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ネズミとダンジョンマスター  作者: ヨコチ=チウム
第一章
20/39

#十九匹目 ふぁっちゅー


翌日、仕事は休みという事もありお昼の少し前まで爆睡した。

やっぱり休日は最高である。

まぁ、エレノアに怒られたんだけど。


そんな事より今日は家である。

一箇所に集まり何やら話していたオルガ達に皆を集める様に伝え、地下に遊びに行っているという面々を呼びに行ってもらう。

数分して全員が集まり、本題を切り出す。


「家を買います!!」


俺の宣言に皆一様に疑問符を浮かべる。

エレノアに関しては顎に手を置き"こいつまだ寝惚けてんじゃね?"と言った感じの仕草を取っている。

いいえ私は正気です。


なので一応軽くは伝えていたが、もう一度地上の穴の周辺を結界で覆い安全地帯を作った事とオークを一体仕留めた事を伝える。


オークを仕留めた事が改めて俺の口から事実と告げられ半信半疑だったのかネズミ達からは歓声があがり、スケルトンからは拍手喝采である。


『ふぁっちゅーふぁっちゅー!』


ニアは後でお仕置きとして、歓声が止むのを待ちその後詳しく説明をする。俺も一応人である為、ちゃんとした生活環境が必要だという事。皆にもプライベート空間。つまり家を用意するという事。

それを聞いたネズミ達やスケルトン達からは喜びの声が巻き起こる。先程のオークの時の歓声にも負けず劣らずだ。皆元気があって何よりです。


取り敢えず俺は買う家を決めているので皆で地上へ向かう。

万が一があってはならないので俺は勿論武装済みだ。


『エレノアちゃん運んで〜!』「ちゅう!」「ちゅう!」


『はい、いいですよ』


エレノアはニアや他のネズミからモテモテな様で数匹のネズミを抱き抱えて歩いている。

本人も声色的に満更でもない様子。

なんだかエレノアの方が人気で少し悔しい。母性が足りぬのか母性が?まぁ、俺には可愛い可愛いアダムとイヴが居るので問題ない。


『ぼくも』『わたしも』


腕の中に居たアダムとイヴがもぞもぞ動いたと思えばポヨンポヨンとエレノアの元へと行ってしまった。


なんでや……


坂道は上へと上がったが俺の心は下へと下がり、やがて地上へと辿り着く。

まだ結界を見た事の無かった面々は青白い透明の結界に興味津々で慎重に指で触れようとしたり、結界の外に出たり入ったりを繰り返している。

それに加え久しぶりの地上が嬉しいのかそこら中を走り回っている。


「結界の外は危ないから勝手に出たらダメだぞ〜」


そう注意しつつ、それでも心配だったのでスケルトン達やオルガに気にかける様に伝えておく。

ニア?あいつは一番勝手に出そうなので俺が直々に見張っているので問題ない。

出来ることなら首輪を着けておきたい位だ。


『ね〜ね〜ナナシ~!どんな家買うの?城?寺?』


「んー?ログハウスっていう木製の家だぞ」


ニアの質問に返答しつつスマホをポチポチ操作する。

てかなんで候補が城か寺なの?

まぁ百聞は一見にしかずと言うやつだ。

皆に穴の近くからは離れてもらいスマホの画面を見る。


『購入しますか?』『はい』『いいえ』


最後に一度深呼吸をし、『はい』を選択する。


もう聞き慣れた鈴の音と共にスマホで指定していた地面に変化が現れた。地面に幾つも小さな双葉の芽が生えたと思えば早送りの様に成長していき一瞬で若木に、そのまま大木へと育ち丸太へ板へと早変わりし、気が付けば立派な一階建てのログハウスが建っていた。


ありのまま今起こった事を状態である。

つまり何を言っているのか分からないと思うが俺も何が起こったのか分からない。つまりそう言うことだ。

その間わずか数十秒の早業であり驚愕である。


現に俺以外の皆も口を半開きにして間抜け面を晒しているのだから。


『凄い!凄い!ナナシもっかいやって!もっかい!』


衝撃からいち早く立ち直ったニアが足元で俺のズボンの裾を引っ張りながらそう言うが無理寄りの無理である。


「無理無理。家ってのは高いんだぞ?今日からご飯が雑草になっても良いってんならもう一回やるけど?」


そう言ってニアへと意地の悪い笑みを向ける。


『あっ、なら大丈夫です』


手のひらクルンクルンの球体関節かよ。

あまりの心変わりの速さに思わず心の中で突っ込んでしまう。


にしても驚いた。家なんて大きな物がどうやって配達されるのか疑問には思っていたがこれは予想外である。まぁ、ダンボールで届いていたのならそれはそれで困っていたんだけども。


取り敢えず立ち直った面々を連れて住宅見学だ。

まぁ、見学も何ももう購入しているのでお披露目と言った方が正しいかもしれない。


外観は平屋のログハウス。中は近代的な内装という事もなく外装と同じ木製であり、木製ならではの暖かみを感じられる作りとなっている。

間取りも俺好みのシンプルなもので、玄関を入ってすぐにリビング。その奥にキッチンがあり玄関から見て左側にバス、トイレ、クローゼット等の収納と言った感じだ。右側には大きめの窓が幾つも取り付けられており取り入れられた日光が室内を明るく照らしてくれ、尚且つ開放感を生み出している。


