魔王(娘)、回想する(前編)
185-①
三日前……マナは影光と四天王を自室に呼んでいた。
「すみません、忙しい中お呼び立てしてしまって……」
「気にすんな、ところで……用って何だ?」
「影光さんに……聞いておきたい事があります」
「ん?」
「影光さんは……常日頃から『天下を奪る』と仰っておられましたね?」
「おう!!」
「一体何の為に?」
「そ、それは……」
「何故です?」
言い淀む影光だったが、マナの真っ直ぐで真剣な視線に耐えられず、観念したように言った。
「……心の底から惚れた女が魔族なんだ」
意外な答えにマナはキョトンとした。
「俺がそいつと結ばれた時に、魔族だ人間だ影魔獣だと下らん事で揉められていたら迷惑だろうが。だから……俺は天下を奪って、魔族だろうが人間だろうが影魔獣だろうが、誰もが誰かに憚る事無く生きられる世界をこの手で創る!!」
「つまりは……愛の為に?」
マナの指摘に影光はド赤面した。
「ば、馬鹿!! 言葉にすんな恥ずかしい!!」
「……実現出来ると思いますか?」
マナの問いかけに対し、影光は愛読していた超人プロレスマンガの主人公の決め台詞で答えた。
「ふふん……へのつっぱりはいらんですよ!!」
言葉の意味は分からんがとにかく凄い自信だと、圧倒されるマナを見て、影光は静かに笑った。
「まぁ、やってみなければ分からん、だからやる!! それだけだ」
「そうですか、影光さんになら私の真の望みをお話しても大丈夫そうですね」
「真の望み?」
そうしてマナが影光達に語ったのが、大広間に集結した魔族達に告げた『魔族と人が手を取り合い共存出来る世界』の到来だった。
マナの望みを聞いたヨミがヤレヤレと肩を竦める。
「あーあ、影光に匹敵するバカがこんな所にもいたなんて。人間と魔族……異なる種族の共存なんて無理に決まってるでしょう?」
「いいえ、今すぐには無理でも、きっと出来ます。人間と魔族は……同じ種なのですから」
「…………は?」
「……鳥と魚は互いに意思の疎通が出来るでしょうか?」
唐突なマナの質問の意図を理解出来なかったヨミは首を傾げつつ答えた。
「はぁ? 無理に決まってるじゃない、そんなの」
「そうです、本来『種が違う』とはそれほどまでに絶望的な隔たりがあるものなのです。ですが、我々『魔族』と呼ばれる種族と人間……いえ、魔族だけに限定しても、これほど多種多様な種が互いに意思の疎通や会話が可能な事を不思議に思った事はありませんか?」
「う……考えた事も無かったけど……言われて見れば……確かに」
「何故我々魔族と人間の意思疎通が可能なのか……」
「まさか……そんな……!?」
マナはヨミの疑問に対する答えを告げた。
「それは……魔族が人間から生み出された存在だからです」




