斬られ役、ぶった斬る
178-①
武光に『核の位置を教えろ!!』と言われたシスターズだったが、影魔獣にとって核は心臓であり、脳なのである。
当然ながら、シスターズは武光の申し出を拒否した。
「「「ふざけんな……!! 敵である貴方に核の位置を教えるとでも? 何を企んでるのよ……」」」
シスターズの疑念に対し、武光は答えた。
「俺とイットーでお前らをぶった斬って……お前らを強制的に分離させて助ける!!」
シスターズは こんらんした!!
この男は……自分達を救おうというのか。さっきまで生命の奪い合いをしていた自分達を。
「「「そんな……一体どうして!?」」」
武光とイットーは高らかに答えた。
「それはッッッ!!」
〔僕達のッッッ!!〕
「自己満足じゃあああああーーーっ!!」
〔自己満足だああああああ---っ!!〕
思わずズッコケてしまいそうな馬鹿馬鹿しい答えだが、ここまで堂々と言い切られては、もはや返す言葉など無い。利害得失や敵味方などの一切を遙か彼方にぶん投げて、反論や正論や相手の都合も全部ガン無視して、『自分達がやりたいからやる!!』とコイツらは言っているのだ。
「「「それを……信じろってのか……!!」」」
「……信じろとしか俺には言えん!! 言わへんかったら適当にぶった斬る、核に当たっても知らんぞ!!」
「「「ふざけんな……!!」」」
「「「そんな言葉を信じろとでも……?」」」
「「「…………私、信じてみるよ」」」
03の言葉に、01と02は唖然とした。
「「「03お前……!! 正気なの……!?」」」
「「「勇者様の世話をしてた時に、勇者様が言っていたの……『敵と戦うには勇気がいる。でも、敵に寄り添う事は戦う事よりも何倍も勇気がいる。私にはそんな本当の勇気を持った友がいる』って」」」
「「「それが……この男だと言うの?」」」
「「「………………くっ!!」」」
……サンガイハオウは尻尾の先で三人の核がある位置を差し示した。
「「「……テメェを信じたわけじゃねぇ!! 03を信じただけですからね?」
「それでかまへん!! 行くぞイットー!!」
〔ああ!!〕
武光はイットー・リョーダンを上段に構えた。
「でやあああああっ!!」
〔でやぁぁぁぁぁっ!!〕
“すすん!!”
裂帛の気合いと共に、武光はイットー・リョーダンを右の袈裟懸けに振り下ろし、返す刀で左から右へとイットー・リョーダンを水平に振り抜いた。
「……ふうっ」
“……キンッ!!”
武光は小さく息を吐くと、血振りをしてイットー・リョーダンを鞘に納めた。
……直後、サンガイハオウの肉体は、三つに分割されて床に落ちた。