勢力把握
今年から、ひとつ変わったことがあります。
さあ、なんでしょう〜か。
「菊童丸様、少しずつ鍛錬を始めましょうか。」
「万吉君、柔軟とラジオ体操くらいはやってるよ。」
「武士の本分は槍や弓ですよ。」
「いや、将軍が槍振り回すとか、負けだから、そんな暇あれば逃げるべきだよ。」
「逃げるためにも、必要です。」
ぬっ、一理あるな。
「まずは素振りから始めましょう。」
嫌なのに、刀とか槍とかなんの役に立つよ。
しょうがない、健康のためと思ってやりますよ。
「まずは袈裟斬りです。」
「こう?」
「いえ、こうです。」
・・・・
もう、腕が上がりません。休ませてください。
「もう無理。」
「初日ですし、これぐらいにしておきましょう。」
えっ、なに明日はもっとってこと?
「では、続いて勉学ですね。」
「あっ、それはいいの。」
「何を言うのです。足利家の嫡男ともあろうものが学がないなど。」
「もう、ほとんど知識は入ってるから、どちらかと言えば、実践と知恵のほうが必要だから。ねっ、稙綱!」
「稙綱殿?」
「そうですな。あえて、やらなければならない部分はそう多くないですな。あえて言えば歌くらいですかな。」
「あっ、もうそれは才能がないから。」
「まだ、5歳ですよね?」
「うん、大丈夫大丈夫。」
・・・・
「さて、万吉君もいることだし、情勢についておさらいしておこうか。」
「まず、京、摂津、和泉、大和、四国の東あたりまでが、実質的に、細川晴元陣営だね。」
「河内、紀伊の一部が畠山。南近江が六角。北が浅井。越前、朝倉。若狭、武田。丹後、一色。丹波はバラバラで、波多野が有力。因幡は山名。それより西は尼子。尼子は大内と争っているので、東には来ないけど。尾張は織田。美濃は土岐。で足利が伊賀、北伊勢、西近江。あっ、南伊勢が北畠か。こんなところかな。京の情勢に影響しそうな地域は。」
「で、六角が基本的に味方。管領は潜在的な敵だね。」
「晴元殿と争うおつもりなのですか?」
「いや、争わなくて済むならそれでもいいけど、乱世そのものを収めるとなると、やはり将軍より管領の実力が上というのはまずい。」
「そういうものなのですね。」
「だから、味方を増やす必要がある。で、正直京より西は厳しい。となると、やはり東になる。」
「そうですね。やはり朝倉でしょうか。」
「朝倉は加賀の一向宗が不安で、京への派兵は難しい。」
「では、浅井ですか?」
「浅井は領地としては候補だが、六角との関係を考えると味方に引き込みにくい。直轄領に組み込むつもりで作戦をたてるべきかな。」
「では、一色や武田ですか?」
「はっきり言って、焼け石に水だね。派兵できるほど余裕のある国じゃないし。」
「うーん。難しいんですね。」
「南伊勢の北畠は南朝派だったからね。なかなか強かで、多分中央の争いには、援軍とはいかないね。」
「では、美濃と尾張ですか。」
「そうだね。ただ、両国とも国内の情勢がはっきりしないから、現状援軍は望めない。今後の展開で勢力を伸ばすものに恩を売って、味方に引き込むのが理想だね。」
「それは、わかってるのですか?」
うん、前世知識で知ってるんだ。
「というわけで、文出して稙綱。」
「はっ。」
・・・・・・
さあて、今日来るはずなんだよね。
「菊童丸様、ご両人共に、参りました。」
「入ってもらって。」
「斎藤利政でございます。」
「織田信秀でございます。」
「本日はよくぞ参ってくれた。」
「我ら二人をこのようにお呼びなされるとは、どのようなご用事でしょうか。」
「ふむ其の方らに話があっての。」
「我ら二人にですか?」
「昨今の美濃と尾張の情勢についての。」
「「????」」
「美濃では土岐頼芸とそちの仲違いで、一触即発の状況じゃな?」
「はっ、誠に恥ずかしいことではありますが。」
「尾張では、織田信友が斯波を傀儡にし、そちと争い、情勢が定まっておらぬな。」
「はっ、申し訳ございませぬ。」
「ふむ、其の方らの身分では、なかなか守護に逆らうわけにも参らず苦労しておろう。」
「いえ、そのようなことは。」
「よいよい、余が思うに土岐や斯波では、この乱世では役不足であろう。正直、そちらのような才に溢れたものが、守護であれば我もなんの心配もせずにすむのじゃが。」
「・・・・」
「こたび、このように呼び出したのは、そのほうらの働きをねぎらおうと思っての。」
「はっ、ありがたく存じます。」
「ふむ、褒美として、5000貫ずつと太刀を一振りずつ授けようと思うのじゃが、受け取ってもらえるかの。」
「「はっ、ありがたき幸せ。」」
「ふむ、そうか。これからも、美濃と尾張の安寧のため、力を尽くしてほしい。」
「はっ。」
「そういえば、信秀の嫡男は今年いくつじゃったかのう?」
「7つになりまする。」
「利政のところによき年頃の姫はおらなんだかな?」
「はっ、6つになりまするが。」
「そうか、どうじゃ。二人の婚姻など、仲人は務めさせてもらうぞ。そうじゃ、叔父上や父上に頼み、養子として嫁入りさせるのもよかろう。」
「・・・・」
「のう、稙綱どうじゃ。」
「そうですな。よきお考えかと存じまする。」
「どうじゃ、利政?信秀?」
「はっ、謹んでお受けいたしまする」
「それがしも、利政殿と縁を結べるうえ、菊童丸様よりの格別な配慮。断る理由はございませぬ。」
「そうか、それはよきかな。では、具体的な話については、国元に帰り、話を詰めてから決めよ。」
「「ははー」」
・・・・
三ヶ月後、織田吉法師と斎藤帰蝶の婚姻が決定しました。元服の前後に婚儀が実施される予定になりました。
また、守護からはいちゃもんつけられて、目下内乱中です。きっちりと菊童丸の名前で両者への支持は示したよ。兵糧と武器の支援も充分です。まあ、 父上の方は何も言っていないので、子供の戯言で済んでるよ。ただし、自分が元服をしたら、守護職を与えることになりますぜ。今年には、二人とも勝ってくれることだろう。
黒い三歳児。




