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射撃魔法と古武術でまかり通る異世界英雄譚  作者: 丸山きゅうたろう
第二章 迷宮街の新人冒険者
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サラトガ迷宮

 翌朝、宿を出た修一は、ニール達と待ち合わせている迷宮に向かう。街から丘陵を登って、半時間ほどで迷宮入口に着く。


「おはよー。待たせちゃったかな」


 ニールが戦士職の女性と共にやって来た。修一は思わず女性を見上げる。デカい。修一より二回り大きいアッシュと同じか、あるいは、それ以上か。女性は大盾を持っている。


「おはよう。早めに来て、周りを見学していたから待ってはいないよ。そちらの女性はお仲間かな」


「うん、パーティメンバーのシズルだよ。Cランクだ」


「修一です、よろしくお願いします」


「どぉも。シズルだ、よろしぐな」


「彼女は、ヴァイマック種族なんだ。この種族は巨人族の末裔と言われてて、男はシズルよりさらに頭一つデカイからね。ヴァイマックの殆どの部族は北方の山岳地帯に住んでる」


「この国と北方山岳民は対立していると聞いたことがあるけれど?」


「ヴァイマック種族は国は作らず、部族単位で行動しているからそれぞれだね。シズルの部族、ヅベリ族とは交流があるよ。だけどゴウロック族とは北部国境地帯でよく小競り合いをしているね」


「ニールはわだしの部族の恩人なんだぁ」


「おー、部族を救ったのか。英雄だな」


「その通りだぁ。そんで部族長の娘のわだしが部族からの感謝を込めてニールに差し出されたんだ」


「ニールに嫁いだわけだね」


「いんやぁ、夫婦になるなんておこがましい。わだしはニールの盾になればそれでええんだ。でもホントはニールとの子供が欲しいかも」

 ぽっと赤くなるシズル。


「いや、あの、シズルとはそういう関係じゃないけど、でも大事な仲間だと思っているよ」


「ははあーなるほどねぇ。まあ二人の関係は詮索しないよ。シズルさん、パーティになるんだ、お互い呼び捨てでいいかな?」


「ああ、そんでいいよ」


「パーティメンバーはあと二人いるんだけど、サラトガ大森林の調査で今は抜けているんだよね」


「アシュレイもメンバーが大森林の調査してると言ってたな」


「今年は魔物の氾濫が多いからね。大森林にまた迷宮が発生したのかもしれない。上級パーティの斥候職は、みんな招集されてるよ」


「パーティ全員で行かなくていいの?」


「この迷宮の魔物の間引きも大事だから。それにボクはBランクだから、万一のため、なるべく街から離れない方がいいのさ」

 少し鼻が大きくなった。


「さすがニール先輩、頼られてるねえ」


「フフ、まあね。じゃあ入ろうか」

 もっと鼻が大きくなった。


 ここは管理迷宮なので、入口に居る番人に許可証を見せる必要がある。サラトガギルド発行のDランク以上のギルドカードは許可証を兼ねているので、一同はギルドカードを見せて、洞窟状の迷宮に足を踏み入れた。


「今日一日は、上層で狩りをするんだよね」


「うん、案内がてら上層を一通り歩き周るよー。この迷宮の上層はゴブリンばっかりでさ。連携の練習するには向いてるけど、冒険者は殆ど来ないね」


「レベルの低い冒険者も来ないの?」


「来ないねー。ここのゴブリンは、一部屋に十匹以上いるから一人だと危ない。でもパーティ組むなら、中層行った方が稼げるしね。中層には、レベルの低いパーティでも安全に狩りができるエリアがあるから」


