一日の終わりは眠りと共に
夕食を食べ終えると、ヴァリアッテ・スノーホワイトはベッドへと横になるのでした。
「食べてすぐ横になると牛になるよ」
久能はそう言いました。
ヴァリアッテは何を言っているのだという顔を露骨にして見せながらも、何も言わずに布団の温もりに身体を委ねました。
「余は決して牛になどならぬ。牛になるのはお前の方だ、久能」
ヴァリアッテは目を閉じて仰向けになりました。
「……なあ、久能」
「はい?」
「お前は余の元にいて不服か?」
久能はヴァリアッテを不機嫌にさせるような事を言ってしまったのかと思って、今日の言動をあれこれと回想し始めました。
ですが、怒らせたような事は何一つ言っていないような気がして、どうしてそのような台詞を口にしてきたのかその理由を考え始めました。
「何を考え込んでおる? 余といても面白くはないのかとそういった主旨の事を訊いているのだ」
目を閉じているので、ヴァリアッテがどのような事を考えて、そんな事を言い出したのか久能には分かりませんでした。
「面白いよ」
「どう面白いというのだ?」
「ヴァリアッテといるのが楽しいのが面白い……かな」
その言葉を聞いて、ヴァリアッテは鼻を鳴らしました。
そして、目をかっと見開いて、天井を見つめました。
「……そうか」
その一言だけ言葉にして、ヴァリアッテは再び閉眼しました。
「……感謝している。余を目覚めさせてくれた事を。余の良き愛玩具になっている事を」
久能はなんて返したいいのか分からないでいると、ヴァリアッテは眠ってしまったようで、可愛い寝息を立て始めました。
「……風邪をひくよ、ヴァリアッテ」
久能はヴァリアッテに布団をかけようと思いましたが、眠っているもののヴァリアッテの防御本能はまだ健在だったようで、一度ならず二度も足蹴りをされてしまいました。
「……」
その感触に喜びを感じながらも、もう何度か蹴られながらも布団をかけてあげました。
「……ふぅ」
ヴァリアッテの寝顔は気難しい顔ではなく、無垢そのもので、見ているだけで心が和んでくるのでした。
「ふぁ……」
そんなヴァリアッテの寝顔を見ていると、久能も眠くなってきました。
そして、そのまま床にごろんと横になると、身体を丸めて、いつものように目を閉じました。
ヴァリアッテの規則正しい寝息が子守歌のようであるかのように久能は眠りの世界へと誘われるのでした。
明日は、ヴァリアッテとどう過ごすのだろうと期待に胸を膨らませながら……。