ダメ親父
暑いです。夏です。
今で、五ヶ月くらいですが、ようやくハイハイが出来るようになりました。はやいのかな?
母の目を盗み、部屋を抜け出してきたところです。まず屋敷を探検しようと思います。
広いな、いや自分が小さいのか?
ちょっと進んだだけで疲れた。
「菊童丸様、どこにおいでですかー。」
やばい、見つかる。
どうしよう。怒られるかな。あっあの部屋のふすまが空いてる。隠れろー。
ふう、なんとかたどり着いたー。疲れた。
「公方様、なにとぞお考え直しくだされ。」
うん、父さんがいるのか?
「もう、余は疲れた。菊童丸に家督は譲り、余は隠居いたす。その方らを呼んだのは、菊童丸の後見として、年寄衆に任じるためじゃ。」
おい、ダメ親父なに言っちゃてんの。こちとら、赤ちゃんよ。まだ、離乳食すら始まってないんだよ。
「何をおっしゃいます。菊童丸様はお生まれになられたばかり、執務などおできににはなりません。」
「だから、菊童丸が大きくなるまでは、そちたちが実務を、取り扱えば良いのじゃ。」
あかん、これあかんやつやん。ごっつダメ親やん。出来るわけねーだろ。
いや、しかしこの親に任せてうまくいくか?どうせやるなら、はやいうちに自分でやる方がましじゃないか。それに内政チートって、やってみたかったし。
いや、でもここってどこよ。どんな産業があって、どんな状況にあるんだうちは。
「なりませぬ、お言葉ですが、菊童丸様はまだ1歳にあらせられます。病気や事故にあわぬとはかぎりませぬ。少なくとも、菊童丸様が元服なされるまでは、お待ちくださるようお願い申し上げます。」
「嫌じゃ、もう余はやりたくないのじゃ。ぬしらにとっても、よかろう自由に実権を握れるのじゃから。」
「何を申されます。拙者どもにそのような野心はございませぬ。なにとぞ、菊童丸様の元服まではお待ちいただきますよう、一同公方様を支えてまいりますので、お願い申し上げる所存であります。」
うーん、この親父に任せるよりは、家臣に手伝ってもらって自分でやるほうがいいんじゃないかな。
現代知識もあるしさ。中世くらいなら、半端な知識でも役に立つだろ。よし。
なんとか障子を開けて。
「やりたい。やらせてくださーい」
「ほら、菊童丸様もこのように申して・・・・
菊童丸様!?どうやってここに。」
「ほれ、稙綱。菊童丸もこう申しておる。」
「何をおっしゃいます。1歳の赤子が話せるはずなど・・・・」
「やりたいの、稙綱達が手伝ってくれるんでしょ。じゃあ大丈夫だよ。」
「お話なさっておられる!?そんな馬鹿な!」
「稙綱、今って何年?」
「しれっと流された。ええっと今年ですか、今年は天文5年になります。」
いつだよ。わからん。
「西暦では?」
「西暦?ですか?」
西暦使われてないのか。うーん、どう聞けばいいんだ?
「ここってどこ?国は?」
「ここですか。近江の国の坂本にございます。」
滋賀県だよな。坂本って明智光秀の城があったとこだよな。確か西の方。
「近江の大名は?」
「大名ですか?南近江の守護は六角定頼殿でございます。」
おっ聞いたことあるぞ。
「南はってことは北は?」
「京極高延殿でございます。」
誰だよ、苗字は聞いたことあるけど。
「浅井じゃないの。」
「いえ、守護は京極殿でございますが、実質的な支配者は、浅井亮政殿と言えましょう。」
「美濃は斎藤?」
「美濃は土岐になります。斎藤は守護代でございます。」
おっわかってきたぞ。戦国時代の信長とか出るちょっと前だ。これ。
確か、鉄砲伝来が1543年だったよな。
「鉄砲、火縄銃、種子島って知ってる。」
「いえ、存じ上げませぬ。」
伝わってないのかな。1530年代かな。
うーん、他何聞いたらわかるだろう。
「あの菊童丸様、なぜお話になられるのですか。まだ、1歳でございましたよね。」
えっ、赤ちゃんって何歳から喋れたっけ?やば、やっちゃった。てへ。
「僕は天才だからね。」
我ながら痛い子。
「えっ、いえっこの歳でお話になられるのですからそうでございますね。」
うーん、まだ年代はっきりしないんだよな。そうだ、これ聞いておこう。
「ねえ、今の将軍って誰なの?」
「なにをおっしゃいますか、今の将軍様は、あなた様のお父上でおられる足利12代将軍 足利義晴様にございますよ。」
えっまじで?このダメ親父が将軍?
えっこの顔で?あと、なにそのムカつくドヤ顔は?!