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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 7 堕ちた神々  作者: 石渡正佳
ファイル7 堕ちた神々
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姐さん

 円の本社は福島県境に近い高萩市にあった。商店街の一角にある小さな雑居ビルの二階だった。ヤクザの事務所風の頑丈な建物を予想していたので拍子抜けだった。表に会社の看板はなく、暗い階段の上り口に僅かに「株式会社円」のプレートがあった。一階は居酒屋、三階から上は空室になっていた。書類もパソコンも押収されて何もなくなったワンフロアの事務室で伊刈と長嶋は安座間の歓迎を受けた。狭い部屋に不釣合いなほど立派な神棚が祭られていた。ディーゼルのブロークンジーンズにヒステリックグラマーのスカル柄のTシャツというロックファッションが彼女のイメージにはあまり似合っておらず、顔も化粧っけがなくて少女に退行したようだった。伊刈と長嶋が並んで神棚に一礼するのを安座間は意外な顔で見守っていた。

 「ほんとに何もないでしょう。これからどうしようかしら」安座間は寂びしそうに言った。逮捕寸前なのに若衆全員が彼女を守るために残っていた。

 「筑浪でもやったんだな」長嶋が先に口火を切った。

 「もうやめようと思ってたんだけどうちの子がついバイトしちゃってね。うちのダンプでやったんじゃ逃げも隠れもできないわね」

 「組織はまだ残ってるのか」

 「上はもうやめろって言うんだけど、すぐにやめられるものじゃないわ」

 「茨城もエコがらみなのか」

 「違うわ」

 「エコが振り出したマニフェストをいただいたので真相はだいたいわかりましたよ」伊刈が言った。

 「どうわかったの?」

 「全部で二百五十枚ありましたね。そのうち半分の百二十五枚が円、残りの半分が根津商会の分担でしょう」

 「まあ」安座間社長は目を丸くした。「さすがだわね。いんちきマニフェストでそんなからくりがすっかりわかってしまうんだからすごいわ」

 「金剛産業に行ったのは一台なんでしょう。一台だけ返品されたというのは嘘でスタンプをもらいに行ったのが一台なんでしょう」

 「冗談がきつすぎるわ。もう勘弁してよ」

 「仕事を折半にしてたってことは円と根津商会は平等ってことになります。ほんとはどっちが上なんですか」

 「さあどっちでしょう」

 「大久保さんと一松さんはどっちが上ですか」

 「それもどっちかしら。みんな逮捕されてしまったわね」

 「大久保さんは無傷ですよ。最終処分場を物色中だそうじゃないですか」

 「そこまでご存知なのね」

 「円はレーベルの荷も運んだことがありますね」

 「ひどい会社よ。水をかけながらパンパンに積まれるから荷台から降りなくなってしまうの。二度とあんなとこには行きたくないわ」

 「どうしても産廃からは足を洗えないんですか」

 「信じてもらえるかどうかわからないけど私は犬咬ではやってないのよ。でももういいのよ。あたしどんな刑になるの」

 「運転手がやっただけなら会社に罰金が来ても社長のガラは大丈夫じゃないすかね」

 「弁護士もそう言ってた。保釈金を積めばすぐに出れるって。それにしてもお二人はすごいわね。ほんとに犬咬をきれいにしちゃったわねえ」

 「まだこれからですよ。まだなんにもわかってないんです」伊刈が真顔で言った。

 「なんにもとは」

 「たとえば安座間さんの上が誰かってこと」

 「それを知ってどうするの?」

 「ただ知りたいだけです」

 「それは長嶋さんがご存知じゃないの」

 「俺は知らないっすよ。そういうのはうちの会社も上のほうしかわかんないすからね」長嶋が嘘でもなさそうに弁解した。

 「せっかく遠くから来てくれたのになんにもお土産がなくて残念だったわね」

 「一つだけ記念品をもらいましたよ」伊刈が言った。

 「なあに」

 「安座間さんの素顔を拝見しました」

 「まあやだ。あたし会社ではいつもスッピンよ。意外と化粧って面倒くさいほうなの」安座間は両頬に手をあててマジで照れた。

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