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ネズミとダンジョンマスター  作者: ヨコチ=チウム
第一章
6/39

#五匹目 ダンジョン制作ちゅー止


「もうあんな社畜糞ブラック企業に戻るかよバーーーーーカ!!NPやりくりして住みやすい自宅作って一生警備員して過ごしたらぁーーー!!」


「ヂュッ!?ヂュッ!?」


俺が今後の事で心に決めた事を叫べば大声に驚いた鼠が辺りを駆け回っている。


『い、いきなりおおごえどうしたでちゅか!?』


「あ、あぁ。ごめんごめん」


すっかり鼠の事が頭から抜けており、配慮に掛けた行動に出てしまった事を反省し謝罪する。


「ん?てかお前は何でこんな狭っ苦しい場所に居るんだ?」


『ちゅ?なんでって、なんででちゅかね?』


「えぇ…逆に聞いてくるのかよ…」


それでも何故か言葉が通じるのだし、時間もあるので根気よく話を聞く。

その結果分かったのは、この鼠は餌を探して地中を適当に掘っている際に偶然この空間に辿り着き、興味が湧いて探索している内に入口の穴が消えてて閉じ込められてしまっていた様だ。


入口の穴が消えた事に関しては『search』で調べた所、ダンジョンの壁に穴が空いてしまった場合は数分で元に戻るという事だ。

恐らく原因はこれで間違いないだろう。


それと配下申請に関してだが、美味しい食べ物と水をくれた事で忠誠心が湧いたそうだ。

そしたらいきなり俺との間に繋がりの様な物を感じれる様になって会話も思念を飛ばす事で可能になったとのこと。


「へぇ、まぁ配下ってことは俺の為に全身全霊、粉骨砕身の覚悟で働いてくれるって事だよな」


『いや、かいてきなろうどうかんきょうとろうどうにみあったたいかをもとめるでちゅ』


なんか見た目は愛らしいのにさっきから結構図々しいなこの鼠。

が、独りぼっちでダンジョン制作ってのも寂しいし…

幾ばくかの葛藤の後決める。


「分かった分かった。ならこれから宜しくな。えーとディグマウス?」


『ん~それはなまえでないからきゃっかでちゅね』


まさかのダメ出しである。

どうもディグマウスはこの鼠の種としての名前であって個体名ではないそうだ。だから自分に似合った名前が欲しいそうだ。


「ハムた…」


『きゃっか』


「ミッk…」


『きゃっか』


「えぇ…良いじゃん」


『まぬけな、なまえはいやでちゅ』


確かに最近は自分の子供にペット感覚で名前を付ける親がいて子供が将来名前が原因で苦労するという話を聞いたことがある。

あまり変な名前を付けるのは酷ってものか…

てかこいつペットみたいなものじゃん。


でも、まぁ折角だし普通に考えよう。


俺が何が良いか頭を悩ませる事数分。

その間、鼠は暇だったのか前足を器用に使って毛繕いをしていた。


『まだでちゅ~?』


「うーん。ならニアでどうだ?」


『ニア…ニアでちゅか…』


先程までは速攻で却下していたが今回は一考の余地があるらしい。

その事に多少の手応えを感じつつ結果を待つ。


『うむ。なら、これからはニアとよべでちゅ』


お~ どうやらニアでお気に召してくれたみたいだ。

良かった良かった。名付けとか苦手だけど何とかなったな。


ニア。適当に冬にお世話になった肌荒れに使うクリームから連想したが悪くないな。

名前の由来とか聞かれた時は適当に良い事言って誤魔化そう。


『で、にんげんさんはなんてなまえでちゅ?』


「ん?俺か?俺の名前は…えーと……えー…」


『もしかしてにんげんさんもなまえがないんでちゅ?』


「いや、ちゃんと名前はあった筈なんだ。けど何でかは分からないが思い出せん」


先程、名前を聞かれてから記憶を探っているのだが、名前の部分だけぽっかりと記憶に空白が出来ている。

書類に書かれた自分の名前を思い出そうとすれば書類の名前の部分だけインクが滲んだ様になっていて読めない。

