斬られ役(影)、警告する
192-①
影光とサンガイハオウ部隊との戦いは続いていた。
サンガイハオウ部隊は、影光の放つ魔煌飛刃波を警戒して、急降下で城の下に潜り込んだ。
「くそっ!! 死角に入り込まれた!!」
こうなってしまっては、自分には手も足も出ない。影光は配下を引き連れて現れたヨミに向かって頭の中で念じた。この距離ならばヨミの読心能力の有効範囲内のはずだ。
(ヨミ、すまん!! 下に潜り込まれた、迎撃を頼む!!)
果たして影光の思惑通り、ヨミは影光の思念を読み取ると、急降下して城の真下へと向かった。後はヨミの部隊に任せるしかない。それに、影光にはまだやらなければならない事がある。
影光は再び制御室へと戻ると、ゲンヨウに聞いた。
「ジイさん、拡声装置の準備は!?」
「出来ておるぞ!!」
「よし!!」
正面の巨大な鏡には交戦中の麗翼軍とサンガイハオウ軍団、そしてその向こうにホン・ソウザンが見えている。ホン・ソウザンの街は目前に迫っている。
ここからなら届くはずだ……影光はヨミ達の戦闘の様子を注視しながらも、複式呼吸でありったけの空気を吸い込み、ホン・ソウザンの領民に向けて拡声装置で声を飛ばした!!
『コンニチハ!! ホン・ソウザンの皆様!!
口上無用!! 説明不要!!
ナイスで無敵な最強軍団……天驚魔刃団が暗黒教団をぶっ潰しに来た!!
二度は言わねえ、今から言う事をよーく聞け!!
負傷したくなかったら……抵抗しようとするな!!
ケガをしたくなかったら……家から一歩も出るな!!
ルールをちゃんと守る奴には俺達は危害を一切加えない!!
ナイスなルールだろ? ルールを守らん奴には一切容赦しない!!
……!! 立て、ヨミ!!
あー、ゴホン……失礼した。とにかく、不要不急の外出はしない事だ。家族や友人……そして自分自身の生命が大事ならな!!』
言い終わると、影光は拡声装置を切った。
「よし、注意喚起はこれでよし……と」
「いや、お主……あれでは注意喚起ではなく脅迫ではないか!!」
「そうかー? でもこれで……うおおおおおおおっ!?」
その時、突如として魔王城を激震が襲った。




