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ネズミとダンジョンマスター  作者: ヨコチ=チウム
第一章
31/39

#二十九匹目 地底湖


「ぽぇー」


『ぽぇー』


『ぽぇーっす』


『ぽぇーです』


「「ちゅー」」


これが俺達全員の感想である。


まさに語彙力の敗北。


少し時間は遡る。

ニア達が密室の謎を推理とか殆ど関係無くゴリ押しによって解明した結果、岩の向こう側の空間へと繋がった。


穴を潜った先の真実を知るべく俺達は進んだ。


そしてこの感想である。


まぁ、簡潔に言ってしまうと巨大な湖が広がっていた。


ただそれだけの事なのだが、この光景には如何せん迫力があり過ぎた。それ故の語彙力の敗北である。


穴を抜け圧倒的な湖の広さと綺麗さ夜空の様に天井に散りばめられた光る何かに目を奪われるが、それだけでは無かった。


俺から見て右に湖が広がっているのだが、左と床は明らかに人の手が加えられた痕跡。即ち整っているのだ。


パッと見だが今居る場所は何か人工的な建造物の外縁部、テラス的な位置では無いのかと瞬時に悟る。


マージ達が普段滅多に人は立ち入らない等と言っていた森の更には深さ一キロ以上の地点。


明らかに異常だ。


昨日拾った白骨死体の手記にエレノア翻訳が正しければ"探索"という単語が出ていた。

つまりは彼等はこの謎の建造物を探索だか調査に来ていたことになる。


『ナナシさん』


「どうした?」


感動から立ち直ったのかエレノアが振り返る。


『頭の中身のない私の勘など頼りにならないかもですが…非常に嫌な予感がします。これ以上進むのは危険かと』


「いや、そればっかりは同意だ。先駆者さんは白骨死体になってるしな」


もっと近くで見たいと喚くニアを捕獲しながら答える。


『ナナシさん一つ試したい事があるんじゃけど良いかな?』


「ん?どうかしたのか?」


今度は俺もよく分からないキャラクターのTシャツを着たスケルトンが聞いてくる。


危険かもしれないから全員少し離れて欲しいと言われ、何をするのかと問えば穴から十メートル程先の床に違和感を感じるらしい。


俺含め他の全員は疑問符状態ではあったが、普段キャラT君がタチの悪い冗談を言ったり嘘を吐く様な性格でも無い為信じてみる。


そして、全員が離れた事を確認したキャラT君は手頃な石を拾うと違和感があるという床に向けて投げた。


投球センスに恵まれた彼の石は狙い違わず飛んで行き違和感の出処である床へと当たる。


硬いもの同士の衝突音が響き渡り、違和感は違和感のままでは終わってくれなかった。


衝突と同時に衝突地点を中心とした半径一メートル程の床が白く輝き始め、瞬時に臨界を迎える。


一際輝きを放つと小規模な爆発が起こり、全方位へ粉塵と細かな礫を吹き飛ばす。


俺達は下がっていたから特に被害は無かった。

キャラT君も小石が当たった程度ではどうもないらしく頭蓋骨が小気味良い音で弾いている。


『罠だったみたいじゃな』


「えぇ……」


今の光景を見て俺達全員、ニアですらこの先が危険だと思い知る。


「異世界の罠殺意高過ぎと違います?」


『私は…似たような物を知ってます』


そう言ってエレノアは語り出す。


最近朧気に思い出した記憶の中で見たらしい。


人間同士の紛争地帯。名前は忘れたが憎しみと怨嗟が飛び交うそんな場所で彼女は見たらしい。


敵へと向かう兵が突如として地面が輝いたと思うや否や爆発と共に吹き飛び血や臓物を撒き散らし一瞬にして絶命する様を。


それを聞き脳裏に地雷を思い浮かべると共に、彼女エレノアは生前一体何者だったのか非常に強力な疑問が浮かぶ。


が、そんな事は今はどうでも良い。

兎に角此処が危険だと分かった今長居は無用。


三十六計逃げるに如かず。


対策は後程考える事に取り敢えずは地上へと帰還する為全員に声を掛け帰路に着く。

全員が穴に湖に背を向けた時、背後より聞こえる巨大な爆音に振り返る。


そして目に入るのは湖の水が飛沫となり広範囲へと吹き飛ぶ光景。それと同時に湖に消える巨大なシルエットが目に入る。


何か巨大な生物が湖の水を跳ね上げたらしい。


どうにも異世界は俺の予想を超える危険で溢れている、


早急な対処が求められるかもしれない。


"今のは何か"と盛り上がり興奮を隠せないネズミ達。

魚だとか化け物だとか好き勝手に予想を述べては楽しそうにしている。


楽しいなら何よりです。





結局、白骨死体の謎は解けたもののそれ以上の解明は断念し帰還した。


とはいえ得た物は多く。新種の鉱石等の天然資源を三種。

危険な謎の人工物と綺麗な見た目に似合わず同じく危険と思われる地底湖の存在。


この三点の収穫についてや今後の方針について今日は自宅にて皆で会議する事にする。


精神的な疲れから今日は仕事する気分でも無いので、家でのんびり話し合いでお茶を濁すという訳です。


全員で茶と菓子を堪能し寛ぎながらも話し合いを行う。


「んーと、まず我が家の財政状況は森での豚さんと犬さんが支えてくれているのでやや右肩上がりです」


雰囲気作りの為白紙のA4用紙を片手に報告する。


『『お〜』』


「なので、今の所地下にて保管されているニッケルに関しては継続して貯蓄。新たに見つかった紅銀鉱と銅鉱石とへマームに関しても採掘し精錬し貯蓄したい。けど、銅とへマームはさて置き紅銀鉱が非常に堅い。ツルハシでもネズミ達の歯でも中々砕けない程に誰か妙案があればどんな案であれ言ってくれ」


