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斬られ役、異世界を征く!! 弐!!  作者: 通 行人(とおり ゆきひと)
双竜塞編
84/282

魔刃団、人質をとる


 84-①


「い、一大事ですーーーっ!!」


 影光は素っ頓狂な叫びを上げて、リュウカクのいる部屋に転がり込んだ。


「何があった? 慌てなくて良い、落ち着いて正確に報告しろ」


 影光はリュウカクを焦らせようと、大慌てしている声色を作り、ワザとすっ転びながら部屋に突入したのだが、リュウカクは、突然の乱入者にも冷静だった。


(むっ? コイツは……)


 昼間の戦闘の際、キサイの作り出した影魔獣の幻影の群れに単身突撃してきたのを見て、影光はリュウカクの事を猪突猛進の猪武者だと思っていたのだが……どうやら認識を改めねばならないらしい。


(コイツ相手に、あまり時間は稼げないかもな……)


 そんな事を考えながらも、影光は芝居を続けた。


「え……影魔獣です!! 影魔獣の群れが再び現れました!!」

「何だと!? すぐに城壁の守りを固めさせろ!!」

「いえ、それが……その……」

「どうした!?」

「防壁の守備兵達は全員、砦を飛び出し……敵に向かって突撃しました!!」


 この報告には、流石のリュウカクも顔色を変えた。


「馬鹿な!? 何故そんな勝手な真似を……いや、今は一刻も早く突出した兵達を止めねば!!」


 リュウカクは兵達を止めるべく、壁に掛けてあった愛用の弓を引っ掴むと、影光を連れて急いで城門へと向かったが、城壁の上の開門装置を動かす兵士までもがまんまと影光に乗せられて、敵に向かって突撃してしまっていた。

 リュウカクは仕方なく城壁の上まで登ると、そこから飛び降りて駆け出した。


 小さくなってゆくリュウカクの背を城壁の上から見つめながら、影光はニヤリと笑った。


「フフン……ご武運を、リュウカク将軍」


 再び門の内側に降り立った影光は、影醒刃シャドーセーバーで、太く重たい鋼鉄製のかんぬきを切断した。

 かんぬきを破壊したとは言え、双竜塞の門は分厚く、重く、そうおいそれと開く代物しろものではなかった。


 だが、その点に関しては影光は全く心配していなかった。何故なら……


「グオオオオオーーーーーッ!!」


 天驚魔刃団の四天王には、怪力自慢の巨漢枠がいる。


 リュウカクが暴走した兵士達を追いかけて双竜塞を飛び出した数分後、リュウカクと入れ替わるかのように、密かに双竜塞に接近していた天驚魔刃団・四天王が現れた。


 レムのすけが、その有り余る怪力で、分厚い門を押し開く。


「フフン……ようこそレムのすけ」

「グォッ!!」


 レムのすけに続いて、ガロウ・キサイ・ヨミの三人も砦の中に侵入し、全員、双竜塞に侵入したのを確認したレムのすけは再び門を閉じ、門の近くに備え付けてあった予備の閂を差し込んだ。


「これでよしと……」


 影光は四天王の顔を一人一人見た。


「さてと……どうやらこの砦には『姫君』と呼ばれている奴がいる。今からそいつを人質に取りに行く……野郎共、俺に続け!!」


 影光達は、影光があらかじめ調べておいた『姫の間』と呼ばれている部屋まで一直線に駆け抜け、扉の前までやって来た。


「よーし!! 行くぞ野郎共ッッッ!!」


 影光は扉を破壊せんばかりの勢いで姫の間の扉を蹴り開け、部屋の中に突入したものの、すぐに部屋を出て来てしまった。その間……僅か2秒。


 最後尾にいたヨミなどは、部屋に踏み込んですらいない。前にいたレムのすけが、部屋に一歩足を踏み入れた瞬間に足を止めたために、レムのすけの岩石の肉体に思いっきり顔面をぶつけてしまった。


「痛たたたた………ちょっと岩男!? 何急に止まってんのよ!? って言うか、何でアンタ達部屋から出て来ちゃってるのよ!?」


 鼻を押さえて抗議するヨミをよそに、天驚魔刃団の野郎共は顔を見合わせた。


「おい、皆見たか!?」

「ああ、見た!!」

「ええ、見ました!!」

「グモォ……」


 野郎共は大きな溜め息を吐いた。


「何だアレ……美人過ぎるだろ……」

「ああ、この世のものとは思えぬ美しさだ……」

「ええ、僕の頭脳をもってしても……彼女の美しさを表現する言葉がみつかりません」

「グォォ……キ……キレイ!!」


「……………………うらぁッッッ!!」


 ヨミの 妖禽族式・四連ローリングソバット!!

 会心の一撃!!

 影光達は 悶絶した!!


「ったく……アンタら全員思春期か!? この……童貞共がーーーーーっ!!」


 痛恨の一撃!!

 野郎共は 吐いた!!

 

「ったく……ちょっと美人を見たくらいで情けない……!!」


 呆れ顔のヨミに影光は抗議した。


「バカ野郎、『ちょっと』じゃねーっつうの!! あの美しさを見たら、ゴ◯ラでも街を破壊せずに海に帰るレベルだっつーの!!」

「はぁ!? 何を訳の分からない事を……大体、美人なら超絶美少女であるこの私を見慣れてるでしょうが!!」



「「「「…………ぷぷぷっ!!」」」」



 野郎共に再び、妖禽族式・四連ローリングソバットが炸裂した。


「おっと、こんな事してる場合じゃなかったわ……行くわよ!! 野郎共!!」


 今度はヨミを先頭に、天驚魔刃団は姫の間に押し入った。


「あ、貴方達は何者です!?」

「ふふん……アンタには、人質になってもらうわよ!?」

「だ、誰か助け……ああっ!?」



 ヨミは 『姫君』を 捕らえた!!



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