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斬られ役、異世界を征く!! 弐!!  作者: 通 行人(とおり ゆきひと)
魔王軍進撃編
186/282

魔王(娘)、回想する(後編)


 186-①


 魔族は人間から生み出された存在である。


 その言葉に困惑する影光達に対し、マナは更に続ける。


「この話をする為には、まずは現在この地を荒らし回っている影魔獣について話さなければなりません」


 魔族の祖先が人間だという事と、影魔獣に一体何の関係があるというのか……と、疑問に思う影光の内心を察したかのように、マナは語った。


「そもそも、この地に初めて影魔獣が現れたのは……およそ三百年前です」

「はぁ!? さ、三百年!?」

「影魔獣は……今は亡き帝国から送り込まれた侵略兵器でした」

「なっ……!?」

「帝国から送り込まれてきた影魔獣は、この国全土を蹂躙じゅうりんし、破壊と殺戮の限りを尽くしました。そこで、当時の王国の戦士達は影魔獣に対抗する為に、禁術きんじゅつを用いて、人間を捨て、魔獣の力をその身に宿したのです」

「それが……俺達……魔族の祖先だと?」


 ガロウの言葉にマナは頷いた。


「その通りです。この城も、元はと言えば対影魔獣用の切り札として建造されたものなのです。そして……後に魔族と呼ばれる事となる人々は、死闘の末に本島から影魔獣を一掃し、本島の周囲の島々に陣取って、更なる帝国の侵攻に備えて守りを固めました。しかしながら……その後、帝国からの侵攻はありませんでした」


 マナが言うには、帝国で大規模な内乱が勃発ぼっぱつし、激しい争いの末に帝国は滅んだらしい。


「これで平和が訪れたと思いました……しかし、帝国の脅威が去り、本島へと帰還しようとした魔族達を本島にいた人間達は拒んだのです」


 マナは悲しげに目を伏せた。


「酷い仕打ちだと思います。しかし、当時の人々にとっては、影魔獣を一掃した魔族の力が、もし自分達に向けられたら……と、今度は魔族が影魔獣に代わる新たな恐怖の対象となってしまったのです」

「マナ……」

「人々を守る為に人間である事を捨てて、異形の存在となってまで戦ったというのに……これでは死んでいった仲間達が浮かばれない、と……そして父は魔族を率いて、当時の王朝に対し戦いを挑みました。仲間達の尊厳を取り戻し、再び人と共に生きてゆける世界を勝ち取る為に……その後は、皆さんご存知の通り父は……志半ばで倒れました」

「で……お前は親父さんの遺志を継ぎたいと?」

「はい」


 影光の問いに、マナは力強く頷いた。


「そうか……ならば特訓だッッッ!!」

「影光さん……ありがとうございま……えっ!?」


 マナは下げかけた頭を思わず上げた。そこには腕を組み “どどーん” と仁王立ちしている影光の姿があった。


「あの……影光さん? 何を特訓するというのでしょうか?」

「マナ、皆を引っ張っていく上で、お前には致命的に足りないものがある!!」

「な、何ですか、それは!?」

「お前には……迫力が足りない!! お前の理想に異を唱える奴らを黙らせ、戸惑う奴らに道を示して引っ張っていけるだけの迫力が!!」

「は、迫力……!!」

「本来ならこの城の奴ら皆とじっくり話し合って理解を求めていきたい所だが……今は時間が無い。心苦しいが、今は多少無理矢理にでも付いて来させる必要がある。その為に……俺が演技指導してやる!!」

「分かりました、影光さん」

「違うッッッ!! 俺の事は……師匠と呼べ!!」

「は……はい、師匠!!」


 その日から、三日間に渡るマナの猛特訓が始まった!!


「……ダメだダメだ!! 迫力が全然足りーーーん!! マナ、氷だ……氷となるのだ!!」

「あの……その……『氷になれ』とはどういう事なのでしょう?」

「氷になれというのは、お前の持つ暖かい感情というものを捨て去り、冷血・冷酷・冷徹の氷の精神しかもたぬ冷たい魔王の娘を演じろという事だ!!」


「ちょっとワンコオヤジ、また影光がアホな事始めたわよ?」

「俺が知るか小娘」


 二日目


「もっとだ!! 天使のように細心に、悪魔のように大胆にだーーー!!」

「ハァ……ハァ……は、はい!! 師匠!!」


「キサイ……ウゴォ……グォムゥ」

「う……影光さんを信じましょう、レムのすけさん」


 三日目


「答えろマナよ!!」

「ハイ、師匠!!」

「流派!! 異世界不敗は!!」

「王者の風よ!!」

「ファイト!!」

「一発!!」

「「パンダ狂乱!! 見よ!! 異世界は紅く燃えているぅぅぅッ!!」」


「アレは明らかに方向性を間違ってないか!?」

「グォム……」

「影光さんもマナさんも何か『やり切った感』出しちゃってますが、全くの意味不明なんですけど……」

「うわぁ……あの子、しっかりしてそうに見えて、悪い男にコロッと騙される性質たちだわ」



 ……そして、話は戻って四日目の朝



「見事だマナよ!! よくぞ辛く厳しい特訓に耐え抜いた!!」

「し……師匠!!」

「集まった奴らが話を黙って聞くように、お膳立てはしてやる!! 後はお前の全力をぶつけろ!!」

「ハイっ!! 氷の精神で、天使のように細心に、悪魔のように大胆に……ですね!!」

「うむ!!」


 こうして地獄の特訓(?)を終えたマナは、城内の魔族達を召集し、居並ぶ魔族達を前に、影光達に語った魔族の歴史と『亡き父の遺志を継ぎ、魔族と人が手を取り合い共存出来る世界を築く』という自分の望みを高らかに宣言したのだった!!



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