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斬られ役、異世界を征く!! 弐!!  作者: 通 行人(とおり ゆきひと)
双竜塞編
82/282

竜将、引き上げる


 82-①


 戦場は敵味方入り乱れての大乱戦状態だった。


 影魔獣の群れを相手に孤軍奮闘していたリュウカクの下に、双竜塞の兵士達が援護に駆けつけ、そこに一体何処から湧いたのか、影魔獣の増援が雪崩なだれ込んだのだ。


 リュウカクとしては乱戦状態を脱する為に、兵達を小さくまとめたい所ではあったが、魔狼族型とゴーレム型の影魔獣に邪魔されて、とてもではないが兵の指揮どころではなかった。


「ゴァッッッ!!」

「クッ!?」


 ゴーレム型影魔獣が繰り出してきた拳を、大きく後方に飛び退いて回避したリュウカクだったが……


「グルァァァッ!!」

「くっ!? しまっ──」


 着地の瞬間を狙われた。着地地点目掛けて、魔狼族型影魔獣が放たれた矢のような勢いで突進してくる。


 魔狼族型影魔獣の貫手がリュウカクを捉えたかに見えたその時!!


「……やああああっ!!」


 飛び込んで来たフォルトゥナが、体当たりで魔狼族型影魔獣の体勢を崩した。


「リュウカク様ーっ、助けに来まし──」

「グルァァァッ!!」

「うぶっ!?」


 魔狼族型影魔獣の後ろ蹴りがフォルトゥナのボディを捉えた。

 相手のかかと鳩尾みぞおちにめり込み、フォルトゥナは、腹部を押さえて両膝を地に着いた。


「ガァウッ!!」

「ひっ!?」


 フォルトゥナは思わず目をつむってしまったが、魔狼族型影魔獣の爪は、フォルトゥナの喉笛を斬り裂く寸前で止まっていた。


「……何だ、女……それも、ガキか」

「なっ!? ば、馬鹿にして……っっっ!!」


 魔狼族型影魔獣がボソリと呟いた言葉に逆上したフォルトゥナは、格闘戦を仕掛けたが、突き出す拳はことごとくかわされ、繰り出す蹴りは容易くいなされた。


「はぁっ……はあっ……このおっ!!」

「……ふん」

「あっ!?」


 フォルトゥナは右の上段蹴りを繰り出したが、蹴り足を掴まれ、逆さ吊りにされた。


「このっ……離せっ、離せーーーーーっ!!」

「ちっ……うるさいガキだ」

「きゃあああっ!?」


 魔狼族型影魔獣は、フォルトゥナの足首を掴んだまま、力任せにフォルトゥナの身体を頭上でグルグルとぶん回すと、そのままゴーレム型影魔獣と交戦中のリュウカクに向かって放り投げた。


「フォルトゥナ!?」


 リュウカクは、右手に青龍刀、左手に両刃槍を握ってゴーレム型影魔獣と戦っていたが、左手の両刃槍を地面に突き立て飛び上がると、放り投げられたフォルトゥナの身体を空中でキャッチした。


「大丈夫か!?」

「は、はい……」


 リュウカクはフォルトゥナを地面に下ろしたが、その隙に二体の影魔獣は離脱してしまった。


「くっ、逃げられたか……」


 歯噛みするリュウカクだったが、周囲では未だに戦いは続いている。


「フォルトゥナ、まだ動けるか!?」

「は……はいっ!!」

「敵はまだ残っている、行くぞ!!」


 その後……リュウカク達は影魔獣を倒し続け、そして……最後の影魔獣が消滅した。

 敵を殲滅した双竜塞の兵達は勝鬨かちどきを上げた。


 沸き上がる歓声の中、リュウカクは未だ不審感を拭い去る事が出来ずにいたが、ひとまずは兵達をまとめて双竜塞に引き上げる事にした。


 ……この時、リュウカクは気付いていなかった。意気揚々と引き上げる兵達の中に、乱戦の最中、双竜塞の兵に化けた男が紛れ込んでいた事に。



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