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射撃魔法と古武術でまかり通る異世界英雄譚  作者: 丸山きゅうたろう
第二章 迷宮街の新人冒険者
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サラトガ迷宮下層

――サラトガ迷宮五日目。中層ボス広場


「修一はこの数日で、射撃精度が増しているんでねぇか?」


 一度の射撃でトロールを倒したことにシズルが驚く。


「昨日は三回バレットを撃ち込んでやっと倒れたからね。二人のおかげで、順調に戦闘訓練ができてますよ」


 受け身を取って転がっていたニールが立ち上がる。大怪我は無さそうだ。


「ニールお疲れ。さっきは惜しかったね。あ、ヒール要る?」


「いや大丈夫。この広間を抜けると下層だ。昨日はここで引き返したけど、今日は先に進むかい? この三人なら大丈夫だと思うよ」


「行けるなら、行きたいな」


「レベルアップするには、強い下層の魔物を倒した方が早いからね。ボク達はフォロー役に徹するから、修一が攻撃して経験を積んだらいいよ」


「ありがたいけど、二人だってレベルアップ目指しているんだろ?」


「いや、今いない二人が合流するまで待つよ。ボク達だけレベルアップして差が広まっても連携が取り難くなるしね」


「そうか。ではよろしく頼みます」


 ニールの人の良さを利用しているようで申し訳ない気持ちはあるが、修一には焦りがある。プリシラと合流する前に、少しでもいいから戦闘経験を積みたい。


「ボク達からすれば、修一はもう十分強いよ。でも、記憶喪失のせいか、時々不安な顔してるよね。戦闘経験を積んで少しでも不安がやわらぐなら、幾らでも協力するよー」


「そんだ。ニールは体は小せえが懐は大きい。甘えたらいい」


「へへ、シズルはそこに惚れたんだね」


 ニール達の言葉にほろりときた修一だが、恥ずかしいので冗談で返した。シズルは赤くなってニールをちらちらと見ている。ニールは苦笑い。


 広間を抜け、しばらく進むと、狼型魔物の群れがいた。群れはこちらに気付いて警戒しているが、動きはない。


「ヴァーミリオンウルフ四匹の群れだね。この魔物が、ボクとシズルだけでは下層に来れない理由の一つだよ。単体のウルフなら倒せるけど、ここの迷宮では必ず群れてる。魔法も使うし、素早いんだ」


「ヴァーミリオンウルフ単独ならストーンバレットで倒したことがある。今回はストーンショットを試したいんだ。威力が落ちるから、倒しきれなくて混戦になるかもしれないけど、どうかな?」


