作戦会議
「今後じゃがどうするのじゃ?」
「義兄上ここで、引きこもっておれば、管領と三好がなんとかしましょうぞ。」
この駄目親父〜。
「それはないですね。木沢長政自体は、父上を逃した時点で詰んでおります。あとは幕敵として、誰が打ち取るかという話でしかありません。今後の勢力争いに関わることです。むざむざと管領殿に首を譲る必要はありませぬ。」
「ふむ、では木沢長政と決戦でも致すのか?余は嫌じゃぞ。前線には出たくはないぞ。」
清々しいほどの情けなさですな。
「駄目ですね。それなりに所領があり兵が出せるのに、一切動かないなど、将軍家の名誉に関わります。」
「そうじゃな。菊童丸の言う通りじゃ。帝も不安に思うておろう。臣下として、これを捨て置くことはできぬぞ。」
「父上諦めてください。誰も槍振って戦えとは言いませんので。後ろで、座って戦場を見下ろしてるだけです。」
「負けたらどうするのじゃ。」
「逃げてください。最悪捕まっても殺されませんよ。」
「義晴!覚悟を決めい。」
「・・・・・はい。」
「さて、それはいいとして。稙綱。各地でどれくらい兵を集めれる。」
「刈り入れがまだですので、京や河内までの行軍となると、近江で5000、伊賀で1000から2000、伊勢でも5000といったところかと。それも、多少無理をしてになりますが。」
「木沢長政の方は?」
「三太夫からの情報では二万ほどでしょうか。かなり無理をして集めたようですね。」
二万対一万二千か。
「誰か意見あるかな?」
「人数差がありますので、全戦力での決戦しかないかと。」
義虎は、決戦ね。野戦強いもんね。
「勘助はなにかある?」
「一部を陽動に使い、本拠地を狙うというのは、どうでしょうか。本拠地が落ちれば士気も落ち、兵力差はなんとでもなりましょう。それに、戦後を考えれば、木沢長政の領地も組み入れたいところです。」
「それでは、こちらの本陣が兵力不足になりはせぬか?」
「そうですな。籠城にて、別働隊の到着まで、凌ぐことになりますかのう。」
「幸隆は?」
「勘助殿の策になりますかな?それに加えて、幕敵となれば、調略に応じる勢力もおりましょう。」
決戦にしても別働隊を作るにしても兵力不足だな。
「やはり、兵力が不足だね。刈り入れを無視して動員すればどうなる?兵糧は十分あるしさ。」
「刈り入れがなければ、三倍ほどは可能かと。ただし、今後の統治には問題が生じますな。」
ううーん。そうだよね。
「のう。菊童丸や。どちらもやればよかろう。」
「兵が足りませぬ。無理に動員すると言うことでしょうか?」
「いや?六角に兵を借りればよかろう?北近江が勢力圏というのであれば、朝倉もおろう?」
・・・・・・・・・
「「「「あー!」」」」
完全に失念してた。晴元との勢力争いばっかり考えてたから、周りに兵借りるとか、考えてなかった。
「そうですな。ここは、武田ではなく、足利家でしたな。」
「うん。忘れてたよ。さすが他力本願が常の父上。」
「えっ、余はいい意見言ったんだよね?馬鹿にしてない?」
「さすが、義弟じゃな。それでこそ足利将軍じゃ。」
「やっぱり、馬鹿にされてるよね?」
「六角に兵を借りるのはいいとして、朝倉、斎藤、織田、北畠にも使者を出そう。他は?」
「波多野。若狭武田。紀伊の畠山などでしょうか?」
三淵君いたのね。
「波多野は三好よりなのでやめておこう。畠山は、河内の守護の親類だからね。出来れば口を出して欲しくないな。」
「ふむ、では先程に加えて若狭武田に使者をお送りします。」
「で、別働隊の進軍だけど、伊賀から大和を通って河内に向かうってことでいいかな?」
「そうですね。それしかないかと。」
「菊童丸様、よろしいですか?」
「どうした。幸隆?」
「紀伊を迂回して、和泉よりと言うのはどうでしょうか?」
うーん、遠回りで進軍に時間かからないかな?船使えばいけるかな?
「稙綱。九鬼や安濃津の船でどれくらいの兵運べる?」
「全て動員すれば、5000は。」
「じゃあ、別働隊は大和からと紀伊半島を回って、和泉から河内に入るのを分けよう。」
「はっ。」
「伊賀上野には3000ほどと北畠の援軍を入れよう。大将は、三淵に任せる。参謀として、義虎と勘助をつける。」
「ははー。」
(菊童丸様ー。あの二人怖いのですが。)
お前もか三淵晴員。
(我慢しろ。正直、お主の用兵では不安だ。かたや、甲斐の虎。かたや、軍法を極めたと言われる奴じゃ。お主の力になろう。)
「興福寺には通行の許可を求めよ。道中の大和の豪族にも兵を出させい。出さぬものは、逆賊の味方として処分致すと、文を出せ。」
「もう一軍は長野稙藤を将に据え、参謀として真田幸隆、矢沢頼綱を派遣する。伊勢の残りの兵と、織田よりの援軍を主力と致せ。」
「ははー。」
「京へは、父上を大将に北近江の兵と六角の兵を主力と致す。また、朝倉・斎藤・武田にも使者を出せい。特に朝倉には朝倉宗滴に出馬を願いたい。かの者の用兵に期待したい。」
流石に、六角もいるところに、新参の四人を参謀にするのは無理だからね。ここは是が非でも、あのチート爺さんの力を借りたい。
「しかし、一向宗の抑えがいなくなるのは朝倉としてはまずいのでは?」
「うーん。本願寺に手紙を出せる?幕敵の討伐を行う邪魔立て無用と。」
それでも邪魔してきたら、あとで攻める大義名分になるしね。
「三太夫。」
「はっ。」
「木沢、細川の動向について調べて欲しい。あとは、後方の攻略が進んでから、本軍との戦闘を行いたい。出来れば、別働隊が敵の本拠地を抑えるまで情報を伏せたいのだが、木沢軍の伝令を潰せるか?本軍は刈り入れが終わってから編成できるし。」
「はっ。出来うる限り対応致しまする。」
「菊童丸様。」
「どうした、勘助。」
「はっ、こちらから偽の情報を流されてはどうでしょうか。」
「ふむ、どのようなじゃ?」
「細川方には、木沢軍が公方様を抑え、細川を討伐する軍を編成していると。木沢軍には、公方様と管領殿が丹波の波多野家に逃げ込み、討伐軍を編成していると。これで、互いに牽制しあってくれますし、こちらから目も反らせましょう。」
「そうだな。三太夫出来るか?」
「はっ。」
「他には何か意見あるかな。」
・・・・・
「・・・・のう、菊童丸よ。六角定頼に朝倉宗滴がおれば、余は行かなくてもよいのではないかのう。」
「私も北畠殿がおられるのであれば、いなくても。」
「二人とも。頑張って!骨は拾うよ。」
「そうじゃぞ、義弟よ。例え死んでも菊童丸がおるゆえ、安心せい。」
「叔父上。」
「菊童丸。」
ガシッと握手を交わした。
父上、三淵。そんな死にそうな顔しなくても、普通に勝てると思うから。




