斬られ役、頼まれる
24-①
「武光……貴方、隊長やりなさい、隊長」
「はい!?」
ミトの突然の『隊長やりなさい』発言に武光は戸惑った。
「調査隊を率いて、この国で暗躍する暗黒教団を追跡し、撲滅するのです!!」
「よっしゃ……断るッッッ!!」
「何でよ!?」
「暗黒教団ヤバい!! 影魔獣怖い!!」
「アホかっ!! 断ったら処刑するわよ?」
「えぇ……」
「クレナとミナハ、キクチナの三人も同行させます」
それを聞いて驚いたのは、クレナ達、護衛三人娘だった。
「姫様!? 私達……お役御免って事ですか!?」
「何故です!? 我々では姫様の護衛は務まらないという事なのですか!?」
「わ、私達には姫様の御身をお守りするという使命が……」
慌てふためく三人に対し、ミトは優しく語りかけた。
「そうね、貴方達はまだまだ未熟です……だから、この男と共に旅をして、色んな場所に行き、色んな人と会い、色んな事を学んで成長して戻ってきなさい!!」
「姫様……」
「ふふ、そんな顔しないの。貴女達に期待しているから命じるのよ? こういうのをこの男の国では……『可愛い子を千尋の谷に突き落としてウ◯トラチョップ』って言うのよ?」
「言うかっ!? 混ざっとる混ざっとる!! どんな奇行やねんソレ!? 俺のヒーローはそんな事せぇへんし!!」
『私、博識でしょ?』と言わんばかりのドヤ顔をしているミトに武光は思わずツッコんだ。
「とにかく頼んだわよ」
「頼んだわよって……お前はどうするねん、ミト?」
「私は一度王都に戻り、国王陛下に各地の守備の強化と暗黒教団に対する警戒強化、それと影魔獣の被害に遭った人々への救援物資の輸送を進言します…………って、何なのよそのキョトンとした顔は!?」
「い、いや……お前の事やから『平和を壊す敵は……この手で叩き伏せる!!』くらい言い出すもんやとばっかり思ってたから……」
「私だってそうしたいのはやまやまだけど……今は一剣士としてよりも、王家の一員だからこそ出来る事をやります。歯痒いけど、きっとその方がより多くの民を救う事が出来るはずです」
三年前……武光にとっては半年前まで『思い立ったら一直線』『直情径行』『猪突猛進』を地で行っていた彼女の変貌ぶりに、武光は口をあんぐりと開けた。
「お、お前……さては偽者やな!?」
「失礼過ぎるわ!!」
唖然とする武光に、ミトの腰の宝剣カヤ・ビラキが語りかける。
〔ふふふ、あれから姫様も成長したんですよ。まぁ、私のように一人前の淑女になるにはまだまだ勉強が必要ですけどね〕
〔武光、君も見習った方が良いぞ?〕
「イットーの言う通りです、武光様も子供みたいなイタズラしてる場合じゃありませんね? 覗きとか」
「め、面目無ぇっす……」
愛刀とナジミに窘められて、小さくなる武光であった。
「ま、とにかく……貴方だからこそ頼むのよ?」
まっすぐな視線を受けて武光は大きな溜め息を吐いた。
「………はぁー、しゃーないな。可愛い妹分の頼みやし……やったるわ」
「よろしい、では唐観武光……貴方を私直属の騎士に任命します!!」
ミトの言葉に、武光は笑顔で応えた。
「……断るッッッ!!」




