魔王城、進撃する
183-①
元祖武刃団と天照武刃団が一つになった超スペシャルオールスタードリームチーム、超武刃団が結成されたのと同時刻……
暗黒教団の総本山であるヴアン=アナザワルド大公領、《ホン・ソウザン》目掛けて、魔王城……正式名称、《移動要塞メ・サウゴ・クー》は突き進んでいた。
城の底部からは甲殻類を思わせる超巨大な脚が四本生えており、それを動かしながら進撃する様は、さながら背中に巨城を載せた超弩級のヤドカリであった。
そしてそんな城の中央部。魔王城を操作する為の制御室では、マナの執事である羊の老魔族、ゲンヨウが嬉々として操舵輪……いや操っているのは城なので操城輪と呼ぶべき物を握っていた。
「ワハハハハ!! いざ進め、我らが城よ!!」
頭の血管が切れてしまいそうな程、やたらめったらハイテンションなゲンヨウを影光は諫めた。
「お、落ち着けってジイさん!! 俺の国だと暴走運転なんかしたら上級国民以外は逮捕されちまうんだぞ!?」
「ワハハハハハ!!」
ゲンヨウが言うには、およそ三百年前……魔王シンが魔族を率いて人間達との戦いを繰り広げていた当時、ゲンヨウは移動要塞メ・サウゴ・クーの操城を担当していたらしい。
『ハンドルを握ると性格が変わる人』というのは日常でもよく見かけるが、ゲンヨウが正にそれだった。いや……ゲンヨウの場合は『昔に戻る』という方がより正確かもしれない。
三百年ぶりの操城にテンションが限界突破したゲンヨウは試運転の際に、『私の操城技術を披露しようぞ!!』と言い出し、魔王城でフィギュアスケート選手ばりの一本足立ち三回転をブチかまし、城内はあらゆる物が散乱し、城内にいた魔族達のゲ○まみれとなった。
おかげでマナから新生魔王軍の大将を任された影光が最初に全軍に下す事となった命令が、『城の掃除』というかなりカッコ悪い事態となってしまった。
当然ながら、『ゲンヨウに操城輪を握らせるな!!』という声があちこちから噴出したのだが、如何せん魔王城の操城方法は一見簡単に見えてその実、複雑怪奇を極めており、操城方法を知っているのがゲンヨウしかいないとなれば、影光に出来る事はこの300歳を超える超高齢ドライバーが暴走して魔王城でウイリー走行やドリフトかまさないように監視するくらいだった。
「……むっ」
「どうしたジイさん」
「見えて来たぞ!!」
ゲンヨウは制御室正面に設置された巨大な鏡を指差した。そこには雄大に聳え立つタンセード・マンナ火山と、その麓に築かれた都市が映し出されている。
いよいよか……と、影光が意気込んだその時、部屋に設置されている伝声管からマナの声が響いた。
「決戦前に……皆さんにお伝えしておく事があります。操城に関わる者以外は、全員大広間に集合して下さい」