調査隊、結成される
25-①
暗黒教団調査隊結成にあたり、武光を『直属の騎士に任命する』と宣言したミトだったが、その提案を武光は即座に拒否した。
「……え? 武光、貴方今……『断る』って言った?」
「うん、言った」
「いやいやいや、おかしいでしょ!? どう考えたってここは『謹んでお受け致します!!』とか、『有難き幸せ!!』とか、『粉骨砕身お仕えする所存です!!』とか言う流れでしょうが!?」
「うん、でも断る」
「どうしてよ!? 自分で言うのもなんだけど……王族直属の騎士に……それも直接任命されるって結構名誉な事よ!?」
「姫様の言う通りなんだな、騎士に任命されるのはとてもとても名誉な事なんだな」
「そうだよアニキ、勿体ないって!! ミト姫様の騎士に任命されるなんて滅多にない事だよ!?」
ミトの言葉に、ミト直属の騎士であり、護衛隊長でもある、怪力無双の大男ベン=エルノマエやフリードも続く。
「いやー、ベンさん達の言うとおりやと思うんですけどね……」
「ならどうして武光さんは、姫様の提案を断るんだな?」
「うーん、まあいろいろ思う所があるんすわ」
言葉を濁す武光にミトやベン、三人娘、そしてフリードも怪訝な顔をする。
「もう一度言うわよ? 貴方をアナザワルド王国第三王女、ミト=アナザワルド直属の騎士に任命します」
「断る」
「任命します!!」
「断る!!」
「いや、だから任命するってば!!」
「いや、せやから断る言うてるやんか!!」
「どうあっても断るつもりなの!?」
「おう!!」
「何が何でも!?」
「くどい!!」
「後で『やっぱ任命して』って言ってもしてあげないわよ?」
“ぷぅ〜”
「オナラで返事をしないでくれる!? って言うかクサッ!?」
「とにかく、その調査隊とやらの隊長はやってもええけど、お前の騎士にはならん!!」
「はぁ……分かったわよ。そこまで言うのなら無理強いはしないけど……全く、一体何が不満だって言うのよ……」
「まぁまぁ、そんなブーたれんなって、せっかくの美人が台無しやぞー」
「え? そ、そうかしら……」
一瞬で機嫌が治ったミトを見て(うわ、ちょろい……)と思う一同であった。
「じゃあ、改めて唐観武光……貴方を暗黒教団特別調査隊の隊長に任命します!!」
武光は芝居掛かった大仰な所作で平伏し、応えた。
「ははーっ!! 有難き幸せ、謹んでお受け致します!!」
「あと、ナジミさん」
「は、ハイッ!!」
「ナジミさんを……副隊長に任命します」
「ええっ!? わ、私ですか!?」
「ええ、クレナ達のお姉さんとして彼女達を助けてあげて? ニブイ武光には分からない悩みもきっと出てくるだろうし……」
「分かりました……精一杯頑張りますっ!!」
ナジミとミトは互いに頷き合った。
「さてと……クレナ=レディーグル、ミナハ=ブルシャーク、キクチナ=イェロパンサ」
「「「ハイ!!」」」
名前を呼ばれた三人は直立不動の姿勢で返事をした。
「三人共、武光やナジミさんと共に暗黒教団の動向を探りなさい!!」
「承知致しました!!」
「姫様の御命令とあらば」
「つ、謹んで拝命致します」
ミトはクレナ達の返事を聞くと、彼女達の目を一人一人しっかり見ながら言った。
「三人共、必ず無事に帰ってくるのよ? いいわね?」
「「「ハイ!!」」」
三人の返事を聞いたミトは、改めて武光の方を向いた。
「それじゃあ……頼んだわよ、武光」
「おう、お前も王都までの道中、気を付けてな」
「大丈夫、この街の兵士も同行してくれるし、ベンもいるから」
「安心しろ武光さん、姫様はおれが守る!!」
「頼みます、ベンさん」
武光はベンに頭を下げた後、周囲をぐるりと見回した。
「よっしゃ……行くぞ《照明隊》!!」
〔うわ、ダサい!!〕
「武光様、あんまりカッコ良く無いです……」
「何でやねん!! 光を当てて影を消す、俺らにピッタリやんけ。言うとくけど、舞台でも照明さんってめっちゃ大事なんやからな!? えっ、ちょっと待って、そんなダサい!?」
「はい!! とってもダサいです!!」
「無いな、ハッキリ言って……ダサい!!」
「え、えーっと、その……ごめんなさい、格好良くはないと思います」
武光はクレナ達の方を見たが、クレナには元気良く、ミナハにはキッパリと、そしてキクチナには遠慮気味に『ダサい』と言われ、精神的にダメージを受けた。
「ふ、フリード……」
武光は救いを求めるようにフリードの方を見たが……
「アニキ……ゴメン!! ダサいよ、凄く!!」
「ぐはぁっ!?」
痛恨の 一撃!
武光は (精神的に)9641のダメージを 受けた!
「ちょっと、嘘やろ……たったの一人も賛同してくれる奴おらへんのか!?」
全員から総スカンを食らったかと思ったその時……
〔……私はいいと思います〕
「ま……魔っつーーーーーん!?」
ただ一人、いや、一振だけ……魔穿鉄剣が賛成の意を示した。武光には腰の脇差が慈悲深い神のように見えた。
〔ダサいかどうかは置いといて……私はご主人様の味方ですっ!! ……カッコイイかどうかはともかく!! ……って、アレ!? ご主人様、どうして泣いてるんですか!?〕
〔あーあ、トドメ刺したな魔っつん〕
〔えっ? ええっ!?〕
落ち込みまくる武光に、ナジミは努めて明るく声をかけた。
「そ……そうだ!! 神様のご加護を得られるように、神様の名前にあやかりましょう!! 武光様の国には太陽の神様とかおられないんですか?」
「……天照大神っていう神様がおるけど」
「おおー、何かもの凄く神々しくて、格好イイじゃないですか!!」
「そうか?」
「ハイ!!」
「よっしゃ分かった。でも、流石に神様の名を名乗るのは畏れ多いから……天照大神にあやかって……《天照武刃団》とかどうや?」
武光は改めてフリード達に同意を求めた。
「カッコイイ……異界の太陽神とかカッコイイよアニキ!!」
「太陽の神様かぁ……イイかも!!」
「うむ、良いと思う!!」
「ハイ、素敵だと思います!!」
「ほ……ホンマか?」
武光の問いに一同は頷いた。
「よっしゃ!! じゃあ……天照武刃団、ここに結成や!!」
……かくして、暗黒教団特別調査隊、《天照武刃団》は結成されたのであった!!




