足利家
将軍?
ホワイ、ああもしかして角刈りの彼のことかな。
この幸薄そうな、若造が将軍ですと。
「稙綱。赤ん坊相手だからって嘘は駄目だよ嘘は。」
「いえ、それが残念ながら。」
「本気と書いてマジ?」
「本気です。」
「マジなの?」
「??マジです。」
「おーい、余の扱い酷くない。」
もう一度、じっくり顔を見てみた。ザ 平凡。服装はかなりいいはずなのに、このオーラのなさ。
「大変だったんだね、みんな。」
「わかってくださいますか。」
気持ちはわかったけど顔近い、可愛い女の子ならまだしも暑苦しいおっさんの顔はちょっと。
「とりあえず、いくつか教えて欲しいことがあるんだけど、教えてくれる。それ聞いてやってもらいたいことがあれば、お願いしたいから。」
「はっいや、しかし・・・・」
「構わん。余が許す。話してやってくれ。」
色々聞きました。
ええっと、まず足利将軍ですが都追われて、近江に避難中に俺が生まれたらしい、今は戻ってるけど、今回の話をしにこっちに来てるらしい。直轄領はない。完全に味方と言えるのは、今ここに集まってる人達で、ほとんどが北近江の領主と幕臣。ただ、石高は低くて、実際の力は大したことない。
お金は偏諱による寄付金でそれなりにあるらしい。
ただ、管領の細川晴元が実質的には権力を握っていて、出来ることは少ないらしい。かといって、晴元を廃するために戦をするにしても、結局六角に力を借りて行わなくてはならなくて、晴元が六角に変わるだけだし、京が戦火にさらされるだけにしかならないらしい。
なんだろうこの無理ゲー。
京は現在、細川晴元が実質的には支配しているが、家臣の三好元長を誅する際に一向宗の力を借りたが、かなり暴れまわって、京は荒れた状況らしい。
うーん。親父やっぱり駄目じゃね、部下に支配されてるんじゃ。
親父は11歳で元服して、将軍職になったが、家来の晴元や三好元長に追い出され、北近江に避難してたらしい。つい、最近六角定頼の仲介で、晴元と和解して、京に戻ったらしい。
苦労したんだな親父も、だから幸薄い顔してるんだね。
とりあえずはわかった。うん、そりゃやめたくなるわ。神輿以外はさせてもらえないみたいだ。
やっぱりまずは京以外に、足利家の直轄領が必要だな。畿内はほぼ無理だ。晴元に邪魔されるし。
若狭は港は魅力的だけど、石高が低い。南近江は六角が強いし、名目は味方だ。北近江の浅井も六角が手を焼いてるくらいで、かなり難しいだろう。美濃は斎藤道三が出てくるはずだ。正直あのマムシのジイさんと争うのはちょっと。
この情勢で最も可能性があるのは、北伊勢かな。全体を支配できている勢力はないし、小さな勢力が乱立してるから、直轄化しやすいはずだ。
そうすると問題は・・・・・。
「伊賀について教えて欲しい。」
「土豪の寄り合い世帯ですね。支配者と言えるものはおりません。山に囲まれており、あまり農作はできないようで、傭兵や乱破としての収入で暮らしておるようです。」
「味方に出来るか。」
「雇うことは可能です。」
「いや、家来としてだ。」
「なりません、あのような下賤な輩、足利家の家臣としてなど。」
「下賤も何もない。力が必要だ。乱破は貴重だ。相手の布陣や戦力が分からなければ、対策を練ることすらできまい。とにかく一度会いたい。」
「あとは、農業改革と学校だな。一度田植えとかを見てみたいな。」
「学校ですか?関東には足利学校がございますが、こちらでも作るということでしょうか。あと、田植えですか?」
「あーあるんだ学校。じゃあこっちに作るのは問題ないかな。」
「はっ金銭的な問題はございますが。」
「じゃあ、京の町で孤児や農家や武家の次男三男なんかを集めてもらえる。」
「武家はわかりましたが、孤児や農民ですか?」
あれ、学校あるんだよな?
「何か問題でもあるのか?」
「学のないものを集めてどうなさるのですかな。学校では公家や武家、それに僧侶などが集まり学問を修める場所にございます。そこに孤児や農民などと。」
おう、この時代の学校ってそんななんだ。
「孤児や農民の三男以降のものであれば、飯を与え、知識を与え、その後厚遇で召し抱えれば、こちらに忠誠を誓ってくれよう。足利家には裏切らないと確信出来る家来が少ない。それを一から育てる必要があろう。そのためには孤児や農民というのはしがらみが少なくて良い。」
「はっ、しかし・・・・・いえ、そうですね。やってみるのは面白いかと。」
「あとは作ってもらいたい道具と手に入れてもらいたいものがある。鍛冶屋と商人と会うことはできぬか。」
「はっ、一度手配いたしましょう。」
「ありがとう、まずはそんなところかな。
申し訳ないんだけど、そろそろ眠たくて、少し昼寝させてくれ。」
「はっ、すぐにお運びいたします。」
駄目だ本格的に眠い。おやすみなさーい。