#二十七匹目 みっしちゅ
五つの班に分かれて探索を始めた訳だが、
『ふぉーーう』
「はしゃぎ過ぎかて」
早速班分けを誤ったと反省する。
とはいえニアの面倒を見るのは他のスケルトン達には荷が重いと思うし仕方無い。
「にしても広いな。自然物だとしても何が原因なんだか」
『さぁ〜?』
考える俺とは違いニアはそんな事は全くどうでも良いとばかりに悪い足場を駆け回っている。
ここは異世界である為、地球の常識が当て嵌るのかは分からないが地下水が原因とかそんな感じだろうか?
ん?そういえば前に穴掘りが得意な魔物とか調べた時、キモいクソデカワームとかおったな。
『モンスターストア』にて販売されていた魔物は当然この世界にて存在している。
つまり、その空洞は地下水の浸食とかによるものだな。うん。
非常に恐ろしい想定が脳裏を過ったが無理やり修正しておく。
『ナナシ見て見て〜』
「どした」
先行していたニアに呼ばれ向かってみれば、そこは壁面であった。
ゴツゴツした壁面がどうかしたのかと首を捻る。
『ここ!』
尻尾の懐中電灯で照らしニアが指さす場所を見ればそこは光を反射し輝いていた。
「お?」
俺も懐中電灯を当て全容を確認する。壁面と地面の両方に被る様にして光る線状の何か。
近付き詳しく観察し、それが金属質である事が判明する。
『お宝?お宝?』
「鉱脈?これはそうかもしれない」
『いぇーい!ひゃふぅぅう!ニアの勝ち!』
何を誰と競っていたのかは定かでは無いが、本人は非常に喜んでいらっしゃるのでそのままにしておく。
銃と共に背負っていた鶴橋を取り出し、取り敢えず一振。
静かな空間内に破砕音が響き渡る。
何事かと聞いてきたスケルトン達には鶴橋を使った事と問題ない事を伝え、今しがた鶴橋を叩き付けた地面に目を落とす。
懐中電灯を当てて目を凝らすが、鉱脈は無傷でその周囲の岩が砕けただけであった。
「硬いなぁ」
その後も何度か鶴橋を叩き付けたが多少の傷が入る程度でなかなか上手くいかない。
まさか、鶴橋のグレードが足りないだと?ダイヤのピッケル持ってこい。
『お困りのようだね?』
「あなたは!?」
『ニア・ホームズじゃよ』
「いや、誰だよ」
どうやらこの前、皆で一緒に見たシャー○ック・ホームズの影響を受けているらしい。
が、彼は謎解き専門であって困ったら兎に角でしゃばってくるおっさんではないぞ。
『まぁまぁ、任せたまえ』
そう言ってニアは鉱脈に近寄ると顔を近付ける。
『んががっ、硬っ!?んががぁっ!!……はぁはぁ』
うん。これ知ってる。ケージを齧るハムスターだ。
「謎は解けたかね?ホームズ君」
『これは…非常に難事件だよワトソン君。が、手掛かりは得た』
『不味』という言葉と共に吐き出される一欠片の何か。
『見てよナナシ。自慢の歯が少し欠けたぁ』
見れば確かに前歯が少し欠けている。
まぁ、ネズミって常生歯っていうし大丈夫でしょ。
「とはいえ、お手柄だぞニア。これで謎が解ける」
『後で皆には内緒でお菓子ちょうだい』
「お菓子はあげるけど皆で仲良く食べなさい」
『ちっ…交渉失敗か』
欠けた歯をどうにか付けれないかと四苦八苦しているニアを尻目に早速先程ニアが吐き出した金属を調べる。
なんかベタつくのでハンカチで拭いてから光を当てて見た。
「おー?赤い?ルビーかな?でも違うような?」
まぁ良いか。スマホで調べれば早いと思い出し早速確認。
『紅銀鉱 159NP』
「わったふぁっ!?」
『おお?』
こんなちょこっとでこの価値。そして、聞いた事も無い名前。
銀という事は分かったが紅銀とは一体。
『どうだった?お宝?』
待ちきれないとばかりに結果を急ぐニア。
「これは…凄いぞ」
『どのくらい!?』
「この欠片一つでクルミパン一個半買える」
『…』
無言で欠片を見つめ欠片と鉱脈に首が行ったり来たり、そのまま勢い良く鉱脈に齧り付き始めた。
こいつ…金に目が眩んだか。
『んごごがががぁ!』
「はいはい、次行くぞ」
鉱脈に張り付いたニアを持ち上げ強制的に連行する。
『あぁぁぁ…ニアの…』
紅銀鉱脈に向かって伸ばす前足は虚しくも空を切り、洞窟内に悲しい鳴き声が木霊した。
その後一時間程の調査を終え、それぞれの班からの報告を受ける。
結果この洞窟内にニアの見つけた紅銀鉱脈の他に銅鉱脈とへマームとかいう名前の所々白く濁った透明の石の層を発見した。
まぁその辺の物に関しては後に詳しく調査するとして、今は目の前のこれが先である。
「エレノア…」
