潜るのか?

 明日からと聞いてたが」

「うーん……でもここまで来たし……

 この勢いを大事にしたい、かな。

 ショウちゃんは嫌?」

「好き嫌いじゃない。

 心構えの問題だ。

 ダンジョンに潜るという事は業魔と戦う事。

 幾分マシになったとはいえ、この平和ボケした二ホンで育った環境下で……

 お前は敵対者の命を奪えるか?

 殺し、殺される覚悟はあるのか?

 言っておくが俺は初陣で死に掛け、無様に泣き喚いたぞ。

 中には失禁した奴だっている。

 向いてる向いてないっていうのは……確実にある」


 俺の言葉に動揺するコノハ。

 思い悩んだ末に目を閉ざし考え始める。

 これはコイツの昔からの癖だ。

 大切な事を決める時にしっかりシミュレーションする。

 おそらく数秒もしない内に決断するだろう。

 残酷な言い様だがこれは大事な事だ。

 土壇場で後悔しない様、探索者を志すなら事前に様々な覚悟を決めておく必要がある。

 こんな単純な事に目を向けないで死地へ赴くのは自殺行為だ。

 観光おのぼり気分でダンジョンに潜り壊滅したパーティを幾つも知っている。

 だからこそ俺はコノハがどんな決断をしても支えてやろうと思った。

 

 

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