#二匹目 ちゅートリアル2
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ぼーっとしている内にいつの間にか眠ってしまっていた様だ。
さて、あれから何時間程経っただろうか?
スマホを見れば今は月曜日の昼の十一時。
前回スマホを開いた時に時刻を見ていなかった為、何時間経過したかは不明だ。
しかし、一つだけ明確に分かることがある。
そう今日は月曜日。つまり会社に出勤していなければならない日だ。
まぁ、何というかお疲れ様って感じだ。
連絡すら入れず無断で欠勤。過去に同じ事をして首が飛んでいった後輩や同僚を見ている為か自分もそうなるのだろうとすぐに予想が付く。
上司は頭が硬くて、理不尽な怒りをぶつけてくるのは当たり前。会社のノルマをこなすのは定時までには物理的に不可能。残業は必須で、更に上司が投げてくる仕事までやるとなれば毎日深夜を越えるのは毎度の事。
俺には夢…なんて大層な物では無いが目標があった。
その為には金は幾らでも必要だった。
幸い俺の居た会社は金払いだけは良く、過酷な残業で身体を削り、狂った上司に媚びへつらって心を削れば同年代の収入より多く収入を得られた。
だから俺は耐えてきたのに…
だが今となっては泡沫の夢だ。
こんな四方八方岩肌だらけの空間に閉じ込められてかれこれ二十四時間は経過した。
出口と思しき物は一切無いし隙間一つ存在しない。
スマホは何の役にも立たない。
はて、二十四時間?
何か腑に落ちない。
俺はこの完全密封空間に二十四時間以上は居る。
なのに何故、酸欠に陥らない?何故腹が空いていない?何故生理現象が無い?
昨日の今朝方に酒と軽い物を摘んでからは何も口にしていない。トイレも行ってなければ漏らしてもいない。
謎だ…
酸素に関してもそうだ、この部屋の天井は俺の身長より少し高いくらいで広さは凡そ十畳。
一日中呼吸をしていれば酸素が完全に無くならないにしろ呼吸は苦しくなる筈だ。
なのに今現在苦しさは微塵も感じない。
何にせよいずれ限界は来る。
親元を離れて暮らしているし、会社の奴らもわざわざ無断欠勤くらいで心配して訪ねてくれることも無い。
彼女なんて、概念すら存在しない。
つまりは消えた所で誰かが気が付くのは早くても一ヶ月。遅ければ三ヶ月か半年単位で掛かるだろう。
まぁ、今の俺には何も出来る事は無い。諦めてのんびり過ごすか。
そう結論付けると、着ていた上着を枕に横になる。
今までは残業ばかりでまともに寝る事も出来なかった。だからする事の無い今、思う存分寝るにはこれ以上無い状況である。
それから更に五十時間程眠った。
五十時間眠り続けていたのに何故か、まだ寝ようと思えば眠れそうだ。
普通ならこんな柔らかくもない岩肌で寝れば身体の節々が痛む。
そして相変わらず、空腹もなければ生理現象、酸欠も無い。
勿論、閉じ込められている現状に変化も無い。
「どうなってんだか…」
自分は既に死んで今は死後の世界なのでは?
なんて想像もしたが、そもそも死後の世界や神の存在を信じていない俺からすれば冗談だと一蹴してしまうだけで終わった。
果てなき思考を続けていると、とある答えが浮かんで来る。
此処は異世界…なのではないか?
当然、神や仏を信じない俺は異世界など信じない。
だがあの日立ち寄った店の事が気掛かりだ。
考えてみれば、普段会社から自宅までの帰り道にあの様な店は無かった。
つまり湖畔の夢等という店を見たのはあの日が始めてだ。
それにあの日が初めてのオープンという割には店内は年季が入っていた。
極めつけはあの時飲んだ酒だ。
確かあの酒の名前は、【異世界】
「馬鹿馬鹿しい…」
そこまで考えたが、そんな事は有り得ない。
ただの妄想だと振り払う。
カサカサッ…ガサッ
なっ…!?
突然そんな物音が聞こえ俺は身構える。
音が聴こえたのは、レジ袋を置いている場所からだ。
ガサッ…ガザガサガサ
息を潜め、音立てない様にその場で固まっていると更に物音が大きく聴こえてくる。
なんだ…?何かが居るのか?この前室内をくまなく調べ尽くした時には虫一匹居なかったが…?
虫は嫌いだが、何かが居ると分かった今無視する事は出来ない。
取り敢えずはソレがレジ袋に夢中になっている今が好奇だ。
気持ち悪い虫であれば安心して寝れないので速攻で潰す。
俺は覚悟を決めると音を立てずに立ち上がると、スグそこのレジ袋へとゆっくりと忍び足で近寄る。
俺の居た位置からはソレの正体が見えない為、反対方向に向かう。
移動するにつれ、徐々にレジ袋を漁る存在の正体が見え始める。
始めは細くてゆらゆらと揺れる何かが、次第に体毛が見え始め、最後にはくりくりした眼と丸くて体躯の割には大きな耳が見える。
薄暗くて色までは見えないが、ソレは鼠だ。
普段生活をしていて実物を見るのは初めてだが、間違いない。
先程からの物音は、こいつが何故か夢中でレジ袋に頭を突っ込んでガサゴソやっていたからだったのか。
虫であれば容赦無い一撃を持って葬るが、鼠はどうにも愛らしい。潰すにはどうにも情が湧いてしまう。
等と鼠を見ながら考えていると、鼠の耳がピクピクッと反応し、鼻をスンスンと鳴らしたかと思えばこちらを振り向く。
「あ」
鼠は完全に俺に気が付いたのか、こちらを直視している。というか目が合っている気がする。
「チュー」