伊賀の使者
その後も、未来の食べ物の話をしたりしていた。肉や砂糖を使ったお菓子なんかには皆驚いていた。特に肉は、仏教では禁じられているので。体作るのには、やはり肉なので、自分はなんとか食べようと思ってる。
「ほう、美味いのか。それは食べてみたいのう。」
「は・・い、できれば、・・・作って・・・み・・たい・かと。」
「ふむ、眠そうじゃのう。話はこれくらいにしておくかの。母と部屋に帰り眠るとよい。」
「ほら、菊童丸。抱っこしますよ。それでは、あなた様失礼します。」
「はい、父上。おやすみなさい、失礼します。」
母に抱き抱えられて、部屋を退出した。心地よい揺れがまた眠気を。
「母上?驚きましたよね。私のようなものが子供で嫌ではないですか。」
「そうですね。驚きはしましたが、嫌ではないですね。むしろ、わたくしの子がこのような素晴らしい知恵のあるもので、誇らしいくらいですよ。」
よかった。少し心配だったんだ。気味悪がられたりしないか。
「ただ、あなたに乳を吸われることには少し抵抗がありますね。」
ごふう。(精神にクリティカルヒット、瀕死の状態だ。)
「乳母にはこのことは秘密にしておきましょうね。」
「・・・・はい。」
なんと、乳児にして人生最大のピンチ。将軍家の嫡男、母乳がもらえず餓死の危機・・・だと。
「さあ、部屋に着きましたよ。お布団に入りましょうね。・・・おやすみなさいな。」
「はい、おやすみなさい。」
それから、しばらくは稙綱にやってもらいたいことを話す以外は、普通に赤ん坊として這って体を鍛えては、乳を飲んで、うんちしては寝た。
そして、今日は待ちに待った来客だ。
「百地三太夫と申します。この度は伊賀の里の代表として参上致しました。」
「朽木稙綱である。表をあげい。」
おおう、これがあの百地丹波か。まだ若いな、爺さんな印象があるんだが。少し驚いた顔してるな。なんで赤子がって顔だ。なんとしてでも、自分で話すと言ってここに来ました。あっ、ちなみにあのダメ親父は京に戻っております。
「・・・・稙綱殿、本日はお呼び頂きありがたく存じます。それで、どのようなご用件でしょうか。」
「それについては、こちらにいらっしゃる将軍家嫡男である菊童丸様からお話になられる。」
「足利菊童丸である。百地三太夫殿遠い中よくぞ参った。」
鳩が豆鉄砲食らったような顔してるわ。
「・・・・はっ、菊童丸様。ご尊顔を拝し、誠に光栄でございます。」
さすが、忍びの長すぐに立て直して来たね。頭下げてると話しできないんだ。
「まずは、直答を許すゆえ、顔をあげい。」
「ははっ。」
「此度、そのほうを呼んだのは、余である。そのほうらを雇いたいと思っての。」
「はっ、ありがとうございまする。この度はどのようなお仕事で。」
チラチラ、稙綱のほう見ないよ。まあ、普通に考えておかしい状況だから、しょうがないな。
「いや、仕事ではなく、その方らを士分として取り立てたいと考えておるのじゃ。」
本日三度目の驚いた顔。
「士分としてでありますか。・・・・失礼ですが、わたしども伊賀者は、下賤なものでございます。足利家の士分としてはふさわしくないと存じ上げます。」
「何を申しておる。おぬしらがあげる情報はどんな武功にも勝るとも劣らないものじゃ。余にとってそれは、どんな剛勇よりも喉から手が出るほど欲しいものじゃ。」
「足利家には与えられ知行地もないが、そち個人に年500貫、伊賀の里全体で年一満貫ほどで考えておる。少ないようであれば相談にも応じようぞ。」
「なんと、それほどまでにご評価を。」
「それとじゃ、足利家では近いうちに式年遷宮を行おうと考えておる。そこで、京からの陸路として、伊賀に街道を整備したいと考えておるのじゃ。」
「なんと、伊賀を伊勢参りの参道にと。」
「どうじゃ、余に仕えてはくれぬか。」
「はっ、これほどのご評価を頂き、我ら百地家は足利家にお仕えさせて頂きたくございます。伊賀のほかの家についても必ず説得して参りまする。」
よかった〜
「そうか、三太夫。これからよろしく頼む。」
「はっ、誠心誠意お仕えいたす所存でございます。」
とりあえず、蚕とか綿花とか探してもらおう。これから冬で寒いんだよね。
あっそうそう、お願いしたいことがあったんだ。
「その方らは毒にも詳しいかのう。」
「はっ、毒に通じたものもおりまする。」
「この屋敷の台所に、その中から誰か入れてもらえぬか?」
「台所ですか?構いませぬが?」
「いや〜よかったよ。君たちがいるなら安心だ。これで、毒味なしで食事食べれるね。父上が冷めててまずいって毒味した後は言うからさ。」
「?! ははっ。なんとしても務めさせて頂きます。」
えっ、なんで涙流しながら、そんな感極まった風なの???
なぜ?ほわい?
・・・・・まあ、いっか。これで美味しいご飯が食べれるね。
毒味役というのは、身分が高いものには、重要で確実に裏切らないといえる家臣でないと任せられないものです。
新参者の家臣に任せるなどありえません。それを毒は入れないと信頼された上に、毒を入れられることも防げると二重に信頼された三太夫君は涙流して喜びました。
本人は温かいご飯が食べたいだけですが。忍者の忠誠心と美味しいご飯はプライスレス。