そしてお値段はなんと約890万NP。

現代家屋程高価では無いにしろ収入の殆ど無い現在においては、かなりの出費だ。

スライム換算で約127万匹。ニア達の好む菓子パン換算で約8万9千食分。まぁお高い。

だが必要経費である。致し方無し。


ネズミ達は初めて見る物に興味津々な様子でフローリングを駆け回ったり、カーテンをクライミングしたりと楽しそうだ。

エレノア含むスケルトン達は最初から備え付けられている机や椅子に興味がある様で触り心地や座り心地を確かめている。


そう言えばニアが見当たらない事に気が付き辺りを探せば、コンセントの穴へと手に持った自分の尻尾を突っ込もうとしていた。


「ダメ、ぜったい」


急いで摘み上げホッと一息付く。

実際の所電気が通っているのかは不明であるがニアがスケルトンになってからでは遅い。

電気ガス水道云々は後で確認するとして、取り敢えず皆にはコンセントには触れない様にと伝えておく。


見る部屋も殆ど無いのでさっさと部屋の確認を済ませると今度は『Nショップ』からある物を取り寄せる。


取り寄せたのは『ドールハウス カタログ 2018年版』だ。

なんと嬉しい事に資料請求はタダなのです。

なのでネズミ達の匹数分のカタログを配達してもらった。貰えるものは貰う派なのである。


鈴の音と共に届いたダンボールを慣れた手つきで開封するとネズミ達に渡していく。


「ちゅ?」「ちゅちゅ?」


『ナナシ殿これは?』


ネズミ達の疑問をオルガが代表して問うてきたのでネズミ達に向けて簡潔に説明する。

俺だけ家を買うんじゃなくてネズミ達にも家を用意する事。

ドールハウスなら今しがた購入した俺の家よりもかなり安いからご飯が雑草になる事は無いという事。

この本には見本が載っているから自分達の好きな家を選んで欲しい事。


説明を最後まで聞き終える前に我先にと家選びを始めたネズミ達を見届け、次はスケルトン達だ。


が、しかし少しばかりと言うか凄く問題がある。

スケルトン達は普通の人間サイズな訳で、ニア達の様にドールハウスという訳にはいかない。

サイズ的に俺達人間と同じ家が必要になってくる。

すると様々な問題点が出て来る訳で、まずは場所の問題。

現在結界の広さは二十メートル四方だ。そして、俺の購入したログハウスがその大半のスペースを使っている。残っているのは庭くらいの広さしか無い。

配置出来るとすればワンLDK(犬小屋)が限界である。

結界を広げるにしろ、新しく結界の燈を買う必要が出て来るだろうし、森の木が邪魔になってくるだろうから撤去する手間も掛かる。因みに俺の家を建てた結界内部にはあの謎の茄子の木しか生えておらず、しかも場所的にも結界の隅なので問題が無い。

他にもNP的な問題もある。今回の件でNPをかなり使っている。

今まではちょっと値の張る買い物程度だったが今回は違う。

へへっ、今のはかなり効いたぜ……!的な感じだ。兎に角スケルトン達の家を用意するのは少し厳しいと言いますかゲフンゲフン。


あーネズミ達に家を買うと言った手前スケルトン達に伝え辛ぇ。

もう、いっその事犬小屋で良いか?


そうやってスケルトン達に渡そうと思っていたカタログを手元に悩んでいると、肩に硬い感触が走る。

意識が遠くに行っていた為、内心凄く驚いていたのだが驚きの余り逆に表情等には出なかった。


振り返ればスケルトン達が並んでおりこちらを見ていた。


「あーその…勿論、皆の分のカタログは用意している」


そう言って手元のカタログの表紙をスケルトン達に向ける。

カタログを向けたままの姿勢で停止すること数秒。

どう切り出そうか悩んでいるとエレノアの声が脳に響く。


『ナナシさん』


「…はい」


『そのカタログという物は是非拝見させて頂きます。ですが購入というのはまた別の機会で問題無いというのが我々スケルトン共の意見です』


「えっ、でもネズミ達には用意してスケルトン達に用意しないってのは…不公平と言いますかなんと言いますか」


『大丈夫ですよナナシさん』


優しい声色で諭す様にエレノアが言う。

何が大丈夫なんだ?と心の中で首を捻る。


『ナナシさんが何に悩んでいるのかは大体察しが付きます。ですがどうかお気になさらず。我々は悠久を彷徨う者、私達は何時までも待っていますから』


虚空を見上げつつ気障っぽい台詞を吐いたエレノアは言う事は言ったとばかりに外に向かって去って行く。


そう、室内へと明かりを取り入れる為に取り付けられた大きなガラス窓へと。


案の定、硬い物同士がぶつかる鈍い音が響き俺とスケルトン達の間には何とも言えない雰囲気が漂う。


あれっ、おかしいな?なんだか視界がボヤけるや。それに何だか胸も痛い。


どうやらエレノア達の優しさにやられてしまったらしい。


いやはや、週一更新くらいは頑張りたいものよのぅ

不定期更新で申し訳ですがこれからも頑張るのでよろしくぞいっ

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