『ぷははっ、あ…でも兄貴バレたらぶっ飛ばされますよ』
「ワロタシガニ」
場を和ませる冗談が数名に受けた事は喜ばしい。
というのも目の前の此奴が元凶である。
俺とは反対方向に進んだ班が発見し一度全員が駆け付けた物、それは白骨死体。
始めスケルトン達のうちの誰かが何らかのアクシデントにより倒れたのかと思い血の気が引いた訳だが、人数は揃っており皆無事だった。
そのことに関しては本当に良かったのだが、この白骨死体はなんぞやという事になる。
『事件の匂いがする…』
いつの間にか用意していた石製の煙管を咥えたニアが意味深気に言っているが無視する。
うつ伏せに倒れ地味な色合いの服を着用しているのだが、服は結構な年月が経過しているのか劣化が激しい。
もう少し情報が欲しいので、保険も兼ねてスケルトン達全員と共に検分する。
その結果得られた情報は以下の事。
まず、骨格的に被害者は男性。死因を調べる為全身を調べたが骨に異常はなし。
となると刃物や鈍器による殺害の線は薄い。
つまり死因は毒や病気の可能性が高い。若しかすると窒息死も有り得る。
次に被害者の持ち物。
胸元に変な模様の刺繍がされたクソダサ衣装。
服のポケットに入っていた数枚のコイン。
同じくポケットから出てきたよく分からない乳白色の丸い石。
それと、金属製のボトル。
あとは近くに落ちていたロープと薄めの本。
恐らく同人誌か手記のどちらか。
あと知らない形状のペンらしきもの。
以上
それらの情報をスケルトン達が頑張って集めてくれた。
俺は白チョークを買って死体の周りを囲うので忙しかったのです。
決して不衛生とか汚いとかそんな事は全く、ええ本当に。
「ふむ…」
『ナナシどの、彼は何故こんな所で一人朽ち果ててるのでしょう?』
オルガが不思議そうに尋ねてくるがその通りなのだ。
此処は一時間程調べた所、俺達が繋げた穴以外に入口は無く密室。
しかもこんな地下深く。
恐らく行く先々で悲劇を巻き起こし解決してはエクスタシーを感じる某眼鏡少年ですら遭遇した事もない稀有なケースの事件である。流石異世界。なんでもありか。
異世界の事件の難易度の高さに驚くと共に脳を頑張って働かせる。
「ふぅ…」
『まさか、もう分かったんで?』
スケルトンが驚愕と共に聞いてくるが当たり前だ。
直ぐにピンと来たね。
「迷宮入りです。以上!解散!」
『でしょうね』
いや、分かるかこんなもん。多分あれだよ彼は度を超えた夢遊病患者に違いない。
多分度が過ぎて地下一キロ地点まで迷子ってしまったんだろ知らんけど。
『あっれれ〜?』
「よすんだニア」
『だってここ見て?ここなんか白いよ?』
『「確かに」』
ニアが示す場所は確かに部分的に白くなっており他の壁とは異なっていた。
『原因はこの石ですかな?』
そう言ってオルガが死体のポケットに入っていた乳白色の石を撫でる。
乳白色の石の形状は球体なのだが、部分的に傷が多く欠けていた。
つまり…
『この人はこの石を此処に打ち付けたんじゃないかな?』
ニアに考えを先に言われてしまったが、恐らくその通りかと。
現に今壁に打ち付けて試してみたが同じ様に少しだけだが白くなる。
『一回でこの程度の白さ…つまり彼は相当な回数壁を殴っている。これはメッセージだ!事件はまだ終わっていない!』
「「チュチュッ!?」」
うん、まぁ始まってすらないけどね。
でも確かに言われてみると、壁のこの場所を徹底して叩いている。
他の壁と違いがない様に見えるけど、彼は壁のこの場所に何かを見つけたのだろうか?
さっぱり分からないが、ニアやオルガ達は乗り気な様で推理ごっこが始まっている。
ネズミ達は皆がホームズらしい。
スケルトン達は彼らの手足、助手のワトソン君だそうだ。
『ワトソン君これはなんだね?』
『んー?読めないっすねぇ。俺らの住んでた場所の文字じゃないっすね』
今は持ち物の手記に何か手掛かりが無いかと解読作業をしているらしいがワトソン君は全滅。
『ナナシは?分かる?』
目を落とせば日本語でも英語でも無い知らない文字。
というか、文字にすら見えん。気でも狂って適当に書き殴ったと言われてもおかしくない程の汚さである。
「分からん」
『そっかー』
「取り敢えず皆、今日は一度帰るぞ。そろそろ時間だし」
『えーもうちょっと遊びたかったなぁ』
「また明日な。なんならその本持って帰ってエレノアにでも見てもらえば良い。読めるかもよ」
『確かに』
そして、手早く仕度を済ませ帰ることにした。




