斬られ役(影)、ふざける
138-①
「ハハハ……どうだっ、私のクウレツオウの凄さを見たかコノヤロー!!」
物凄い風圧によって、顔がうら若き乙女にあるまじき事になりながらも、01は不敵に笑った。
「言っておいてやるけどなぁ、コイツはこれでもまだ完全体じゃな──」
“ずるっ!!”
「おぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!?」
図らずも、シスターズ01はクウレツオウの凄さを体を張って影光達に見せつける事となった。
クウレツオウの巻き起こす猛烈な突風に飛ばされまいと必死にしがみついていた木から手を滑らせた01は、まるで糸の切れた凧のようにスッ飛ばされ、近くにあった大岩に叩きつけられて無惨にも全身がひしゃげてしまった。
「うわぁ……どうするレムのすけ、アホだぞアイツ」
「グォーウ……」
唖然とする影光とレムのすけに対し、01は怒りの込もった声を発した。
「テメェらぁぁぁっ……よくもぉぉぉッッッ!!」
「いや、よくもって……ビッチャビチャの濡れ衣じゃねーか……」
「うるせぇ!! クウレツオウ!! こいつらを焼き払……ああっ!?」
その時、クウレツオウが突如として消滅した。
夕日が山の稜線の向こうへと沈み、クウレツオウの元となった影が消えてしまったのだ。
「日没か……助かったぜ……さてと……」
影光はゆっくりと01に歩み寄ると、影醒刃を大上段に振り被った。
01は恐怖のあまり、ひしゃげた手足を再生させるのも忘れて、ズリズリと後退った。
「覚悟しろよ?」
「あ……ああ……や、やめ……」
「でやぁぁぁぁぁっ!!」
「ひぃっ!?」
振り下ろされた影醒刃は01の鼻先数cmで止められていた。
「ハァーッ……ハァーッ……な、何で……?」
「まぁ、あれだ……今日は良い戒名が思い浮かびそうにないんでな。子供はとっととウチに帰れ」
「ふ……ふざけんな!! 失敗作の分際で……!!」
「あのなぁ、俺がふざけてなかったら、お前は今頃……」
影光は影醒刃を振るい、投石機をバラバラに破壊した。
「ああなってる所だぞ?」
「うぐぐ……」
「これ以上抵抗されると……俺も流石にふざけてはいられなくなる」
影光の見せた鋭い視線に01はたじろいだ。
「怖いお兄さんに素っ裸にされて『R18』のセルフレイティング不可避な目に遭わされた挙句、苦しめに苦しめ抜かれて殺されたくなかったら、とっとと帰るんだな」
「こ、この……鬼ーーーっ!! 悪魔ーーーっ!!」
「フフン……まぁな、俺は……悪役歴が長いんだ」
「うぐぐ……お、覚えてやがれ!!」
01は 逃げ出した!!
手足を再生させたシスターズ01は、ヨロヨロと逃げ去ってしまった。
「グォゴゴァ……カゲ……ミツ……?」
「いやぁ、影魔獣とは言え子供を手にかけるのはちょっとな……ガロウ達には内緒だぞ? バレたら『甘い!!』だの何だのって怒られちまうからな? それはともかく、砦の方は……?」
影光の視線の先では、未だに戦闘が続いていた。日が沈んだにも関わらず、影魔獣が消滅しないという事は、どこかにトポンツ砦にもあったあの光球があるという事だ。
「行くぞレムのすけ、ガロウ達に加勢する!!」
「ゴアッッッ!!」
影光とレムのすけは、ガロウ達に加勢すべく、砦に向かって走り出した。