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斬られ役、異世界を征く!! 弐!!  作者: 通 行人(とおり ゆきひと)
魔刃団結成編
38/282

石兵、猛進する


 38-①


 岩石の肉体を持つ魔物、《ゴーレム》は五体の剣影兵と戦っていた。


 ゴーレムは丸太の如き豪腕を振り回して、襲い来る剣影兵を次々と殴り飛ばした。

 それは、相手が並の魔族や人間ならば、肉はひしゃげて弾け飛び、骨は微塵に砕け散る威力を持った一撃であったが、剣影兵は頭がひしゃげようが、手や足があらぬ方向へ曲がろうが平然と立ち上がり、当たり前のように再生して襲いかかって来る。

 とは言え、剣影兵の攻撃もゴーレムの強固な岩石の肉体に弾かれてダメージを与える事が出来ずにいる。


 そんな膠着こうちゃく状態を破ったのは、二人の乱入者だった。


「うおおおおっ!!」

「グルァァァッ!!」


 影光とガロウが剣影兵達に襲いかかった。

 影光の影醒刃とガロウの爪牙が剣影兵の核を次々に斬り裂き、砕いてゆく……ゴーレムを襲っていた五体の剣影兵は遂に消滅した。


 剣影兵を全滅させた影光はゴーレムと向かい合った。


「よう、見てたぞ!! お前スゴい怪力と防御力じゃねーか!! 俺達と一緒に来いよ!!」


 影光の問いにゴーレムは短く答えた。


「……ゴアッ!!」


 何を言ってるか全然分からん……と、思うガロウだったが、影光は腕組みしながらゴーレムの言葉を、ウンウンと頷いて聞いていた。


「まぁそう言うなよ、俺は、武人・巨漢・知将・紅一点で四天王を作るって決めてんだ!! お前は巨漢枠オーディションに合格だから俺達と一緒に来い!!」

「影光……またお前、そんな勝手な事を……」


 呆れるガロウを余所よそに、ゴーレムが再び答えた。


「……グオッ!!」

「そっかー、なるほどなー」

「か……影光、お前……奴の言葉が分かるのか!?」

「フフン……まぁな」

「で……奴は一体何と?」

「うん、『問答無用、お前達も叩き潰す』とさ」

「そ、そうか……って、オイ!?」


 ゴーレムが、影光達に襲いかかった。


 38-②


「グオーッ!!」

「チッ!!」

「ぐうっっっ!?」

「影光!?」


 ゴーレムが両腕を水平に広げて突進してきた。右のラリアットをガロウは真上に跳躍して躱したが、影光は左のラリアットを防御しようとしてふっ飛ばされた。

 両腕を交差して、頭と胴をガードしたものの、派手にふっ飛ばされて、地面を転げ回った挙句、何とか立ち上がった影光の両腕は、あらぬ方向へひん曲がり、ひしゃげていた。


「大丈夫か影光!?」

「やるな……想像以上の怪力じゃねぇか……!! やっぱりお前は巨漢枠に必要だ…………ふんぬっ!!」


 影光はひしゃげた両腕を再生させた。


「グオッ!?」

「ふふふ……『砕けた腕が再生しただと……!? お前は一体何者だ!?』だって? 俺に勝ったら教えてやるよ!!」


 影光は懐から影醒刃の柄を取り出した。


「……はあっ!!」


 影醒刃の柄から黒い刀身が伸びた……だが、その形状はいつもの片刃の直刀ではなかった。柄から伸びた刀身は凶悪なトゲ付き金棒の形状をしていた。

 影醒刃を肩に担ぐようにして構えると、ガロウに目配せした。


「ガロウ……お前は手ぇ出すなよ?」

「しかし……」

「後で、『2対1だったから負けた』なんて言い訳されちゃかなわないからな……文句の付けようがないように!! 言い訳なんざ出来ないように!! そしてぐうの音も出ないように!! 完膚かんぷ無きまでに叩きのめす!!」

