魔王ヴァリアッテは十六歳の女の子です
ヴァリアッテ・スノーホワイトは十六歳の女の子です。
白雪のような綺麗な白髪をしていた事から、スノーホワイトという名を数代前の魔王が名乗った事が始まりだと言われています。
ヴァリアッテは、魔王を名乗るのですから当然強い女の子です。
どれくらい強いかと言うと、魔族の十二使徒や地球共和軍の最強兵器など本気を出すまでもなく無双できるほどです。
ですが、あまり戦いが好きではなく、家の中でゴロゴロしている方が戦いよりも数百倍好きだったりします。
そんなヴァリアッテは良いオモチャを見つけました。
それが、久能氏春です。
久能氏春は地球人で、魔族と地球共和国との最終決戦の最中、偶然にも永眠していたヴァリアッテの唇を奪い、彼女を目覚めさせてしまったのです。
ヴァリアッテにとって、それは初キッスだったので、とても衝撃的でした。
目を覚ますと、久能の顔が目の前にあって、しかも、唇を奪われている……その光景はとても驚くべき事でしたし、心がとろけそうになる甘美さでした。
ですが、もっと衝撃的だったのは、ヴァリアッテが恥ずかしさのあまり久能を足蹴すると、得も言われぬ幸福感が去来した事です。
それは恋心だったのかもしれませんし、もっと別の感情かもしれません。
今の気持ちがなんだったのかと思い、久能を軽く足蹴をすると、やはり心が満たされたのです。
『余はこいつが欲しい!』
ヴァリアッテはそんな思いを抱き、魔族と地球共和軍の休戦に動く事にしました。
久能氏春を得るために。
久能氏春を手元に置くために。
ヴァリアッテの久能にするために。