「稼げない上層に付き合ってもらって悪いね」


「いいよいいよー。どのみちメンバーが揃うまでは下層に行けないだろうし」


 一行はしばらく歩くと、大きな空間に着いた。


「さあ、最初のゴブリン広場だよ、十匹いるね。修一、好きにやっていいよ。危なくなったらフォローするから」


「はいよ。ストーンショット」


 十個ほどの石弾が射出され、ゴブリン四匹を倒した。残りのゴブリン六匹が向かってくるが――


「ストーンショット」


 同じく射出された十個ほどの石弾が六匹のゴブリンを倒した。


「よし。ゴブリンの動きなら、六匹までは同時に照準できることを確認できたよ」


「ウソー、たった二回の魔法で倒しきっちゃったの?」


「そんなに驚くこと? 初級火魔法の火炎放射フレイムラディエーションでも、二回で倒せるよね」


「いや、撃ち漏らしが出るんじゃないかな。修一の土魔法は、照準精度が高いから、火炎放射フレイムラディエーションより広範囲な攻撃だったよ」

 三人でゴブリンから魔石を取り出しながら話す。


「じゃあ、どんどん行こうか」

 ニールが先を促す。


 二股に分岐した通路を越えて進むと、すぐに行き詰まった広い空間があり、そこにゴブリンが十匹溜まっている。通称ゴブリン部屋だ。サラトガ迷宮上層は、こうしたゴブリン部屋が幾つもある。


「次は強化魔法の効果を確かめたいんだ」


「それなら、ボクの戦い方も見てもらいたいから、ボクにかけたらいいよ」


「了解。じゃあ、ヘイスト。頑張ってー」


 運足を早める初級風魔法ヘイストをかける。


「行くよー、おわああっ」


 軽く駆けたつもりがヘイストによる加速が付き過ぎて、ニールはいきなりゴブリンの群れに突っ込んだ。


 とは言えさすがにBランク戦士。すかさず体勢を立て直し、ゴブリンに斬りかかる。だが、一歩の突進力があり過ぎて、ゴブリンを素通りしてしまう。


「ぬ、おおぉ」


 うめきながら、今度は足を完全に止めて、ゴブリンと打ち合っていく。ニールの方が力も技量もあるので、囲まれながらも、押されてはいない。


「ストーンショット」


 修一は三匹ほど間引いて、後はシズルと見学している。


「うーん、思った通り、近接戦闘で細かい動きをするのは厳しいかなー。単純な直線移動には便利なんだけどねえ」


「んだな」


「でも使いこなせれば、凄い戦い方ができそうだ」


武技アーツよりも習得が難しいっぺ。魔法剣士でないと一人では練習できんし」


「ああ、魔法職は近接戦闘しないし、戦士職は魔法使えないもんなぁ。俺なら習得できそうだけど、戦闘時は他の魔法や武技を使えばいいし。戦士職の仲間にかけないと意味ないよね」


「んでも、この魔法を使いこなせれば、ニールはもっと強くなるなあ」


「そうだね。ニール先輩にはお世話になっているから、習得にはぜひ協力させていただくよ」

(いい実験台になりそうだし)、と小さく呟く。


「いやー、大変だった。格好悪いとこ見せちゃったなあ」


「いや、素晴らしいよニール。風魔法の可能性が見えた。ニールなら少し練習すれば、近接戦闘に革命をもたらすんじゃないか」


 お世辞を込めて大袈裟な言い方をしたが、実際にニールなら風魔法を使いこなせる見込みがあると思っている。


「そ、そう?」


「風魔法は殺傷能力がないけれど、応用は色々できそうだ。近接戦闘でヘイストを使いこなせるようになったら、ニールステップと呼ぼうぜ。さあ次いこう!」


 一同は、初日、二日目と上層でゴブリン狩りをした。三日目からは中層へと場を移し、修一は各種の魔物の狩り方を学んだ。



******

五日目。中層ボス広場。


「ぬおおお」

 ニールが三メートル近い身長のトロールに向かって駆けていく。トロールが棍棒を打ち下ろす。その棍棒を避けながらジャンプ。


「ガスト! 行っけぇニール」


 修一は、ニールが飛び上がった瞬間、初級風魔法ガストをかける。突風が空中のニールをさらに押し上げる。


「スマッシュううう」


 ニールの剣がトロールの首の付け根を切り裂く。


「のわあああ」


 切り裂いたことで、バランスを崩しながら落下。しかし何とか受け身を取って転がる。


「あー、惜しい。もうちょい上だ」


「んだな。首の付け根だと傷が再生されるべ」


「トロールは再生能力あるから、ピンポイントで狙わないとね。と、ストーンバレット」


 修一の射撃魔法一発でトロールの頚椎が破壊され、その巨体は崩れ落ちた。

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