他人との会話に出て来る自分の名前を思い起こせば名前の部分だけノイズが走る。


その事に得体の知れない恐怖を感じつつも記憶を探る。


「だめだ…思い出せん」


『えー、ならなんてよべばいいでちゅ?』


「んーそうだな。その内思い出すかも知れんし、今の所はナナシ(名無し)とでも呼んでくれ」


『わかったでちゅ』


そう言ってニアは首を縦に振る。


「さてと、ニア。どうやら俺はダンジョンマスターとかいう職業に転職してしまったらしい。んで、その仕事内容がダンジョンを作る事らしい。早速だが協力してくれるか?」


『だんじょんまちゅたー?だんじょんってなんでちゅ?』


「まずそこからか…」


会話が成立しているとはいえ、ニアは元々鼠。

漫画やアニメで予習を済ませている俺と違って分からないのは当然か…


その事に思い至った俺はニアにダンジョンとは何か事細かに伝えて行く。

ダンジョンとは別名『迷宮』等と呼ばれ、金や銀、宝石といった宝物を餌に人間を呼び寄せ、ダンジョンに立ち入った人間は財を求め、時に宝を守るモンスターと戦い、罠を乗り越え己の願望を叶える場所だと。


「うむ。つまりダンジョンに人間を誘い込んで倒してポイント集めて、そのポイントでダンジョンどんどん拡張して行くって訳だ」


『ほーん』


頑張って説明したがニアの反応は微妙だ。

どうしたのか気になり聞いてみるとニアは自論を述べ始めた。


『なんでわざわざにんげんなんてよびよせるでちゅ?もんすたーのかんりもわなをつくるのも、たからをよういするのもめんどくさくないでちゅか?』


「確かに」


『にんげんさえこなければへいわにのんびりくらせるのにナナシはばかでちゅ?』


ニアは可愛い顔で首を傾げながらそう問うてくる。


「いや…その…え…と。はい。ニアさんの仰る通りかと」


何故か只の鼠に言い負かされるとは思ってもいなかった。

しかし、ニアの言っている事は最もな気がする。

わざわざ見ず知らずの奴等の為にダンジョンを作る。

それって凄く面倒臭いではないか。

しかも俺が作ったダンジョン(自宅)に踏み入って来るとか普通に不法侵入だし。


あれ?そう考えるとダンジョン作るのって無駄じゃね?

なんか漫画とかでもダンジョンってモンスターが出てきて危ないからぶっ壊さないとみたいな作品多かったし…あれ?


そこまで考えた所で俺は口を開く。


「ダンジョン作るのやーめた!」


『うんうん』


さっきまでどんなダンジョンを作ろうかと、ダンジョンの構造や罠を考えて想像を膨らませていたが一気にやる気が失せた。

ダンジョン制作を取り止めたらする事が無くなってしまったので暇になる。


「ニアはなんかしたい事とかあるか?」


暇だったのでニアに何となくそんな事を聞いてみる。

パンの残りに顔を突っ込んでいたニアはその言葉に反応して顔を上げる。


『ニアはおうさまになりたい』


「はぁ?王様?」


ニアがそんな事を言うものだから鍵を振り回すアイツが脳裏に浮かぶ。


『ニアたち、ねずみはいつもがいてきにおびえながらくらしてるでちゅ。だからニアたちがあんしんしてくらせるばしょがほしいでちゅ。で、ニアはそこのおうさまになってみんなからあがめられてちやほやされてはーれむでうはうはでちゅ』


途中までは良かったのに最後の方は欲望の塊じゃないか。

でも、ニア達鼠は食物連鎖的にも殆ど最下位に位置するし、人間からは害獣として殺処分の対象だもんな。


そう考えると鼠達が可哀想に見えてくる。


それと同時に鼠達の楽園を作るのが楽しそうだとも思う。


「よし、決めた!ダンジョン制作は辞めて、鼠たちの楽園を作るぞ!」


『おー!』


作ってやろうじゃないか。この小さき友(ニア)の為にも、そして何より楽しそうだし!


ダンジョン制作?あれは嘘だ。


今週は80時間越えの労働で融解。

でも日曜だけは休みなので更新!

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