「混戦になっても、わだしがこの大盾で二匹は防ぐ」


「そしてボクが残り二匹を引きつけるから、修一が一匹ずつ、仕留めてくれればいいよ」


「分かった。四匹全て狙うよ。弾は一匹あたり二発か三発。これで倒しきれるか……。ストーンショット!」


 修一のマナ錬成を感知して、四匹は瞬時に散開し、こちらに駆けてくる。


――ダガガッガガガッ


 射出された十数個の石弾は、四方向に散開した魔物に向かい、その四つの身体を穿うがつ。魔物は全て倒れた。一匹はまだ息があるが行動不能だ。


「凄い。トロールの時もそうだけど、昨日より、明らかに威力が増しているよね。レベルアップしたの?」


「いや、してないよ。だけど能動的に魔法を発動してみた」


「能動的って、どういうこと?」


「つまり、石弾にマナをまとわせるイメージとか弾の質量とか初速を意識しながら、マナ錬成してみたんだ。そうしたら威力が増した」


「んん? それって当たり前のような。今まではどうやってたのさ?」


「今までは、目標を念じて、魔法名を唱えてただけだねぇ。そうすると勝手にマナ錬成が始まって石弾が射出された。だから受動的」


「はああ? そんな適当なやり方で魔法が撃てるの?」


「さあ? なにしろ俺は記憶喪失だから、手探りで色々試してるんだよ」


「ハァ、そうだったね。修一は、忘れている戦闘知識を思い出せばまだまだ強くなりそうだね」


 修一の底がしれないな、とニールは乾いた苦笑いを浮かべるのだった。



****

――サラトガ迷宮十日目。下層ボス広場手前通路


 この何日か、修一達は迷宮下層で狩りをしてきた。ニールの提案により、時間のかかる素材の剥ぎ取りは魔石のみにして、とにかく修一に戦闘経験を積ませた。


「ついに下層ボス広場まで来たね。修一、やってみるかい?」


 ニールの視線の先には、オーガキングと眷属けんぞくのオーガ三匹がいる。


「アシュレイでさえ苦戦したっていうオーガキングじゃないか。大丈夫なのか?」


「オーガキングとの戦闘経験はボク達の方があるよ。何度もここに来ているからね。接敵するまでに弓で眷属を一匹倒す。キングをシズルが盾で抑えてる間に、三人で眷属二匹を倒してから、最後に全員でキングの順だね。シズルの力と盾術に頼った戦法だけどね」


「へえー、シズルの防御力は相当あるんだね」


「あだしは盾だけは自信あるよぉ」


「確かにキングが抑えられるなら、攻略できるな。眷属のオーガなら、ストーンショットで倒せなくても、動きは鈍るだろうし。あいつら武技や魔法は使ってくる?」


「オーガキングはストレングスを使うことがたまにある。他はないね」


「ふむ、じゃあこうしよう。まずは眷属三匹にストーンショットを撃つ。倒れなかったら、ニールとシズルで相手してくれ。俺は――」


「修一がオーガキングと対峙するのかい? キングはかなり膂力りょりょくがあるよ。盾もないと厳しいって」


「うーん。あ、そう言えば、俺、自分の単純な腕力を試したこと無かったな。シズル、思いっきり盾を殴ってみてもいい?」


「構わねえ。あだしは、キングの攻撃、数発なら真正面から耐えられるよ。基本は盾で受け流してるけど」


「ダメダメ。拳を痛めちゃうよ」


 修一が構えたところを、あわててニールが制止する。


「あーそうだね。じゃあ七割位の力でいきます」


 修一は力まず、丁寧なモーションをイメージしながら突いた。


――パキイィィン


「あ、ヒビが入った……。そういえば、脱力して突くのが一番破壊力あるって格闘マンガで読んだなぁ」


「ああぁ、思い出した。修一はギルドの床を蹴破ったことあるじゃないかあぁ」


「おとうが餞別にくれた盾が……」


 ニールとシズル二人はがっくりとうなだれている。


「あぁ、俺、床を蹴破ってたね。ギルド初日は色々あったから俺も忘れてたわ。ごめんなさい。せめて修理代出させて下さい」


「いや、かえって良かったかもしれない。シズルは冒険者になってからずっとこの盾を使い続けてたからね。もう限界が近くて、キングとの戦闘中に壊れてたかもしれない」


「そんだね。わだしはこの盾に思い入れはあるけど、決して最高級の盾ではないから」


「そういう訳で、修理代はパーティの予備費から出すよ。まあ、今日は出直そう」



****

――サラトガ迷宮十一日目。下層ボス広場手前通路


「シズル、今日は予備の盾を使ってきたけど、これまでの調子はどう?」


 ニールがシズルに聞く。


「形も性能も同じくらいだし、問題ない」


「昨日はお騒がせしました。じゃあ改めて。俺が三匹の眷属にストーンショットしたら、キングに向かう。二人はまずは眷属を倒してくれ」

 修一が手順を確認する。


「昨日は修一の筋力を確認したから、それで良いよ。でも気を付けてね」


「うん。魔法じゃなくて、剣術と武技でどこまでキングと戦えるか試したい。二人ともフォローお願いします」


「了解ー」

「わがった」


 一同は広間に向かって足を踏み出した。

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