魔王軍、動く
155-①
「ぬぅ……!!」
ガロウは頭を抱えていた。
暗黒教団撃滅に向けて、一軍の将として部隊を率いる事となったのだが……影光が提案してくる軍団名が……ことごとく意味不明なのである!!
「ガロウ……お前の軍団は狼とか虎とか馬とか、とにかく動物っぽい奴が多いから……」
どうせよく分からん名前だろうと思っていたガロウだったが……
「動○戦隊ジ○ウオウジャーだ!!」
案の定、よく分からん名前だった!!
「わけが分からん、却下だ」
「はぁ!? めちゃくちゃ強くてカッコイイんだぞ? ジ○ウオウジャー!!」
「知るか!! 却下!!」
「じゃ、じゃあ……技巧軍団でどうだ!?」
「何だそれは……」
ガロウの言葉に、影光は待ってましたとばかりにドヤ顔で語り始めた。
「良いか? まずレムのすけの部隊は暴牛族とか体が大きくて力自慢の奴らが集まっているから強力軍団、キサイの部隊には智略に長けた連中が集まっているから知性軍団、ヨミの所は空を飛べる種族が中心だから飛翔軍団、そして俺の率いる本隊が残虐軍団、そして残ったお前が……技巧軍団だッッッ!!」
「いや、全然分からん。大体、お前みたいな甘ちゃんのどこが《残虐》なんだ? どちらかと言えば俺の方が残虐で、お前の方が技巧っぽい──」
「黙らんかーガロウ!!」
わけも分からず一喝されて、ガロウは困惑した。
「男というものはあまりしゃべるものではない!! 両の眼で静かに結果だけを見ていればよいのだ!!」
「いや、その結果が意味不明だから口出ししてるんだが……」
「何だよもー、このワガママさんめ!!」
「前々から思っていたが……お前、絶望的に名付け下手だな」
「えー、じゃあとっておきの名を……これは我らが愛しのマスコットであるつばめとすずめもイチオシだ!! きっとお前も気に入ってくれると思う!!」
「まぁ……一応聞くだけ聞いといてやろう」
「ふっふっふ……そこまで言うなら教えてやろう、その名も……《け○のフレンズ》だッッッ!!」
「……は?」
「け○のフレンズッッッ!!」
「いや、今までで一番ダメ──」
「うー!! がおーーー!!」
「待て待て待て!? 勢いで乗りきろうとするんじゃない!!」
「ちぇっ……ダメかー?」
「名前は俺が考えるから、お前は自分の仕事をしろ!!」
「そっか、分かった」
ガロウの部屋を追い出された影光は、謁見の間にやってきて、未だ壁に突き刺さったままのネキリ・ナ・デギリに話しかけた。
「様子を見てきたけど……ガロウほどの歴戦の猛者でも緊張するよな……やっぱ」
〔フン……暗黒教団とやらを叩き潰すと言った事、後悔しておるのか?〕
影光は親指と人差し指で『ちょっとだけ』というジェスチャーをした。
「勢いで言っちまったが……とにかく兵力が足りねぇ」
〔愚かな……兵力を分散させるからであろう……? この城に集結した全軍で攻めれば十分足りるはずだ〕
「いやいやいや、全軍を攻撃部隊に回しちまったらこの城の守りはどうすんだよ!?」
〔……この城まるごと敵に突撃すればそんなもの関係無かろう?〕
「ったく……何をアホな事を…………ん?」
影光は魔王剣を思わず二度見した。
「お前……今何て言った? 『この城まるごと』……?」
呆気に取られる影光に、ネキリ・ナ・デギリがあっけらかんと告げる。
〔……そうだ。移動要塞であるこの城を起動させ……敵の本拠地にこの城ごと斬り込むのだ!!〕
そして……魔王城は、暗黒教団壊滅に向けて動き始める事となる。




