修道女(01)、鞭を振るう
136-①
……最初、投石機の側にいた《シスターズ01》は、味方の剣影兵がゴーレムに追われているのだと思った。
一体の影魔獣が自分達の方に向かって走ってくる。そして、その剣影兵を、両手に巨大な板状の武器を持ったゴーレムが追っている。
「て、敵襲か!? 迎撃しろっ!!」
01に言われて、投石機の周囲にいた信徒達は待機中の剣影兵達にゴーレム迎撃を命じ、命令を受けた剣影兵は、向かって来る剣影兵の横を通り過ぎて、突進してくるゴーレムに殺到したが……
01は違和感に気付いた。
自分達のように、人の感情や記憶を複製された影魔獣と違い、通常の影魔獣に恐怖心は存在しない。ならば何故あの剣影兵はゴーレムから逃げていたのか……
「まさか!?」
「気付くのが……遅-い!!」
護衛をまんまとすり抜け、自陣の奥深くまで入り込んでいたさっきの剣影兵が、突如として信徒達に襲いかかり、剣影兵の影を生み出していた木彫りの人形を破壊してゴーレムと戦闘中だった剣影兵達を消滅させてしまった。
剣影兵達を消滅させられた01は、歯噛みした。
「うぐぐ……テメェ……何者だ!!」
影光は『肉体の形状変化能力』で剣影兵に擬態していた姿を元に戻し、高らかに名乗った。
「火付盗賊改方、長谷川平蔵であーーーる!!」
「ウソつけ!! テメェ……シルエッタ姉さんが作った失敗作の実験体14号だな!!」
「誰がイケメン失敗作だコラ!! それよりもシルエッタ『姉さん』だと……?」
「ああそうさ、私はシルエッタ姉さんの記憶と人格の一部を引き継いで生み出された特別な影魔獣なのさ!!」
影光は目の前のツインテールの少女を見た。なるほど、言われてみれば確かにシルエッタの面影がある。それに、シルエッタの記憶を持っているのなら自分の事を知っているのも頷ける。
「私はシスターズ01《ゼロイチ》!! 名前は……募集中だ!!」
「ふん、なら……戒名は俺が付けてやるぜ!!」
影醒刃を中段霞に構えた影光を見て、01はニヤリと笑った。
「失敗作如きが、この私と戦おうってのか? テメェのマヌケぶりを恨むんだな!!」
01は、両腰に束ねて吊るしていた鞭を手に取ると、勢い良く振るった。
そして、01が振るった鞭は……唸りを上げて自らのスネを直撃した。




