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斬られ役、異世界を征く!! 弐!!  作者: 通 行人(とおり ゆきひと)
本拠地突入編・1
120/282

少年、何か出す


 120-①


「……でやあああああっ!!」

〔……でやあああああっ!!〕


“すん!!”


 武光とイットーは、リクシンオウの左前方から突撃し、リクシンオウの左角を “すん!!” と袈裟懸けに切り落とした。


 超聖剣のアホみたいな切れ味の前に、いとも容易く角を切断されたリクシンオウは、すかさず右の前肢で横殴りに反撃を繰り出したが、武光は素早く身をひるがえして反撃を回避しつつ、切っ先を前方に向け、半身になって腰溜めに剣を構える、所謂いわゆる、《中段霞ちゅうだんがすみ》に構え、リクシンオウを牽制けんせいした。

 リクシンオウは自分に対して致命傷を与えうる攻撃をしてきた武光に注意を向けたが、それは武光の撒いたえさであった。

 完全に武光に気を取られていたリクシンオウに三人娘とアルジェが襲いかかる。


「「「はあああああっ!!」」」


 ミナハが驚天動地を分離させた片割れ、斧薙刀の《驚天》でリクシンオウの体表に傷を付け、続くキクチナがミナハから受け取った驚天動地のもう片方、手槍の《動地》による刺突でミナハの付けた傷を深くし、そこにアルジェが剣盾の一撃を叩き込んで更に傷口を広げた。


「今だクレナ!!」

「クレナさん!!」

「行け!!」


“グサッッッ!!”


 ミナハとキクチナ、そしてアルジェの波状攻撃によって作られた傷口に突き立てられた穿影槍は、今度は威力を十分に発揮出来る深さまで突き刺さった。


「よし!! 行っけぇぇぇぇぇーーーーーっ!!」


 クレナは引き金を引いた。閃光がほとばしり、リクシンオウの右脇腹が、大きくえぐれて吹き飛んだ。


“グォアッ!?”


「うおおおおおっ!!」


 よろめくリクシンオウ目掛けて武光が突撃し、リクシンオウの眉間みけんに刀身の根元近くまでイットー・リョーダンを突き立てた。


「……フンッッッ!!」


 体重を掛けて、深々と突き刺さったイットー・リョーダンを一気に斬り下げ、武光はリクシンオウの頭部を真っ二つに裂いたが、影魔獣であるリクシンオウは怯まない。だが、それ以上に武光は怯まなかった。


「でやぁぁぁぁぁっ!!」


 再生する暇を与えず、燕返しに、分かれた首の右半分を斬り落とし、左半分を斬り飛ばす!!


 息の合った波状攻撃の前に、みるみる削り取られていくリクシンオウを見て、フリードと交戦中の02は焦った。


「く……そんな、完全体でないとは言え、私の黄影聖獣が……!?」

「ヘッ、ナメんなコノヤロー!! 俺達は……天下無敵の天照武刃団だッッッ!!」


 フリードはブラックキングナックルを振り上げた。02は左腕を変化させた盾でフリードの拳を防御したが……


“ガンッッッ!!”


 02は衝撃を受け止め切れずに、大きく吹っ飛ばされた。


「くっ……この力は!? ……ハッ!?」


 地面をゴロゴロと転がった後、立ち上がった02は気付いた。敵の右腕に寄生した影魔獣が変貌を遂げている。出現時は変化していたのは手首から先だけだったのが、侵食が右肘みぎひじ付近にまで及んでいた。右手の影魔獣の牙はより大きく、より鋭くなっている。

 敵の突然のパワーアップの理由を思いついた02は右手を自分の胸に当てた。


「まさか……あの時、私の肉体の一部を食いちぎって取り込んだからなの……!?」

「そんな事……俺が知るかッッッ……うっ!?」


 小さく呻き声を上げたフリードを心配して、ナジミが声をかける。


「どうしたのフリード君!?」

「何かよく分かんないんだけど……何か出そうなんだ!!」

「何かって!?」

「いや、分かんないけど……って、うわっ!?」


 黒王に引っ張られるように、フリードが右手を前方に向けた。02に向かって、黒王が大口を開く。フリードは右手を前方に向けたまま、背後に立つナジミの方を振り向いた。


「や、ヤバイ!! マジで出そう!! ど、どうしようねえさん!?」

「えぇっ!? ど、どうしようって言われても!? あっ!?」


 ナジミの視線の先では、02が両腕の肘から先を剣状に変化させて突進してきていた。


「出しちゃいましょう!!」

「出すの!?」

「だ……出しちゃいましょう!!」

「マジか……あっ」


 フリードがほんの一瞬気を緩めた瞬間、黒王が口から紫の炎を吐いた。


「「な、何か出たーーーーーっ!?」」


 黒王が吐き出したすさまじい炎が、真正面から突っ込んできていた02を包み込んだ。


「うおおおおおっ!? 姐さんヤベェ!! コレ……止め方が分からねぇ!?」

「えぇっ!? アワワ……え、えーと……どうしましょう!? と、とにかく…… “ギュッ” ってめるのよ、 “ギュッ!!” って!!」

「はぁ!? 何だよソレ!?」

「いいから!!」


 テンパりまくっているナジミのよく分からん指示を受けたフリードはとりあえず右手を “ギュッ” としてみた……力を込めるにつれて火の勢いが弱まっていく。


「おおう!? こ……こうか?」


 悪戦苦闘の末、炎がようやく収まると、そこにはもぞもぞと動く小さな肉片があった……体の大部分を焼き払われた02である。

 02の肉片は、近くに転がっていた、リクシンオウを生み出す為の黄水晶の像を体内に取り込むと、かすれた声を出した。


「ウ……グ……オボエテイロ……オマエハ……ラクニハ……シナセナイ……ゼッタイニブチコロシテ……ヤルカラ……ナ?」


「あっ!? 待てっ!?」


 02の肉片は自分の真下に、影転移の術の黒い穴を出現させ、その中に消えた。そして、02が黄水晶の像を持ち去った結果、元となる影を失ってしまったリクシンオウは消滅した。



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