『はい!はいっ!』


早速とばかりに前足を挙げるニア。


「良い案が浮かんだのか?」


『うん!これはね非常に画期的でかつアドバンスでイニシアティブでハラスメントな…』


「ニア、無理矢理賢そうな単語を並べるな」


あと意味が滅茶苦茶だ。


『兎に角今日見た爆発があるでしょ?あの爆発力を応用すれば多分紅銀鉱も吹き飛ばせると思う』


ニアはてっきりお馬鹿の子かと思っていたが実は賢いのかもしれない。

今日見たあの爆発からそこまで考えれるとは。


しかし、方法としては良い案ではあるがリスクとコストが成果に見合いそうに無い。


その事を伝えればニアはガックリと項垂れる。

取り敢えず案としては良かったので褒め他の人の案も聞いて行く。


"強力なツルハシに変える" "気合いで頑張る" "俺が何か凄い物を出す"


等とちらほら意見は出た物の良い案は出て来ない。


『はい』


「ん、イヴ」


『わたし達なら出来るかも』


そう言って自己主張とばかりにぽよんぽよんと跳ねるイヴ。

頭には今日プレゼントした麦わら帽子。非常に愛らしいです。


『やってみないと分からないけど鉱脈を直接精錬して行けば掘らなくて良いかも』


それを聞き頭の中で考える。


鉱脈の石の部分は溶かし必要な金属部分だけを残す。


理論上は問題ない。しかしニッケル鉱脈の大きさを見た経験上、目の前のイヴだけでは効率が悪いし、何より仕事量が多過ぎる。


ただでさえ現在頼んでいるニッケルの精錬ですら、追い付いていない状態なのだ。

これ以上の過労は不味い。


「イヴ、今までの中で一番良い案ではある。けど、その案で行くと二人に掛かる負担がだな…」


スライム達はNP的には安いのでモンスターストアにて大量に発注するかと考える。


『大丈夫。許可さえあれば増えれる』


「え?増え…れる?」


本人曰く、スライムという種は分裂によって増える事が可能なそうで必要な物は多少の魔力を含んだ水が有れば問題ないらしい。


アダムもイヴも増えれば問題ないと言うし増える事も問題ないと申すのでイマイチ訳の分からぬままに許可を出す。

まぁ、本人達にとって増える事は嬉しい事らしいので気の向くままに頑張って欲しい所存。


「まぁ、天然資源の採掘に関してはアダムとイヴの二人に一任する。二人は何か要求とかその他諸々があれば都度言ってくれ」


『『はーい』』


実に愛らし頼もしい。


「で、次は謎の遺跡と地底湖に関してだが。……どうしよう?てか、あれなんぞ?」


『謎ではありますが、先程の爆発や水飛沫を見た限り間違い無く危険な為近寄るのは避けるべきかと』


実にオルガらしい慎重で堅実な良い意見。

俺も同じ事を言うつもりだった。


『ニアはあの中に凄いお宝隠してると思うなぁ。湖には番犬、遺跡には罠で守ってるんだと思う!』


犬…?


湖の中に犬は居ないと思うが、言っていることには賛同出来る部分もある。


確かにこんな地下深くに人工物ともなれば何かあると勘ぐってしまう。


これがゲームであれば死んでもアイテムぶちまけて復活したり、所持金落としたりデバフ付いたりするだけで生き返るからゾンビアタック出来るんだが。


しかしこれは現実。死んだら元も子も無いしなぁ。


『湖は綺麗だったっすね』


『"美しい物程死に近い"この諺は貴方でも知っているでしょうに』


『ん?俺の地方では聞かない諺っすね?』


『えっ?知らないんで?』


この世界にも諺は存在するらしく、諺談義で盛り上がるスケルトン達。


ネズミ達の意見なんかも積極的に聞いて行き全員の意見を総合し、良い着地点を思案する。


第一に安全で、それでも遺跡の謎は知りたくて湖も行ってみたい。そんで今日の夜は魚が食べたい。もし、化け物が封印されてたら怖い…etc.


となると、現状のメンバーの中に適した人材は見当たらない。

俺の考えではこれら全ての条件を満たすのは魚が捌けて、どんな罠も効かず、湖の巨大謎生物にも封印されし化け物にも屈する事の無い屈強なる戦士が必要だ。


となると中々の難題である。金銭的にも選考にも一朝一夕では行かまい。


唯一の救いと言えば緊急性が無い事。

遺跡は逃げる事は無い。


なので、取り敢えずの所遺跡と地底湖に関しては危険なので現状は進入禁止として、地下への掘削を優先とする。


その有無を全員へと伝え、いつか全員で地底湖観光をしようと約束を交わす。


「そんな訳で明日からも更に地下に向かって頑張るぞ」


『『『おー!!』』』「「「ちゅーー!」」」

ちっすちっす

書くだけ書いて投稿サボってたんで連投しときま


あと次は閑話を適当に挟む予定です


多分

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