魔狼、手を取る
36-①
「グルァァァッ!!」
「お、おい!!」
鋭い爪を振りかざし、ガロウが影光に襲いかかった!!
「くっ!!」
影光は連続して繰り出されるガロウの貫手を上体を左右に振って躱し続けた。
「フン……そんなワンパターンな攻撃が…」
「グルァッ!!」
「うおっ……しまった!?」
ガロウの蹴り上げによって、影光は右手に持っていた影醒刃を手から弾き飛ばされ、思わず舌打ちした。
油断した……!! 魔狼族は……両脚にも鋭い爪を備えている。単調に見えた攻撃も注意を両手に向けさせておいて、脚による一撃を叩き込む為の布石だったのだ。
「今のをよく躱したものだ……だが……これで終わりだ、人間ッッッ!!」
左右からの貫手が影光に迫る!!
(俺にも出来るか……? いや……やるしかねぇ!!)
「……ふんぬっ!!」
影光の両腕が蛸の足のように “ぐにゃり” と伸びてガロウの両手に巻きつき、今まさに影光の首を貫こうとしていた貫手を阻止した。
「くっ……な、何だ……これはっ!?」
「ふぅ……で、出来た……」
影光は安堵の溜息を吐いた。
シルエッタのアジトでインサン=マリートと戦った際、奴は自分の腕を剣に変化させた。自分も奴と同じ影魔獣の肉体を持っているのであれば、奴と同じく、肉体の形状を変化させられるのでは……と。
そして……やってみたら存外に出来てしまった。
「覚悟しろ……!!」
「ぬうっ!?」
「おーすーわーりぃぃぃッッッ!!」
「グフゥッ!?」
両手が拘束されて、ガラ空きになった鳩尾に、影光の強烈な蹴りが炸裂し、ガロウは両膝を地に着かされた。
「伏……せェェェッッッ!!」
「グハァァァッ!?」
両膝を地に着いた次の瞬間、ガロウは影光の渾身の頭突きを喰らい、地面に叩き伏せられた。連戦に次ぐ連戦で消耗していたガロウは立ち上がる事が出来なかった。
「ふっふっふ……俺の勝ちだな!!」
「ぐぅぅ……不覚!!」
ガロウを叩き伏せた影光はニヤリと笑った。
「約束通り……四天王の一人として俺と共に来てもらおうか!!」
「ま、待て!? 何だ約束とは!? そんな事をした覚えは…」
「うるせー!! 武士に二言無し!!」
……ガロウは思った。
二言どころか一言すら言ってねぇ!!
この男、人間ではないようだが……一体何者なのか、何が目的なのか?
ガロウは影光に問うた。
「貴様、一体何者だ……!?」
「オレか? 俺の名は影光!! 天下を奪る男だッッッ!!」
『天下を奪る』などと正気の言ではない。呆気に取られたガロウだったが……
「……面白い!!」
ガロウは差し伸べられた手を握った。
「……お手」
「おい!?」
「ふふふ……冗談だ!! お前、名前は?」
「……ガロウだ」
「よし……行くぞガロウ、天下を奪りに!!」
ガロウが 仲間に加わった!




