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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 7 堕ちた神々  作者: 石渡正佳
ファイル7 堕ちた神々
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けじめ

 大和環境が海岸の撤去工事を終えた日の昼前、右翼の大藪がやって来た。保険会社向けに重態を装うためか車椅子に乗っていた。

 「どうだい大和環境はちゃんとやっただろう」

 「現場はきれいになりました。それでもけじめとして新潟まで検査に行くつもりです。それで問題がなければこの事件については解決です」

 「手抜きせずにはっきり白黒を決めてもらった方がありがたい」

 「新潟県庁の立会いを求めることになります。かまいませんね」

 「新潟の業者なんだから当然だろうね」大藪は四の五の言わなかった。むしろ行政が厳しいからこそネゴシエータとして彼の出番もあるのだ。過日に提出した領収書の裏を作っておけくらいの指示をすれば面子が立つのである。

 同じ日の午後、新潟県庁産業廃棄物課の加賀が一週間前の撤去の報道について尋ねたいと電話をかけてきた。

 「そちらで撤去指導されている現場のダンプがもしかして大和環境のものかと思いましてお電話しました」

 「さすがですね。社名はぼかしてあったのに、それでもわかったんですね」電話口に出た伊刈が感心したように言った。

 「たまたま県内の別の業者の検査をしていたら、そこの社長がさっきテレビのニュースに大和のダンプが出てたぞって言うものですから、ほんとかなあと思って調べたんです」

 「なるほど同業者のダンプは見ただけでわかるんだ」

 「ご存知のとおり大和環境は四月に県産協(新潟県産業廃棄物処理協会)の理事長になった県下有数の業者です。産廃ばかりではなく地元の永岡市の一廃の八十パーセントを処理している会社なんです。ところが実は黒い噂の絶えない会社でして理事長就任後はさらに増長しています。ここだけの話ですが県内の別荘地でも不法投棄の疑いがありまして県警が内偵を開始しています」

 「聞いていた評判とはかなり違っているわけですね」

 「こんな遠くの自治体にまでご迷惑をおかけしたと聞いて、ようやくこっちでも処分方針が固まりそうです。それでもまだ上層部が二の足を踏んでましてね。それで犬咬市の処分の方はいつごろ出るんでしょうか」

 「その前に立ち入り検査に行こうと思っています」

 「そうですか、こっちまで検査に。お出かけのご予定はいつですか。ぜひお声をかけてくださいませんか」

 「いいですよ。もしかして立ち会ってもらえるんですか」

 「もちろんです。差し支えなければぜひお願いします」

 「わかりました。連絡します」

 同じ日の夕方、伊刈は所長室に呼ばれた。入室すると仙道が渋い顔で立っていた。

 「ご苦労様、今日で撤去工事は終わりですね」奥山がねぎらいの言葉をかけた。

 「まだ終わりじゃありません。撤去はしましたが、これで一件落着にするわけには行きません」

 「それは大和環境のことですか」

 「それだけじゃないです。広域農道の南側現場の調査はこれからですし、北側現場の撤去をさせた業者だって調査。がすっかり終わったわけじゃないんです。さっきも新潟県庁に大和環境の立入検査の協力依頼をしたところです」

 「右翼の大藪が来てたのは大和の件だろう」奥山がなかなか本題に入らないのを見て仙道がじれったそうに言った。

 「そうです」

 「本課がそのことでちゃちを入れて来たんだ」

 「は?」

 「大藪はどうでもいいんだけどよ、大和がいろいろあってな」

 「民族系ってことですか」

 「まあそうだな」

 「幕を引けってことですか」

 「そうはっきりとは言ってねえけど俺の見たとこ本課は大和を告発する気はねえな」

 「そうですか」

 「新潟行くのは止めとけ。わざわざ行ったって本課にその気がねえんじゃどうしようもねえぞ」

 「大藪にも新潟県庁にもやるって言ってしまったので検査には行きます」

 「早まったな」

 「そんなことないです。本課がどうあろうと検査にはどっちみち行きます」

 「ムダ足でもってことか」

 「そうとは思っていません。でも所長が行くなとおっしゃるなら行きません」

 「検査には行ってください。ただし事務所かぎりの検査ということでいいですか」

 「本課がどうあろうとけじめはつけさせるつもりです」

 「おい伊刈」

 「大丈夫です。所長にも技監にもご迷惑になるようなことはしません。大藪の顔も立てます。任せてください」

 「わかったよ」仙道が呆れたように天井を見上げた。

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