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斬られ役、異世界を征く!! 弐!!  作者: 通 行人(とおり ゆきひと)
魔刃団結成編
42/282

妖姫、四天王(三人)に挑む


 42-①


「影光……お前、あの女と知り合いなのか!?」

「まぁ……昔、俺の本体と色々あってな……この際、お前で構わん!! 一緒に来い!!」

「さっきから何をわけの分からない事を…………ブチ殺すッッッ!!」


 ヨミは漆黒の翼を羽ばたかせると、まるで放たれた矢のような勢いで、影光目掛けて突撃したが……


「ハイハイ、ホラーホラー」

「ぎょえええええーーーーーっ!?」


 ガロウ達は戸惑った。ものすごい勢いで飛翔していたヨミが、うら若き乙女にあるまじき叫びを上げたかと思うと、顔面から “ズサーーーッ!!” と地面に突っ込んだのだ。


「な、何だ!?」

「何が起きたんだ……!?」

「ゴァム!?」


 事態が飲み込めずに唖然としているガロウ達に対し、影光は尻を突き上げて突っ伏しているヨミを指差して解説した。


「コイツはな……相手の思考を読む事が出来んだよ」


 影光の言葉に、『まさか!?』という表情のガロウと、『やはり……』という表情のキサイ、そして『グモモ』という感じのレムのすけだった。


「それは分かったが……何故この女は墜落したんだ?」


 ガロウの問いに、影光は不敵な笑みを浮かべて答えた。


「コイツが俺の思考を読もうとしてくるのは目に見えてるからな、頭の中で……リ◯グと呪◯の最怖シーンを思い浮かべてやったのよ」

「何だ……? リン……?」

「じゅ……じゅお……?」

「まぁ、とんでもなく怖い怪談だと思ってくれれば良い……コイツはな、魔族のクセに怖いのが大の苦手なんだよ…………ぷぷぷ」

「う……ふ……ふざけないで……っ!! 誰が……怖いのが苦手……どぎゃーーーーーっ!?」


意識を取り戻した瞬間に、影光の頭の中で繰り広げられているジャパニーズホラーな光景を視てしまい、ヨミは即座に白目を剥いて再び気絶した。


「……ハッ?」


 数分後、再び目を覚ましたヨミだったが、手足を縛られて身動きを取る事が出来なかった。

 

「よう、気付いたか?」

「うぐぐ……!!」


 ヨミは影光を激しくにらみつけたが、影光は涼しい顔である。


「まぁ、そう睨むなよ。まずは俺の話を聞け」

「うるさい!! 誰がアンタの話なんか……あうっ……!? い、痛……っ」


 影光はヨミの前髪をむんずと掴み、そのまま体を引き起こして無理矢理に正座させると、ヨミのひたいに自分の額をピタリとつけた。


「……新作ホラー映画、大量入荷しましたよ?」

「すんませんでしたッッッ!!」


 その後、影光は自分が、武光の影から生まれた影魔獣である事、そして自分の目的を語ったが、ヨミはそれを一笑に付した。


「フッ……無理ね!!」

「何で?」

「魔族の頂点に立つのは……この私だからよ!!」

「でも俺に負けたじゃん」

「ムキーーー!! あんなの卑怯よ!! 今度は読心能力無しで勝負よ!!」

「いや、卑怯って……読心能力はお前の能力じゃねーか!?」

「うるさい!! とにかくやるったらやるの!!」

「わ、分かったって……」


 まさか敵の方から縛りプレイを要求してくるとは……とりあえず、影光はヨミの拘束を解いてやった。


「さぁ、勝負よ!! 武光の影ヤロー!!」

「よし、良いだろ……あっ!?」

「何よ!?」

「フッフッフ……この俺と戦いたければ、我が四天王を倒せ!!」

「……三人しかいないじゃない!?」

「お前が四人目になるんだよ……俺達が勝ったら、俺達に従ってもらおうか!!」

「な、何ですって!?」

「良いんだぜ、勝つ自信がなければ逃げたって。えぇ、ヨミさんよぉ!?」

「ふざけんな、アンタら全員ブチのめして、逆に私の下僕としてこき使ってやるわ!!」

「フフフ、その意気や良し!! 行けぃ、ガロウよ!!」


 影光はヨミを勢い良く指差した。


「影光……またお前勝手な事を……」

「まぁまぁ、それより……殺すなよ?」

「……約束は出来んぞ」


 ガロウは、ヨミと向かい合うと、低く構えた。


「フン、さっきのワンコオヤジか……さっさと片付けさせてもらうわ!!」

「オヤジ呼ばわりされる程、俺は歳をとっちゃいない。行くぞ、小娘…………グルァァァッ!!」

「なっ、速っ……!?」


 読心能力を使えば、相手が攻撃に出る瞬間、狙っている場所を事前に察知し、対処する事など容易だったが、それを自ら封じたヨミは、反応する事すら出来なかった。(動いた!!)と思った瞬間には、喉元のどもとにガロウの鋭い爪が突き付けられていた。


「……勝負あったな」

「うぐぐ……まだよ!!」

「お前が生きているのは、影光が『殺すな』と言ったからに過ぎん……勝負あった」


 そう言って、ガロウは爪を引き、ヨミにクルリと背を向けた。


「ま、待ちなさいよ!!」


 抗議するヨミだったが、ガロウは取り合わない。


「ガキの我儘わがままに付き合っていられるか。どうしてもと言うなら……このレムのすけが相手をする」

「グォーッ!!」


 ヨミの前に、レムのすけが立ちはだかった。


「くっ……上等じゃない!! コイツを殺ったら……次はアンタよ、ワンコオヤジ!!」

 

