鬼、雄叫びを上げる
140-①
城壁の上の兵達は、戦闘中の天驚魔刃団の中にキサイがいるのを見つけた。
「おい、アレ……キサイじゃねぇのか?」
「あの軟弱者がどうしたって!?」
「見ろ!! キサイの野郎……影魔獣を次々と倒してるぞ!!」
城兵達の視線の先では、仲間達に周囲を守られつつ、キサイが一体……また一体と一対一で影魔獣を倒していた。
「キサイ、行ったぞ!!」
「は、ハイ!!」
キサイは短剣を逆手に構え、剣影兵に斬りかかった。
「くっ……このっ!!」
キサイと剣影兵は激しく斬り結んだ。実力は互角と見ていいだろう。だが、キサイと違って影魔獣は疲労しない、徐々にキサイが押され始めた。
核の場所が分からず苦戦するキサイを見て、ガロウは咳払いをした。
「あー、ゴホン!! ンンッ……ゴホン……キサイ、その、何だ……右の脇腹が……痒いッッッ!!」
「いくら『手助けしない!!』って言ったからって……助言ヘタクソかよ!?」
呆れるフォルトゥナだったが、ガロウの助言を聞いてキサイは何とか剣影兵を倒した。
疲労困憊になりながらも、六体目の影魔獣を仕留めたキサイは百鬼塞の方に向かって喉が張り裂けんばかりに荒々しく雄叫びを上げた。
「ハァ……ハァ……オーガ一族の戦士、キサイこれにあり!! 見たかーーー!! 我が武勇ーーーッ!!」
キサイの渾身の叫びに応えるように、百鬼塞の方から鬨の声が上がった。キサイの勇戦ぶりに戦意を取り戻した城壁の上の守備兵達は徐々に影魔獣軍団を押し戻し始めている。
ガロウは、鋭い爪で槍影兵を引き裂きながらキサイに問うた。
「満足したか、キサイ?」
「ええ……ありがとうございました」
「一つ貸しだぞ」
「ええ、ガロウさんが軍師をやりたくなった時は代わってあげますよ。僕がガロウさんを護衛して差し上げます」
「フッ……抜かせ」
「おおーーーい!!」
「ググォーーーア!!」
笑い合う二人のもとに、投石機を破壊した影光とレムのすけが追いついて来た。
「皆無事か!?」
「ああ、お前達の方は?」
ガロウの問いに、影光は親指を立てた。
「バッチリ破壊してやった!! よし、それじゃあ全員揃った所で……改めて、敵を蹴散らすぞ!!」
影光の檄に天驚魔刃団一同は『応ッッッ!!』と答えた。
「行くぞ……遅れるなよ、猫娘!!」
「誰が猫だっ!! 私は……虎だーーーーーっ!!」
「グォァァァ---ッ!!」
「皆さん……僕の作戦通りにお願いしますよ!!」
「いいわね下僕共……敵は皆殺しよ!!」
「「「ハッ!! 我らの身命、ヨミ様の為にッッッ!!」」」
「行くぞお前ら……俺達、天驚魔刃団の強さを思い知らせろぉぉぉぉぉっ!!」
天驚魔刃団は影魔獣軍団に背後から元気良く襲いかかった!!