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斬られ役、異世界を征く!! 弐!!  作者: 通 行人(とおり ゆきひと)
本拠地突入編・2
173/282

オールスター、バトる(後編)


 173-①


 クレナ達がクウレツオウ01、ミナハ達がカイコウオウ03と交戦する中、武光とフリード、そしてナジミの三人はリクシンオウ02と対峙していたのだが……


「アニキ……その……怒ってるよね……?」

「ハハハ……そんなわけないやろー……なぁ、()()?」

「め……めちゃくちゃ根に持ってるじゃん!? 大体、アニキがカッコつけて一人で行こうとするのが悪いんじゃんか!!」

「あぁん!? 俺はお前らを危ない目に遭わせへん為にやなぁ……!!」

「ちょっと!? 武光様もフリード君もケンカしてる場合じゃ──」

「やかましい!! このド貧乳ッッッ!!」

「そーだそーだ、小っさいくせに!!」

「今それ関係ないでしょう!? って言うか、めっちゃありますし!!」


 ナジミの仲裁もリクシンオウ02もガン無視でめまくっている二人に、両腕の肘から先を長大な突撃槍ランス状に変化させた02が、獲物を狙う猛獣のように、悠然と歩み寄る。


「ふふふ……この私を前に仲間割れだなんて……とんだ愚か者……ううっ!?」


 02は思わず両手を地に着いてしまった。武光に超聖剣イットー・リョーダンで、六本ある脚の前列二本をいきなり “すん!!” と斬り飛ばされ、バランスを崩したのだ。


「今やフリード!!」

「応っっっ!!」


 フリードが無防備になった02の下半身……獅子の体の脇腹に、吸命剣・妖月を突き立てる。


「くっ……あ、貴方達、仲間割れをしていたはずでは……?」


 02の言葉に武光とフリードは、『ぐわははは!!』と悪役感満載の笑い声を上げた。


「まんまとかかったな、愚か者めぇっ!!」

「なかなかの名演技だったろ? アニキと俺の芝居は?」


 不意打ちを喰らった02、そして一連の流れを見ていたナジミは、しくも全く同時に、全く同じ言葉を呟いた。『せ……セコい!!』と。


「全ては……私を油断させる為の……?」

「ふふん、そう……全ては芝居や……ナジミの貧乳以外はな!!」

「その通り、姐さんの貧乳以外はね!!」


 武光とフリードは気付いていなかったが、二人の背後では、ナジミが悪鬼羅刹も卒倒し、阿修羅も逃げ出す憤怒の表情で壁をブン殴っていた。


 そんな裏番長をよそに、武光はイットー・リョーダンで02を切り刻み、フリードは妖月で02の生命エネルギーを吸い取り続け、そのエネルギーがフリードの右手に流れ込んでゆく。

 フリードは、右手に宿る黒竜が目を覚ましたのを感じ取った。


「よっしゃあ!! 今こそ目覚めよ……我が右腕に宿りし黒き竜よ!!」


“グォアアアアアアアアアッ!!”


 高々と掲げられたフリードの右拳が指先から徐々に黒く染まり、肘辺りまで浸食したソレは、竜の頭部へと姿を変えた。


「喰らえええええっ!!」

「さ、させません!?」


 フリードのブラックキングナックルに対し、武光に全ての脚と左腕を斬り落とされていた02は、かろうじて残っていた右腕をリクシンオウの……水牛のような角の生えた獅子の形に変化させ迎撃した。


 黒竜の拳と獅子の拳が激しく激突した。


 そのまま膠着こうちゃく状態が6~7秒続いたが、徐々にフリードが押し込まれてゆく。


「ぐぬぬぬぬ……!!」

「ふふふ……弱く、脆く、愚かな人間である貴方が本気でこの私に勝てるとでも?」

「ナメんなよ……!!」


 フリードは右手に力を込めた。02の拳に小さな亀裂が入る。


「なっ……人間如きに……!?」

「俺達ゃ……無敵のッッッ……!!」


 フリードは左足を前に踏み出しながら、右手に更に力を込めた。02の拳の亀裂が広がってゆく。


「天照武刃団だぁーーーーーーーっ!!」

「そ、そんな……ぐぅっ!?」


 フリードは拳を力任せに振り抜いた。


 ブラックキングナックルが獅子の拳を粉砕し、殴り飛ばされた02は、広間奥に設置された二階へと続く階段に叩きつけられた。


「よっしゃ!! やるなぁ、新隊長?」

「……ちょっ!? アニキ、マジで根に持ってないよね……?」


 階段に叩きつけられた02は焦っていた。暗黒教団の聖女シルエッタが技術のすいを集めて生み出された影魔獣であるシスターズが……人間に追い詰められるなど……

 武光に斬られた脚を再生させた02は、立ち上がろうとしたが──


「うおおおっ!?」

「きゃあっ!?」

「うぐっ!?」


 クレナ達やミナハ達に吹っ飛ばされた01と03がぶつかってきて、三人は折り重なるように倒れた。


「クソッ……こ、コイツら……!!」

「私達が、人間なんかに……?」

「ちょ……ちょっとヤバいかも……♪」


 その時、透き通った声がフリード達の頭上から降ってきた。


「全く……貴方達には勇者リヴァルの捕縛と城内に侵入した賊の討滅を命じたはずですが……こんな所で一体何を遊んでいるのかしら?」


 漆黒の衣を身にまとい、身の丈程もある聖杖をたずさえた女が、悠然と階段を降りてきた。

 階段の踊り場で優しく微笑みながら自分達を見下みおろしている女に対し、フリードは鋭い視線を向けた。


「お前は……シルエッタ!!」

「フフフ……ご機嫌よう、クズの皆さん」


 シルエッタが 現れた!!


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