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斬られ役、異世界を征く!! 弐!!  作者: 通 行人(とおり ゆきひと)
本拠地突入編・1
119/282

聖獣(黄)、猛る


 119-①


 シスターズ02によって生み出された双角六脚の獅子型影魔獣は、大地を震わせるような凄まじい咆哮を上げた。


「ふふふ……格好良いでしょう? 私の《黄影聖獣こうえいせいじゅう・リクシンオウ》は?」

「そんな!? 常連さんが影魔獣……!?」

「あのシュワルツェネッ太ですら気ぃ付けへんかったとは……」


 驚愕しているアルジェや武光達を見て、02はわらう。


「当然でしょう? 私は聖女シルエッタ=シャード様が技術の粋を集めて生み出した影魔獣……一般信徒が生み出した、ガワだけ似せた安物とは出来が違うのですよ?」


 不敵な笑みを浮かべていた02だったが、不意に小さく溜め息を吐いた。


「それにしても……ロイ=デスト一党の監視だけのはずが……随分と面倒な事になったものですね?」


 言いながら、02が武光達の方に右手を向けた。


「……貴方達にはここで消えてもらいます。店長さんには、『貴方達は私を守る為に命懸けで勇敢に戦い、その命を散らしました』と伝えてあげるので安心してあの世に行って下さいね?」


 02の『行きなさい』という命令を受けて、リクシンオウは武光達目掛けて突進した。


「皆、散れっ!?」


 武光達はバラバラに散ってリクシンオウの突進を回避し、リクシンオウはそのまま、武光達の背後にあった小さな小屋に勢いよく突っ込んだ。

 まるで、発泡スチロールで出来ていたかのようにバラバラに吹き飛んだ小屋を見て、戦慄した武光はイットー・リョーダンを抜刀しながら即座に指示を出した。


「アイツの正面には立ったらアカんぞ、ええな!? ナジミとフリードはあの女を!!」

「分かりました、武光様!!」

「任せてよアニキ!! 喰らえぇぇぇっ!!」


 フリードは腰の後ろに差していた鞘から吸命剣・妖月を左手で抜き放ち、02に斬り掛かったが……


“ガキンッッッ!!”


 02は右腕の肘から先を剣状に変化させ、妖月の一撃を防いだ。


「ふふふ……甘いわね、術者が狙われるのを想定していないとでも?」

「ちぃっ!!」


 フリードは右手に黒王を出現させ、ブラックキングナックルで殴りかかったが……


「無駄よ?」


 02は、今度は左腕を盾状に変化させて黒王の牙を防いだ。


「くっ!? この野郎……っ!!」


 華奢きゃしゃに見えても相手は影魔獣である、フリードは両腕に力を込めたが、02はビクともしない。


「ほらほら、早くしないと貴方の仲間達はリクシンオウの餌食えじきよ?」

「くっ……」


 フリードの視線の先では、武光達がリクシンオウ相手に苦戦を強いられていた。


 119-②


「くっ……めちゃくちゃ手強いやんけ!! 弱点丸見えのクセに……」


 リクシンオウはその見た目において、通常の影魔獣と大きく異なる点があった。


 リクシンオウの肉体は、シスターズ02がリクシンオウを生み出すのに使用した黄色い水晶人形と同じく、黄色きいろに薄くき通っており、影魔獣最大の弱点である《コア》の場所が丸見えなのだが、暴れ回るリクシンオウに対し、武光達は苦戦していた。


「み、皆さん離れて下さい!! 雷術……震天霹靂しんてんのへきれき!!」


 キクチナは、リクシンオウの動きを止めるべく、電撃を浴びせかけたが……


「そ、そんな!! 全然効いてない!?」

「危ないキクちゃん!!」


 電撃をものともせず、キクチナ目掛けて突進しようしたリクシンオウの右脇腹に、クレナは穿影槍を突き刺そうとしたが、頑強な肉体に阻まれ、穿影槍は先端が5cm程度刺さった辺りで止まり、それ以上深く刺さらなかった。

 これでは影魔獣に有効打は与えられない、クレナはすぐさま距離を取ろうとしたが……


「嘘っ!? 抜けない!?」


 リクシンオウは刺された傷口を急激に締める事で、穿影槍を抜けなくした。

 穿影槍は落下防止の為に革製のベルトで肩に斜め掛けしており、クレナは咄嗟とっさに穿影槍を手放して逃げるという事が出来なかった。落下防止用のベルトが完全にクレナの離脱を制限してしまっている。


 身動きが取れないクレナを刺し貫こうと、リクシンオウが、先端が槍のように鋭く尖った長い尻尾をクレナに向ける。


「させるか!!」


 尻尾による刺突をクレナとの間に割り込んだアルジェが剣盾ソードシールドで防いだ。衝撃を受けたアルジェが踏ん張り切れずに大きく後退する。


 そのすきにミナハが驚天動地で、穿影槍が突き刺さった箇所を斬りつけて傷口を広げ、穿影槍を抜いた。影醒刃シャドーセーバーの刀身を使用して造られた驚天動地ですら、わずかに体表を傷付ける事しか出来ない。恐るべき硬度である。


「大丈夫か、クレナ!?」

「ありがとうミーナ!!」

「で、でも……このままじゃ……」

「怯むな!!」


 穿影槍も刺さらない。

 驚天動地も有効打が与えられない。

 雷術も効かない。


 かつて無い強敵にたじろぐ三人娘をアルジェが叱咤しったする。


「完全に攻撃が効いてないわけじゃない!! 少しずつ削るぞ!!」

「アルジェさん……それ俺の台詞──」

「良いから援護しろ!! 五人いるんだ、十分じゅうぶん……いや、五十分こじゅうぶんに戦える……そうだろう隊長さん?」

「……フッ」

「な、何がおかしい!?」

「任務中に笑ったらアカンのとちゃうかったんか?」

「う、うるさい!! 無駄口を叩くな!!」

「よっしゃ!! 行くぞ皆!!」


 五人は、グルル……と低く唸り声を上げている黄影聖獣・リクシンオウに突撃した。


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