 ヨミは、何処からともなく片刃の短刀を取り出すと、レムのすけを斬りつけたが……


「硬っ!?」

「ガゥォーッ!!」

「ちっ!?」


 ヨミはレムのすけの攻撃を回避し、攻撃し続けたが、レムのすけには傷一つ付けられない。次第に、ヨミの動きが鈍くなってきた。

 キサイは、傍らに立つガロウに尋ねた。


「あの妖禽族の娘、先程に比べて随分と動きが鈍くなっているようですが……」

「フン、無駄な動きが多過ぎるんだ。さっきまでは、お得意の読心能力とやらで、必要最小限の動きで攻撃をしていたから体力の消耗も少なかったろうが……要は、能力に頼り過ぎて、鍛え方が足りんのだ、鍛え方が」

「はぁっ……はぁっ……聞こえてるわよ、偉そうに。この……ワンコオヤジが……!!」

「戦いに集中しろ、小娘」

「ハッ!?」


 ヨミの眼前に、レムのすけの拳が迫っていた。ヨミは咄嗟に回避しようとしたが、疲労の蓄積で、回避動作に移るのが遅れた。


(だ、ダメ……かわせない!?)


「そこまでだ!!」


 レムのすけの岩石の拳がヨミの顔面に直撃する寸前で、影光が待ったをかけた。レムのすけの拳はヨミの鼻先数cmで止まっている。

 ヨミは待ったをかけた影光を睨み付けた。


「はぁっ……はぁっ……何邪魔してくれてんのよ……これからこの岩野郎を叩き潰す所なんだから……!!」

「ゴォグァッ!!」


 そう言って、レムのすけは拳を引き、ヨミにクルリと背を向けた。


「……いや、何言ってるかさっぱり分かんないし!?」

「ふふ、『無理だ、お前に俺は倒せない』だとさ」

「ふ、ふざけんな……!!」


 影光の通訳を聞いて、ヨミはレムのすけを睨みつけた。


「ゴァッ!!」

「ふむ、『ガキのワガママに付き合ってられるか、どうしてもと言うなら……このキサイが相手をする』とさ」

「ええっ、僕ですか!?」


 レムのすけに背中を押されて、キサイはヨミの前に立った。


「じょ、上等じゃない……って言うか、このゴーレム本当にそんな長い台詞セリフ喋ってんの!?」

「確か……ヨミさんと言いましたね? ここらで素直に負けを認めたらどうです? とてもまともに戦える状態には見えませんが……」


 両膝に手を突き、肩で息をするヨミに、キサイは降伏を勧めたが、ヨミはキサイの提案を拒絶した。


「はぁ……はぁ……あ、アンタみたいな貧弱オーガに情けをかけられるなんて、妖禽族の恥よ……!!」

「そうですか……ならば仕方ありま……ぐふうっ!?」


 キサイは、口から夥しい量の血を吹き出した……ヨミが、逆手に持った短刀をキサイの喉に突き刺したのだ。


「くたばれ……っ!!」


 短刀を握る右手に左手を添えて、ヨミはしゃがみ込みながら、キサイのヘソの辺りまで、短刀を一気に引き降ろした。


「あはははは……どうよっ!! ……えっ!?」


 ヨミは両手を包んだひんやりした感覚に思わず顔を上げた。キサイの腹の傷口から真っ白い女の手が伸びて、ヨミの手首をガッシリと掴んでいた。そして、触れてもいないのにキサイの傷口が左右に開き、中から顔が血塗ちまみれの長い髪の女が現れ……


「ひぃぃぃーーーーーっ!?」


 ヨミは 気絶した。


「な、何だ!?」

「何が起きたというんだ!?」

「グムゥ!?」


 突然 “ビターン!!” とブッ倒れた後、陸に打ち上げられた魚のようにビクンビクンと痙攣けいれんするヨミを見て、困惑する影光達だったが、キサイは涼しげに言った。


「彼女には、幻覚を見てもらいました……これぞ、《闘鬼幻術とうきげんじゅつ魑魅魍魎ちみもうりょう》です」


 数分後、目を覚ましたヨミはキサイを睨み付けていた。


「うぐぐ……幻術なんて卑怯な真似を……!!」

「いや、敵に明らかな弱点があればそこを突くのは当然でしょう。それに……他種族とは言え、女性に暴力を振るうのはどうかと思って……」

「くっ……読心能力で幻術をかけようとしてるのが分かっていたら、こんな子供騙しのヘッポコ幻術にかかったりしないんだから!!」

「いやいやいや、『読心能力無しで勝負しろ!!』と言い出したのは貴女でしょう!?」

「ぐぬぬぬ……!!」


 苦虫を百匹くらい噛み潰したような顔をしているヨミに影光は笑いかけた。


「決まりだな、ヨミ。お前は四天王その四、『紅一点枠』だ!!」

「フン……!!」

「……キサイ、さっきの幻術を10倍増しでヨミにかけろ」

「分かったわよ!! ついて行けば良いんでしょ!? ついて行けば!!」

「よろしい!! では早速、一軍の将として、お前に我が軍団の精兵を託したいと思う」

「は? 精兵ぃぃぃ〜? そんなものどこにいるってのよ?」

「おーい、出て来ても良いぞー!!」


 影光に言われて、木の陰から二人の少女が現れた。5歳くらいの少女と3歳位の可愛いらしい少女で、二人とも背中に鳥のような翼が生えていた。大きい方が黒、小さい方が茶色である。


「何コレ?」


 ヨミの問いに対し、影光は不敵に笑った。


「ここに来る途中で、人間達に襲われている所を助けたんだ……彼女達こそ『マスコット枠』にして、『未来の精兵ッッッ』……《つばめ》と《すずめ》だぁぁぁっ!!」



「…………子守こもりじゃねーか!!」



 ヨミは ツッコんだ!!


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