「ゴァァッ!!」

「ふふ……『やれるものならやってみろ』か……ああ、そうさせてもらう!!」


 影光はゴーレムに向かって突撃した。ゴーレムは影光を叩き潰すべく、巨木の如き豪腕を振り上げ、影光の脳天目掛けて振り下ろした。


「遅いッッッ!!」

「グオッ!?」


 影光は横に跳んで、ゴーレムの腕を回避すると、そのまま地面に叩きつけられたゴーレムの腕を足場に跳躍し、ゴーレムの横っ面に影醒刃を叩き込んだ。

 全力を込めた一撃だったが、ゴーレムの岩石の体には傷一つ付かない。


「まだまだぁっ!!」


 着地した影光は間髪入れずに、今度は逆袈裟ぎゃくけさの要領であご先に影醒刃を叩き付けたが、これもゴーレムを傷つける事は出来ない。


「グォォォァーーーッ!!」


 ゴーレムがハエを叩き潰すように左右の腕を勢いよく閉じたが、既に影光は後方に跳び退いていた。そして影光は再びゴーレムの懐に飛び込むとゴーレムを影醒刃で殴り付けた。


 影光はヒットアンドアウェイの戦法を繰り返した。確かにゴーレムの破壊力抜群の巨大な豪腕は驚異だが、その巨大さ故に極端に間合いを詰められると素早い対処が出来ず、その重さ故に、間合いの外に出て攻撃を回避する事は容易かった。

 とは言え、ゴーレムの懐に飛び込むなど、普通はまずやらない。もし攻撃を回避し損ねたら、凄まじい怪力で叩き潰されてミンチ確定なのだ。

 影光がそれを平然とやってのけたのは、不死身に近い影魔獣の肉体を持つ故の自信からか、あるいは、操影刀・黒蟲が武光の人格をコピーした際に恐怖心をコピーし損ねたのか。


 その後も、影光はゴーレムの頭部を何十発も殴り続け……遂にゴーレムが膝を屈した。


「グ……ォォォ……!!」


 その光景を見ていたガロウは声を上げた。

 

「な、何故だ……奴の外皮はあれだけの攻撃を受けて傷一つ付かないほど硬いというのに……!!」

「ふふん、硬いからだよ」

「何だと?」


 影光はドヤ顔で語り始めた。


「硬い物ってのは衝撃を受け流せない……硬ければ硬い程、衝撃を真正面からモロに受けてしまう……あれだけ執拗に頭に衝撃を受け続けたら……コイツはもう、まともに立っていられねえ!!」

「グ……グァァァッ!!」


 ゴーレムは影光の言葉を否定するかのようにヨロヨロと立ち上がって腕を水平に振るったが、その豪腕は、影光が避けるまでもなく盛大に空振りし、そのままグルンと一回転して仰向けにどうと倒れ込んだゴーレムはそのまま動かなくなってしまった。


「うっし!! 四天王その2……ゲットだぜーーー!!」


 ゴーレムに勝利した影光はガッツポーズを取った。


 38-③


「……グ……ゥ……」


 しばらくして、ゴーレムが目を覚ました。


「よう」

「……グ……グオァッ!!」


 かたわらでしゃがみこんでいる影光に対し、ゴーレムが声を発した。


「はぁ!? 『殺せ』だと……? 却下ッッッ!! 何故なら……お前は既に四天王その2だからな!!」

「グムー……」


『四天王って何だ!? そもそもお前は何者なんだ!?』と困惑するゴーレムに対し、影光はガツンと言い放った。


「オレと共に来い!! 俺の名は《影光かげみつ》……天下をる男だッッッ!!」


 そう言って、影光はゴーレムに手を差し出した。


「…………ゴァッ!!」


 そして、ゴーレムは……差し伸べられた手を握った。


「これからよろしくな!! あと……もう少しだけ手加減して貰っていいですか!?」


 ゴーレムに握られた影光の手は……ぐっちゃぐちゃになっていた!!


 

 ゴーレムが 仲間に加わった!


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