少女達、食い止める
18-①
フリードがインサンが生み出した二体の影魔獣の内の一体を食い止めている間、クレナ、ミナハ、キクチナの三人はもう一体の影魔獣と交戦していた。
三人は影魔獣をミトのもとに行かせまいと息巻いたものの、影魔獣に苦戦していた。
三人共、元はミトの身の回りの世話をする為に派遣された貴族の娘達で、元々武門の出であるミナハはともかく、文官の家柄の娘であるクレナや学者の家柄の娘のキクチナは、ミトに仕える事になった際、『ミト姫様に気に入られるようように』と親に命じられて急遽武芸を学ばされた俄仕込みの護衛兵であった。
三人は、先の魔王軍との大戦で魔王シンに立ち向かうミトの映像を見て深く……それはもう深く感激し、必死に訓練はしたものの、それでもまだまだ付け焼き刃である。
「くっ……このままじゃ勝てない」
「弱音を吐くな!! 私達で姫様を守るんだ!!」
思わず弱音を吐いたクレナをミナハが叱咤する。
「ふ、二人共……このまま戦っていてはダメです!! 心を合わせるんです……姫様達のように!!」
キクチナに言われて、クレナとミナハはミトと武光にチラリと視線をやった。ミトと武光は相変わらず息の合った連携で、強敵インサン=マリートと互角に渡り合っている。
「フフ……そうね、姫様は『私達の戦いを見ていなさい』と仰っていたわ……!!」
「ああ……そうだったな!!」
少女達は互いに視線を交わし合い、頷き合った。
「ミーナ!! 私達三人の中じゃ、ミーナが一番武芸に秀でているわ、私がミーナに合わせる!!」
「クレナ……分かった、頼む!! キクチナ!!」
「は、はいっ!!」
クレナの言葉に頷いたミナハはキクチナに声をかけた。
「お前が私達に指示を出してくれ!!」
「ええっ!? わ、私がですかっ!?」
「ああ……私達三人の中で、お前が一番冷静で周りをよく見ている!!」
「わ、分かりました……や、やってみます!!」
「よーし!! 行こう、ミーナ!! キクちゃん!!」
「ああ!!」
「はいっ!!」
少女達は影魔獣に突撃した。
「おおおおおっ!!」
気合いと共に、ミナハが真っ向から振り下ろした斧薙刀の一撃を影魔獣が剣と化した右腕を頭上に掲げて受け止める。
「今ですクレナさん、左へ!!」
「よぉぉぉぉしっ!! 必殺っっっ……紅蓮閃光剣っっっ!!」
動きを止めた影魔獣の一瞬の隙を突いて、影魔獣の左に回り込んだクレナが刺突を繰り出す!!
クレナの刺突は影魔獣を捉えたかに見えたが……
“ガキンッッッ!!”
「くっ!?」
影魔獣は左の肘から先を右腕同様に剣に変化させて、クレナの刺突を防いだ。
「二人共、離れて下さい!!」
「分かった!!」
「うんっ!!」
指示に従い、ミナハとクレナが左右に跳び退いた瞬間、キクチナはボウガンをブッ放した。
放たれた矢は影魔獣の胸板に突き立ち、影魔獣はよろめいた。
「やった!!」
「よし!!」
「い、行けます!! この調子で……!」
初めて一撃喰らわす事に成功し、三人の士気は大いに上がり、叫んだ!!
「「「姫様には……一歩も近付かせない!!」」」




