隊員達、因縁に挑む(後編)
116-①
「くっ……馬鹿な……この俺が!! この俺がこんなガキ共にぃぃぃ……っ」
インサンは苦戦していた。前に見た時は取るに足らない雑魚……そう雑魚でしかないはずだったのに。
インサンは正面に立つフリードを真っ向から両断しようと獅子王鋼牙を振り上げたが──
「せいやぁぁぁっ!!」
「うっ!?」
左側面からミナハが斧薙刀による刺突を繰り出してきた。インサンは間一髪で身体を捻って刺突を回避し、そのままの勢いで身体を回転させて横薙ぎに剣を振るったが、ミナハは素早く後方に跳び退き、反撃の横薙ぎを回避した。
「くそがっ!!」
インサンはすぐさま袈裟斬りを繰り出すが、インサンの剣はミナハを捉える事が出来ない。
「チョロチョロとぉぉぉっ!!」
「さ、させません!!」
「チィッ!?」
足元に撃ち込まれたキクチナの雷導針によってインサンの動きが一瞬止まる。そして、その瞬間──
「副隊長直伝……48の退魔技のひとーーーつ!! 電光飛び膝蹴り!!」
「かーらーのー……アニキ直伝、全力顔面パンチ!!」
「ぐはぁっ!?」
クレナの背後からの飛び膝蹴りを喰らって、前につんのめったインサンの顔面に、フリード渾身のパンチがめり込んだ。
「お、俺様が……こんなガキ共に……っ!!」
派手に殴り倒され、愕然とするインサンを見据えながら、ミナハは愛用の斧薙刀、《驚天動地》を構えて言った。
「教えてやろうか、インサンマリート!!」
「何ィ……!?」
「お前は……その剣の重量に振り回されている!! 使いこなせぬ剣で全力は発揮できん!! もっと自分に見合った剣を使うべきだったな!!」
「な、生意気なっ……うおっ!?」
激昂して立ち上がったインサンの足元に雷導針が撃ち込まれた。インサンの動きを牽制したキクチナが、次の雷導針を装填しながら冷静に告げる。
「貴方の剣術における最大の武器は、瞬時に相手の死角に飛び込める脚力です……それならば、その足を封じれば……貴方の剣の威力は半減です!!」
「このクソガキが……賢しら顔でぇぇぇっ!!」
フリード達を威圧するかの如く苛立たしげに吼えたインサンだったが、クレナは怯む事なく言い返した。
「うるさい!! お前なんか……お前なんか……使いこなせなくて半減だーーーーー!!」
「クレナ……無理してそれっぽい事言おうとしなくてもいいって……バカなのがバレるぞ?」
「ば……バカじゃないもん!! バカって言う方がバカだもん!! フー君のバカ!!」
「何おう!?」
インサンは、言い争うフリードとクレナを忌々しげに睨みつけ……獅子王鋼牙を地面に突き立てた。
「調子に乗るなよクソガキ共が……!!」
「何だとこの野郎!!」
「け……剣を捨てた!?」
「後悔しろテメェら……テメェらは……この俺様を本気にさせちまったぞ……えぇ、オイ!?」
インサンの右肘から先が剣状へと変化してゆく。
「さっきまでの戦いでよーく分かったぜぇ……テメェらの戦い方は、人殺しを躊躇ってやがる……そんなヌルい戦い方で──」
“ズドン!!”
「ぐあっ!?」
インサンの眉間にキクチナの放った雷導針が突き立った。キクチナが黒い手袋をはめた左の掌をインサンに向ける。
「雷術……震天霹靂!!」
「ぐわあああっ!?」
放たれた電撃がインサンを襲う!!
「でやぁぁぁっっっ!!」
“ズバァッ!!”
「ぐはぁっ!?」
インサンに向かって突進したミナハが、真っ向から振り下ろした驚天動地による一撃が、攻撃を防ごうとした剣腕ごとインサンの右腕を肩口から切り落とす!!
「て、テメェら──」
“グサァッ!!”
「ぐふうっ!?」
クレナの穿影槍がインサンの左脇腹に突き立った。
「喰らえーーーっ!! 穿影槍ーーーっ!!」
放たれた閃光が影魔獣インサンの左脇腹を吹き飛ばす!!
「ハァッ……ハァッ……この俺様が……この俺様がこんな……ハッ!?」
インサンは、横に跳び退いたクレナの背後に立つフリードに気付いた。その右手は真っ黒に染まり、竜の頭部へと変化している。
「覚悟しろよインサン=マリート……お前は……俺達を本気にした!! 影魔獣が相手なら……俺達は一切容赦しない!!」
「なっ!? ま、待て──」
“グォアアアアアアアア!!”
インサンの言葉を搔き消すように、フリードの右手の黒王が雄叫びを上げる。
「喰らえーーーっ!! ブラックっ……キング……ナックルゥゥゥゥゥッ!!」
「ぐはぁぁぁぁぁっ!?」
フリードの渾身の拳がインサンの核をブチ抜いた。
核を砕かれたインサン=マリートは、ヨロヨロと後退った後、仰向けに倒れて消滅した。
聖剣士を 倒した!!




